2027年から強化されるミニマムタックス制度により、M&Aの株式譲渡における税負担が大きく変わります。
基準所得金額が3億3,000万円を超える場合(現行制度2025〜2026年分)または1億6,500万円を超える場合(2027年分以降の改正制度)は、分離課税に加えて追加課税が発生します。
株式譲渡益は基準所得金額に算入されるため、大型M&Aを検討している経営者は売却時期の判断が重要です。
本記事では、ミニマムタックスの基本的な仕組みとM&Aへの具体的な影響を解説します。
譲渡時期の選択肢や退職金・事業譲渡スキームとの比較、実務上の注意点も紹介するので、M&Aを検討中の経営者は参考にしてください。
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ミニマムタックスとは「1億円の壁」に対応する追加課税制度
ミニマムタックスとは、基準所得金額(※)が3億3,000万円を超える極めて高い水準の所得税負担を適正化する追加課税制度です。
(※財務省の試算では、追加負担が生じると想定される平均的な所得水準は約30億円とされています。)
この制度は、いわゆる「1億円の壁」と呼ばれる税率の逆転現象を是正するために導入され、2025年分の所得から適用が始まりました。
給与所得には累進課税が適用される一方、株式譲渡や配当などの分離課税は税率が一定に固定されるためです。
基準所得金額が3億3,000万円を超える個人が対象となり、確定申告の際に追加で税額を計算して納める仕組みです。
M&Aにおけるミニマムタックスの位置づけ
ミニマムタックスは、株式譲渡型M&Aの売り手側オーナー経営者にとって税負担に影響を与える制度です。
株式譲渡所得は基準所得金額の計算対象となるため、通常の分離課税(20.315%)より高い追加課税が発生し、手取り額が数百万円から億円単位で変動するおそれがあります。
M&Aの主流である非上場株売却で得た譲渡益も、給与所得や事業所得などとともに基準所得金額の算定対象です。
創業株を売却するケースでは、譲渡益が大きくなるためミニマムタックスの対象となる可能性が高くなります。
2027年分から予定される税制改正後は、基準額が引き下げられるため、大型M&Aでは税負担への影響が生じる可能性があります。
特に2026年中と2027年以降では、M&Aのクロージング時期によって数千万円から数億円単位の税負担が生じるでしょう。
そのため、売却タイミングや価格交渉、スキーム選択を左右する重要な制度として位置づけられています。
M&Aにおけるミニマムタックスの税制改正のポイント
2027年から強化されるミニマムタックスは、従来の制度から対象範囲と税率が大きく変更されます。
改正後は、これまで対象外だった高額所得層のオーナー経営者にも影響が及ぶ可能性があります。
以下では、税制改正の背景と新制度の計算方法、分離課税所得中心の高所得者への具体的な影響を見ていきましょう。
税制改正の背景と狙い
税制改正の背景は、所得1億円を超えると実効税率が逆に下がる「1億円の壁」の存在です。
給与や事業所得は最高45%の累進税率が適用されますが、株式譲渡所得や配当は、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%の申告分離課税が適用されます。
そのため、高額な金融所得を得る富裕層では、税負担率が給与所得者より低くなる逆転現象が問題視されていました。
令和5年度改正で導入された現行制度は、実質的な下限は所得約9.9億円超(純分離課税の場合)です。
2027年にミニマムタックス制度が強化されるにあたり、財務省の試算によれば平均的な対象所得は約30億円に拡大されます。
対象範囲の拡大によって、分離課税を活用した富裕層に適正な税負担を求める仕組みが強化されています。
税収効果も、現行1,130億円から平年度4,000億円規模に拡大する見込みです。
株式譲渡益や配当所得の割合が高いオーナー経営者や投資家に影響が大きいといわれています。
新制度の計算方法
新制度の計算方法は、基準所得金額が1.65億円を超えた場合に超過部分に30%を乗じた金額から基準所得税額を差し引き、その差額を追加納税する仕組みです。
基準所得税額は、基準所得金額に係る所得税を通常の方法で計算した所得税額のことです。(分配時調整外国税相当額控除・外国税額控除は除外)
具体例として株式譲渡所得10億円の場合、通常税額は約1.5315億円となります。
ただし、新ミニマム計算では10億円から1.65億円を引いた超過分に30%を掛けた約2.505億円です。
差額の約9,735万円が追加税として発生し、手取り額が減少します。
現行制度では追加税0円だったケースが、2027年から高額所得者では税負担が増える可能性があるため、M&A実施時期の判断が重要です。
分離課税所得中心の高所得者への影響
分離課税所得中心の高所得者は、実効税率が現行の20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)から最高35.63%へ上昇します。
株式譲渡や配当、不動産売却益が主な所得源となるオーナー経営者や投資家、M&A売り手が該当し、総合課税中心の給与所得者は相対的に影響を受けにくいです。
対象水準は、現行の約10億円超から約3.4〜3.5億円超に引き下げられます。
純分離課税中心なら約3.3〜3.4億円が一つの目安で、実際の対象水準は所得構成によって変わる点を把握しておきましょう。
10億円の株式売却で追加負担は数千万円、30億円超では億単位に達するケースもあります。
2026年中に譲渡益が実現すれば現行税率が適用されるため、売却時期の判断が手取り額を左右するポイントです。
M&A実施時のミニマムタックスが影響する3つのシーン
ミニマムタックスはM&A実施時の所得発生時期や株主構成、譲渡方法によって税負担が変わります。
実務で特に影響が大きい3つのシーンは、以下のとおりです。
以下では、各シーンについて詳しく解説します。
2025年1月1日以降の所得が対象になる場合
ミニマムタックスは2025年1月1日以降に生じた所得から適用され、株式譲渡所得の課税時期は、原則として株式の引渡し日が属する年で判定されます。
2024年中にクロージングすれば現行分離課税20.315%のみで済みますが、2025年以降に譲渡益が実現した場合は基準所得金額の水準次第で判定対象です。
譲渡益10億円の場合、2024年クロージングなら追加税0円ですが、2027年以降クロージングでは控除1.65億円・税率30%が適用され、追加税約9,700万円が発生します。
M&Aは案件によって数か月〜1年以上かかることもあるため、2026年12月末までのクロージングを目指すなら今すぐ準備開始が必要です。
早期にM&Aアドバイザーや税理士とスケジュールを逆算して進めましょう。
複数の株主・法人で株式を保有している場合
ミニマムタックスは個人ごとに計算される制度です。
そのため、同じ会社の株式を複数の株主が保有している場合、各株主ごとの譲渡益によって追加課税の有無が変わる可能性があります。
例えば、会社の株式価値が10億円の場合でも、株主の人数による所得金額は以下のとおりです。
| 株主 | 各人の所得金額 |
|---|---|
| オーナー1人 | 10億円 |
| 親族3人 | 約3.3億円ずつ |
このように、株主ごとの所得金額が基準所得金額を下回れば、結果としてミニマムタックスの追加税が生じないケースもあります。
ただし、株主構成の変更や持株分散には注意が必要です。
- 親族への株式贈与
- 持株会社の設立
- 資産管理会社への移転
上記を行う場合、贈与税や相続税、法人課税など別の税務問題が生じる可能性があります。
また、資産管理会社が株式を保有している場合は個人ミニマムタックスは直接適用されませんが、最終的に配当などで個人へ資金を移す際には別途課税が生じます。
そのため、M&A前には株主ごとに税負担シミュレーションの実施が重要です。
複数年にまたいで譲渡する場合
株式譲渡を複数年に分けて実施する場合、各年の所得金額が分散される可能性があります。
例えば、株式売却益が9億円の場合、譲渡方法による年間所得は以下のとおりです。
| 譲渡方法 | 年間所得 |
|---|---|
| 一括譲渡 | 9億円 |
| 3年分割 | 各年3億円 |
この場合、所得水準によってはミニマムタックスの追加税が生じない可能性もあります。
ただし、税務上は実質的にいつ譲渡が成立したかが重要です。
- 最初の年に全株式を引き渡している
- 代金のみ分割払いになっている
上記と判断される場合、最初の年に全額課税される可能性があります。
複数年にまたがる譲渡を検討する場合は、以下などを慎重に設計しましょう。
- 株式の引渡し時期
- 対価の確定条件
- 段階的クロージングの契約内容
対策として全株式譲渡の約束を避けた契約書作成や、各年ごとの独立した譲渡契約を検討し、税理士や弁護士との事前確認が重要です。
ミニマムタックスに関するM&A実施時の注意点
M&A実施時はミニマムタックスの影響を踏まえて、譲渡時期の選定と所得計算の仕組みを正確に理解する必要があります。
特に、以下の3点に注意が必要です。
以下では、各注意点を紹介します。
譲渡時期のタイミングが重要である
ミニマムタックスの適用は株式譲渡の引渡し・決済完了日が属する年で決まるため、譲渡時期が手取り額を大きく左右します。
2026年12月31日までにクロージングすれば、現行制度の特別控除3.3億円・税率22.5%が適用される仕組みです。
一方、2027年1月1日以降は改正制度の特別控除1.65億円・税率30%となり、追加税が増加します。
譲渡益10億円の場合、2026年クロージングなら追加税はほぼ0円で通常税1.53億円のみです。
ただし、2027年クロージングでは追加課税約9,700万円が発生し、1年ずれるだけで数千万円から1億円以上の差が出ます。
M&Aプロセスは案件によって約6~12ヶ月かかるため、2026年末を目標とするなら今から準備が必要です。
買い手とのスケジュール調整を最優先し、早期に税理士と計画を立てましょう。
基準所得金額の計算対象となる
M&Aの株式譲渡所得は基準所得金額に算入されるため、控除額を超える場合は追加課税が生じる可能性があります。
追加税額は、基準所得金額から特別控除額を差し引いた金額に税率を乗じた額が基準所得税額を上回る場合に、その差額として計算される仕組みです。
基準所得金額には、通常の申告対象所得に加え、確定申告不要制度を適用できる上場株式等の配当所得や譲渡所得等も含まれます。
一方で、NISAなどの非課税所得や源泉分離課税の利子所得は算入されません。
非上場株式の譲渡益は通常、基準所得金額に算入されます。
退職所得は収入から控除を引いた額の2分の1で計算されるため基準所得への影響が限定的ですが、株式譲渡は計算対象となる点が大きな違いです。
退職金・事業譲渡スキームと比較する
株式譲渡一択ではなく、退職金併用や事業譲渡スキームと税額を比較することで税負担を抑えられる可能性があります。
ミニマムタックスは株式譲渡益のような分離課税所得に影響しやすいため、他の手法では税負担の出方が異なるためです。
例えば退職金を併用する場合は、退職所得控除や2分の1課税の仕組みにより、株式譲渡益として受け取る場合より税負担を抑えられる可能性があります。
ただし、役員等勤続年数5年以下の特定役員退職手当等には2分の1課税が適用されません。
また、事業譲渡では会社側で消費税や登記関連コストが発生する一方、オーナー個人が直接株式譲渡益を得る場合とは課税方法が異なります。
そのため、個人ミニマムタックスの影響の受け方も株式譲渡とは異なり、税務試算によっては比較検討の余地があります。
M&A実施時のミニマムタックス対策
ミニマムタックスの影響を最小限に抑えるには、以下のポイントが重要です。
以下では、実務で効果的な3つの対策を解説します。
譲渡時期を2026年12月末までに前倒し実行する
譲渡時期を2026年12月末までに前倒しすることで、改正前の現行制度を適用でき追加課税を削減可能です。
ミニマムタックスの判定は、株式譲渡の引渡し・決済が完了した年で行われます。
2026年12月31日までにクロージングすれば、現行制度の控除3.3億円・税率22.5%が適用可能です。
一方、2027年1月1日以降のクロージングでは特別控除1.65億円、税率30%へ変更される予定です。
例えば株式譲渡益が10億円の場合、2026年中のクロージングでは追加税が発生しないケースでも、2027年以降は約9,700万円の追加税が生じる可能性があります。
この場合の税負担は、通常税額約1.5315億円に追加税約9,735万円を加えた約2.505億円となり、概算の実効負担率は約25%程度です。
M&Aはデューデリジェンスや契約交渉、許認可などを含めて、数か月~1年以上かかるケースも珍しくありません。
そのため、税制変更の影響を受ける可能性がある場合は、早い段階から税理士やM&Aアドバイザーとスケジュールを検討しましょう。
譲渡所得を分散させる
譲渡所得を分散させることで各年の基準所得金額を控除額以下に抑え、ミニマムタックスの適用を回避・軽減することが可能です。
ミニマムタックスは個人ごとに計算されるため、株主分散や複数年譲渡、持株会社保有が対策として機能します。
2026年末までのルールでは、会社の株式価値が10億円の場合でも、3人以上で所得を分散すれば追加課税が発生しにくくなります。
ただし、株主構成を変更する場合には、次のような別の税務論点が生じる可能性があります。
- 親族への株式移転に伴う贈与税
- 相続税への影響
- 持株会社を利用した場合の法人課税
持株会社が株式を保有している場合、個人ミニマムタックスは直接適用されません。
しかし、最終的に配当などで個人へ資金を移す際には別途課税が生じます。
さらに、株式譲渡を複数年に分けて実施する場合でも、契約内容や引渡しの実態によっては最初の年に一括課税される可能性があります。
このように、株主構成や譲渡方法によって税負担の結果は変わるため、事前に税務シミュレーションを行うことが重要です。
専門家に相談する
ミニマムタックスは案件ごとに影響額が変わるため、M&Aや組織再編に強い専門家への相談が必須です。
退職金設計や株主構成、契約内容によって追加課税額が数千万円単位で変動するため、M&A専門の税理士や公認会計士に依頼することで適切な対策が立てられます。
また、事業譲渡を選択する場合には、会社側で以下などが発生する場合があります。
- 消費税
- 登録免許税
- 不動産取得税
M&Aにおける税務は複数の制度が関係するため、M&A税務に詳しい税理士や公認会計士へ事前に相談し、複数のケースで税額試算を行うことが重要です。
また、M&Aアドバイザーは税務だけでなく、買い手探しやスケジュール調整なども含めて支援するため、早期に相談しておくことで取引全体をスムーズに進められます。
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まとめ|ミニマムタックスの影響を受けるM&Aは早めの戦略立案を
2027年に強化されるミニマムタックスにより、M&Aの株式譲渡における税負担が大きく変わります。
基準所得金額の下限が引き下げられ、中堅オーナー経営者も新たに対象となるため、譲渡時期やスキーム選択が手取り額を数千万円から億単位で左右する状況です。
2026年12月末までにクロージングすれば現行制度の適用を受け追加税を抑えられますが、2027年以降は控除1.65億円・税率30%が適用され税負担が増加します。
税負担の影響は個別事情によって大きく変わるため、M&A税務に詳しい専門家と連携しながら最適な計画を立てましょう。
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ミニマムタックスのM&Aに関するよくある質問
以下では、ミニマムタックスのM&Aに関する質問をまとめました。
- ミニマムタックスは株式譲渡所得にも適用されますか?
-
M&Aの主力である非上場株式の譲渡所得は、原則として基準所得金額の計算対象となり、給与や事業所得などと合算されます。
基準所得金額は総所得金額と分離課税の各種所得金額で構成され、上場株式等に係る譲渡所得も含まれます。
申告不要制度を選んだ場合でも計算に含める点に注意が必要です。
確定申告時には国税庁の適用判定表兼税額計算書で必ず判定してください。
- 所得が10億円を少し下回る場合の対策はありますか?
-
2026年12月末までに譲渡時期を前倒しすることで、現行制度の適用を受け追加税をほぼ0円に抑えられます。
10億円を少し下回る譲渡益でも2027年以降は約3.4億円超から追加課税が生じる可能性があり、税額が数千万円規模になるため早めの対策が必須です。
株主分散や複数年譲渡、退職金併用スキームも効果的ですが、個別事情で影響額が変わるためM&A専門税理士へのシミュレーション依頼をおすすめします。
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