M&Aを実施する際、税金の計算は資金計画に直接影響します。
個人株主には所得税・住民税が、法人には法人税が課税されます。
重要なのは、M&Aのスキームによって課税対象や税率が大きく変わる点です。
そこで今回は、M&Aで発生する税金の種類や計算方法をスキーム別に解説します。
2026年最新の税制改正による影響や、手取り額を増やす税金対策も紹介するので、M&Aを検討中の経営者の方はぜひ参考にしてください。
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M&Aは採用するスキームや税務処理によって最終的な手取り額が異なるため、客観的な比較が大切です。
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M&Aにかかる税金の基本
M&Aで発生する税金は、売り手と買い手それぞれに異なる形で課税されます。
売り手が個人か法人かによって適用される税目が変わり、買い手側も取引形態次第で消費税の負担が生じる仕組みです。
M&Aの税負担はスキーム(株式譲渡・事業譲渡・組織再編)によって大きく変わるため、取引前に税務面を含めたシミュレーションを行うことが重要です。
想定外の税負担で資金繰りに困らないようにするためにも、税金の種類と課税タイミングを理解しておきましょう。
株式譲渡で発生する税金
株式譲渡は、M&Aで多く採用されるスキームです。
売り手が個人か法人かによって、適用される税制と税率が異なります。
個人株主の場合は譲渡所得として分離課税され、法人株主の場合は法人税の対象となるため、売却前に自分の立場を確認しておきましょう。
個人が売却する場合
個人が株式を売却して得た利益には、一律20.315%の税金が課されます。
税率の内訳は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%です。
個人の株式譲渡所得は申告分離課税の対象となるため、給与所得など他の所得とは切り離して税額を計算します。
課税対象額は、株式の売却価格から取得費用や委託手数料などの必要経費を差し引いて算出します。
非上場株式を売却した経営者は、確定申告が必要です。
法人が売却する場合
法人が株式を売却して得た利益は、通常の事業所得と合算されて法人税の課税対象となります。
法人税は法人住民税や法人事業税などと合わせて課税されるため、実際の税負担は企業の所在地や資本金規模などによって異なると認識しておきましょう。
一般的には、実効税率はおおむね30〜35%程度となるケースが多いとされています。
譲渡益は、売却価格から帳簿上の取得価格と売却手数料を差し引いて計算します。
株式の売却で損失が出た場合は、本業の利益と通算して税負担を抑えることが可能です。
また、完全支配関係にあるグループ企業間の取引では、一定の要件を満たせば譲渡損益の課税が繰り延べられる場合があります。
事業譲渡で発生する税金
事業譲渡では、株式譲渡とは異なり譲渡対象となる資産・負債を個別に引き継ぐため、税務上も資産の内容に応じて取扱いが分かれます。
消費税では土地や有価証券の譲渡は非課税ですが、建物・機械設備・営業権(のれん)などの譲渡は課税対象です。
ここからは「譲渡側にかかる税金」と「譲受側にかかる税金」について解説します。
譲渡側にかかる税金
企業が事業を譲渡して得た利益には法人税が課され、課税対象となる資産には消費税も発生する点に注意が必要です。
企業規模などによって法人実効税率は異なり、普通法人の場合は29.74%が基準です。
また、のれん(営業権)や固定資産を売却すると、利益が出やすくなります。
土地や有価証券の譲渡は非課税ですが、有形固定資産などの課税資産を譲渡する場合、その部分は消費税の課税対象となります。
事業譲渡契約書は印紙税の課税文書に該当する場合があり、不動産を含むケースでは契約内容に応じた印紙税額の確認も必要です。
譲受側にかかる税金
譲受側では、課税資産の取得に係る消費税を負担しますが、要件を満たせば仕入税額控除の対象になります。
不動産を取得する場合は、登録免許税に加えて不動産取得税も生じるため、取得時の税負担を事前に見積もっておくことが重要です。
不動産の所有権移転にかかる登録免許税は、土地と建物それぞれの固定資産評価額の2%が基本です。
ただし、土地のみの移転登記は令和11年(2029年)3月末まで1.5%に軽減される特例を利用できます。
契約書に貼付する印紙税や取得後に発生する固定資産税なども、事前の資金計画に組み込む必要があります。
組織再編で発生する税金
組織再編にかかる税金は、税制上の要件を満たす適格か満たさない非適格かによって金額や納税のタイミングが変わる点に注意が必要です。
適格と判定された企業は資産や負債を帳簿価格のまま引き継ぐため、含み益に対する法人税の課税を将来へ先送りできます。
一方、非適格に該当する企業は資産を時価で評価し直すため、発生した譲渡益に対して約29.74%(一定の場合は30.64%)の実効税率で課税されます。
また、適格・非適格のどちらのケースでも、組織再編に伴って登記手続きを行う場合は登録免許税が発生します。
登録免許税の税率は、合併・会社分割・不動産移転登記など手続きの種類によって異なる点に注意が必要です。
さらに、組織再編に関する契約書を作成する場合は、文書の内容によって印紙税の課税対象となるケースがあります。
そのため、組織再編を検討する際は法人税だけでなく、登録免許税や印紙税といった付随税コストも含めて資金計画を立てましょう。
2026年度の税制改正で変わること
2026年度の税制改正では、高額所得者に対する追加負担の見直しや、組織再編・設備投資を後押しする税制措置の見直しが盛り込まれています。
財務省の税制改正大綱では、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置について、以下の方針が示されました。
- 追加負担を計算する際の特別控除額を3億3,000万円から1億6,500万円へ引き下げる
- 上記とともに、税率を22.5%から30%へ引き上げる
この見直しは、令和9年分以後の所得税から適用予定です。
そのため、2027年以降の株式譲渡益や不動産譲渡益など、高額な分離課税所得が見込まれる場合には税負担へ影響する可能性があります。
また、事業譲渡に伴う不動産取得税の軽減措置については、適用期限の延長が要望・改正項目として示されました。
さらに、パーシャルスピンオフ税制についても、要件を見直したうえで期限の定めのない措置とする方向が示されており、組織再編を活用しやすい環境整備が進められています。
一定の要件を満たす大規模な設備投資については、即時償却または税額控除を選択できる新たな税制措置が設けられる見込みです。
対象資産や投資額、収益性などに要件があるため、実際の適用可否は個別確認が必要です。
M&Aにおける税金の負担を抑える6つの方法
M&Aで発生する税金は、スキームの選び方や譲渡対象の整理、税制の活用によって調整できる場合があります。
ただし、すべての方法が一律に節税につながるわけではなく、売り手・買い手の立場や法人の属性、適用要件によって有利不利は異なります。
M&Aの税負担を抑える方法は、次のとおりです。
- 役員退職慰労金を活用する
- 第三者割当増資を利用して経営権のみ譲渡する
- 会社分割を活用して不要な資産を移転する
- 買い手のニーズに合った資産のみを売却する
- 売却益を抑えるために事業譲渡を選ぶ
- 組織再編税制(適格組織再編成)や繰越欠損金を活用する
売り手・買い手それぞれの立場で活用できる具体的な節税対策を見ていきましょう。
1. 役員退職慰労金を活用する
M&Aの税負担を抑える方法の一つに、経営者が売却対価の一部を役員退職慰労金として受け取る手法があります。
退職所得には退職所得控除があり、控除後の金額の2分の1が課税対象となるため、株式譲渡益として受け取る場合より税負担を抑えられる可能性があります。
また、会社側も適正額の退職金であれば損金算入が可能です。
そのため、法人税の負担軽減につながる場合があります。
ただし、税務署から不相当に高額な退職金と判断された場合、その一部または全部が損金として認められないおそれがあります。
勤続年数が5年以下の役員は、課税対象額を半分にする優遇措置を受けられない点にも注意が必要です。
2. 第三者割当増資を利用して経営権のみ譲渡する
保有株式を売却せず、第三者割当増資で経営権を移転すれば税負担が発生しません。
この場合、既存株主は株式を売却するわけではないため、株式譲渡益に対する課税が発生しないという特徴があります。
会社は新たに発行した株式を買い手企業に引き受けてもらうことで、議決権の過半数を移転できます。
また、増資によって会社に新たな資金が入る点もメリットです。
ただし、この方法では既存株主の手元に売却資金が入らないため、事業売却による資金回収を目的とする経営者には適さない場合があります。
さらに、増資登記に伴う登録免許税が発生するほか、著しく有利な価額で発行した場合には税務上の問題が生じる可能性もあります。
3. 会社分割を活用して不要な資産を移転する
会社分割を用いて売却対象から不要な資産を切り離すのも、M&Aにかかる税金を減らす方法の一つです。
例えば、買い手が必要としていない遊休不動産や余剰資金などを別会社へ移転しておくと、売却対象の整理が可能です。
税制上の適格会社分割の要件を満たす場合は、資産や負債を帳簿価額で引き継げるため、含み益への課税を再編時点で発生させずに済む場合があります。
ただし、適格分割には以下のような要件があります。
- 事業の継続性
- 従業員の引き継ぎ
- 事業規模のバランス
要件を満たさない場合は資産を時価評価する非適格分割となり、税負担が増える可能性があると把握しておきましょう。
4. 買い手のニーズに合った資産のみを売却する
M&Aの税負担を軽減するには、買い手の希望する事業や資産だけを選別して譲渡する方法があります。
特に事業譲渡では、譲渡する資産や契約を個別に選択できるため、不要な資産を売却対象から外すことが可能です。
例えば、以下の資産などを会社に残すと、取引内容をシンプルに整理できます。
- 遊休不動産
- 使われていない設備
- 不採算事業
また、課税資産の範囲が変わると、消費税などの税コストに影響する場合があります。
ただし、譲渡益は資産ごとの簿価と譲渡価額の差額で計算されるため、必ずしも税負担が減るとは限りません。
そのため、事前の資産調査と買い手との交渉が重要です。
5. 売却益を抑えるために事業譲渡を選ぶ
株式を売却せず事業譲渡を選択して譲渡益を小さく抑えるのも、M&Aにかかる税負担を軽減する方法の一つです。
事業譲渡では、特定の資産・負債や営業権のみを個別に引き継ぐため、譲渡対象を柔軟に設計可能です。
また、売り手企業に繰越欠損金(過去の赤字)がある場合は、譲渡益と相殺することで法人税負担が軽減される可能性があります。
一方、買い手企業にとっては、取得した営業権(のれん)を税務上5年で償却できるため、将来の税負担を抑えられる場合があります。
ただし、事業譲渡では以下などのコストが発生する点にも注意が必要です。
- 課税資産に対する消費税
- 不動産の登録免許税
- 契約ごとの手続き
6. 組織再編税制(適格組織再編成)や繰越欠損金を活用する
M&Aでは、適格組織再編成の制度や繰越欠損金を活用して、税負担を調整できる場合があります。
例えば、適格組織再編(適格合併・適格会社分割など)の要件を満たす場合、資産や負債を帳簿価額で引き継げるため、含み益に対する課税を再編時点で発生させずに済む可能性があります。
また、企業に繰越欠損金がある場合は、一定の範囲で所得との相殺が可能です。
ただし、控除できる割合は法人の規模や属性によって異なります。
さらに、M&Aにおいて欠損金を引き継ぐ場合には以下などの厳しい条件が設けられています。
- 事業の継続要件
- 企業規模のバランス
- 租税回避防止規定
事前に制度の適用可否を確認することが重要です。
税務リスクを回避するには、M&A実績の豊富な専門家への相談が不可欠です。
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M&A税金でよくあるトラブルと対策
M&Aの税金計算は複雑で、わずかなミスが多額の追徴課税や資金計画の狂いにつながります。
具体的なトラブルは、以下のとおりです。
1. 税金計算のミス
M&Aの税金計算で頻発するトラブルは、取得費や必要経費を誤算して税金を納めすぎたり追徴課税を受けたりする事態です。
株式の取得費を実際よりも低く見積もるケースや、仲介手数料を必要経費から漏らすミスが起こりやすくなります。
複数回取得した株式の計算や上場と非上場の区分を間違えると、税務調査で加算税を課されるリスクがあります。
過去の申告書や登記簿などの証明資料をすべて揃えて、取得費の正確な把握が必要です。
準備段階から専門の税理士へ計算明細書の作成を依頼し、申告漏れによる想定外の税負担を防ぐ対応が求められます。
2. 税制改正への対応不足
M&Aの税務で生じる重大な失敗は、税制改正を把握せずに株式を売却して想定外の追加課税を受けるケースです。
高額所得者(概ね年間合計所得が1億6500万円超)に対して、ミニマムタックスが強化され、追加課税が生じる仕組みに改正されます。
手続きが遅れて売却時期が翌年へずれ込むと、数千万円もの余計な税金を支払うリスクがあります。
売却時期によっては税制改正の影響を受ける可能性があるため、スケジュール設計は税理士と相談しながら進めることが重要です。
税理士と連携して法改正の対応項目を整理し、退職金などを組み合わせた計画を前倒しで進めましょう。
3. 組織再編の適格・非適格判定ミス
組織再編における適格判定の要件を一つでも満たさないと、多額の法人税が即座に課されるトラブルが頻発しています。
従業員の引き継ぎ割合が規定を下回るケースや、再編直後に株式を売却するミスが代表的です。
想定していた適格分割が非適格と判定されると、含み益に対して約30%前後の法人税等が課税される可能性があります。
想定外の税負担を防ぐには、計画の段階から専門の税理士を交えて国税庁の事前照会制度を利用しましょう。
契約書へ事業や株式の継続期間を明記し、税制上の規定を確実に満たす体制を整える必要があります。
4. のれん(営業権)評価の過大・否認
事業譲渡でのれんの評価額を高く設定しすぎると、税務調査で否認されて多額の追徴課税を受けるトラブルが発生します。
売り手は消費税の負担が不当に大きくなり、買い手はのれんの償却が認められず損金に算入できない事態へ陥りかねません。
「のれんの金額が過大」と判断された場合、税務調査で資産配分の見直しを求められる可能性があります。
公認会計士から第三者としての客観的な評価を取得し、算定の妥当性を証明する必要があります。
契約書へ算定の根拠や資産と負債の区分を明記して、事前の合意を確実に形成する対応が適切です。
5. 過去申告ミスによる追徴課税
M&Aの実行後に売り手企業の過去の申告漏れが発覚すると、買い手が多額の追徴課税を負担する事態へ発展します。
売り手企業が消費税の納付ミスや譲渡所得の未申告を放置していると、買収後に加算税や延滞税が課されます。
買い手企業は買収前に過去3年から5年分の申告書を確認する徹底した税務調査の実施が必要です。
事前の調査で申告漏れを発見した売り手企業は、自主的に修正申告を行う必要があります。
買い手企業は買収後の税務リスクを防ぐために、契約書へ損害を補償する条項を必ず盛り込みましょう。
まとめ|2026年のM&A税金は専門家と一緒に最適なプランを
M&Aにかかる税金は、採用するスキームや売り手の立場によって負担額が変動します。
税制改正に伴い高額所得者に対する追加課税の見直しが行われ、株式譲渡益などの分離課税所得にも影響する可能性があるため、最新の制度を踏まえた計画的な対応が重要です。
役員退職慰労金を活用した節税や組織再編の優遇措置を検討する場面でも、要件の確認漏れや計算ミスがあれば多額の追徴課税を招きます。
想定外の損失を防いで手元に残る資金を増やすには、専門的な知見を持つアドバイザーと連携して計画を練りましょう。
自社の状況に合った信頼できるM&A仲介会社を探すなら「M&A比較ナビ」の利用をおすすめします。
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M&A税金に関するよくある質問
以下では、M&A税金に関するよくある質問についてまとめました。
- 売却額1億円だと手取りはいくらになる?
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株式を1億円で売却した場合の手取り額は、仲介手数料などを含めない税金のみであれば約8,000万円前後、M&A仲介手数料も含めれば6,000万円〜8,000万円程度が目安です。
売却額の全額を受け取れるわけではなく、譲渡益に対して20.315%の税金を納める仕組みです。
手元に残る金額は、売却額から取得費用や仲介手数料を差し引いた利益に20.315%の税率をかけた税額と、仲介手数料等の費用を差し引いて計算します。