「大手ECモールとの競争が激化し、広告費の高騰で思うように利益が出せない」
「事業をさらに成長させたいが、物流網の構築やシステム投資に必要な資金・リソースが足りない」
ECサイトの運営において、このような課題を抱えている経営者は少なくありません。そして、その解決策の一つとして近年注目されているのが「M&A」です。
この記事では、ECサイト業界のM&A動向や、サイトの価値を測る価格相場の考え方、具体的な成功事例、そしてM&Aを成功に導くためのスキームやおすすめの仲介会社まで、網羅的に解説します。
ECサイトのM&Aとは
ECサイトのM&Aは、EC事業の売買により事業拡大や新規参入、後継者問題の解決などを図る経営戦略です。
単なるドメインやコンテンツの譲渡ではなく、継続的な収益や顧客基盤、ブランド価値、システム運営ノウハウなどを含む経営資源全体の売買を指します。これにより、売り手は現金化や事業再編が可能になり、買い手は立ち上げコストを抑えつつ即戦力の事業基盤を獲得できるメリットがあります。
EC市場の拡大や競争激化、事業承継問題を背景に活発化している重要な取引形態です。
ECサイトのM&Aと他業界の違い
ECサイトのM&Aは、デジタル資産が価値の中心である点で他業界と大きく異なります。製造業のような物理的資産ではなく、顧客基盤、ブランド力、サイトのアクセス数といった無形資産が評価額を左右します。
そのため、デューデリジェンスではシステムやサイトの健全性、トラフィックデータの分析が重要視されるのが一般的です。また、異業種からの参入が多く、事業成長後のイグジット(投資回収)手段として活用されやすいのも特徴です。成功には、デジタル資産の正確な評価とスムーズな引き継ぎが不可欠といえます。
ECサイトのM&Aの価格相場
ECサイトのM&Aにおける価格相場は、一般的に「営業利益の2〜5年分」や「EBITDAの3〜7倍」が目安です。しかし、あくまで基準であり、最終的な価格は企業価値評価(バリュエーション)を通じて算出され、交渉によって決定します。
主な算定方法には、将来のキャッシュフローを評価するDCF法、類似企業と比較するマルチプル法、純資産を基準にするコストアプローチがあります。特にECサイトでは、財務状況だけでなく、顧客基盤、ブランド力、サイトのアクセス数といった無形資産が価格を大きく左右する重要な要因です。
ECサイトのM&Aの成功事例
EC業界では、事業拡大や新規市場への参入、技術革新などを目的に、活発なM&Aが繰り広げられています。大手企業による戦略的な買収から、スタートアップ同士の統合まで、その形はさまざまです。
ECサイトのM&Aの成功事例は、以下のとおりです。
以下では、近年のEC業界を象徴するM&Aの成功事例をそれぞれ紹介します。
事例1. ZOZOによるLYST LTDの完全子会社化
株式会社ZOZOによる英国ファッションEC「LYST」の買収は、グローバル市場への本格進出を目的とした戦略的なM&Aの成功事例です。約231億円($154M)でLYSTを完全子会社化し、欧米の強力な顧客基盤を獲得しました。
この買収により、ZOZOは自社のAI技術やEC運営ノウハウをLYSTに提供し、LYSTが持つ高度なSEO技術などを自社に取り込むシナジー効果を狙っています。在庫を持たないLYSTの事業モデルは買収リスクを低減し、独立した運営体制を維持することで円滑な統合を図る点も、成功の要因といえるでしょう。
事例2. メルカリによるソウゾウの吸収合併
株式会社メルカリによる子会社ソウゾウの吸収合併は、グループ内の事業再編と経営効率化を目的としたM&Aの成功事例です。この合併により、ECサービス「メルカリShops」の企画、開発、運営までが一元化され、迅速な意思決定と機動的な事業運営が可能になりました。
元々「メルカリShops」は、2021年に設立されたソウゾウが運営していましたが、事業が軌道に乗った段階でメルカリ本体に統合されました。新規事業を子会社で立ち上げ、成長後に本体へ吸収することで、グループ全体の成長を加速させる計画的なM&A戦略といえます。
事例3. 楽天によるFablic(FRIL)の買収
楽天グループ株式会社によるFablic(フリル)の買収は、競争が激化するフリマアプリ市場でのシェア拡大を目的としたM&Aの成功事例です。この買収により、楽天は自社アプリ「ラクマ」とは異なる若年層の女性ユーザー基盤を獲得し、CtoC事業を大幅に強化しました。
成功の鍵は、買収後に両サービスを「ラクマ」として統合したことです。これにより、顧客基盤や機能が一元化され、開発リソースの集中と効率的な運営が実現しました。楽天のマーケティング力とFablicの技術力が融合し、市場での競争力を高めるという当初の目的を達成した好例といえます。
ECサイトのM&Aにおすすめの仲介会社・サービス
ECサイトのM&Aを成功に導くには、信頼できるパートナー選びが不可欠です。数あるサービスの中でも、特におすすめの仲介会社は、以下のとおりです。
以下では、各仲介会社の特徴をそれぞれ解説します。
仲介会社選びに不安を感じている場合は、複数のサービスをまとめて比較検討できる「M&A比較ナビ」の活用がおすすめです。
自分に合った仲介会社を見つけるためにも、まずは無料相談から始めてみてください。
ラッコM&A

会社情報 | 詳細 |
---|---|
サービス名 | ラッコM&A |
サポート内容 | ・Webサイト、SNSアカウント等のM&A仲介 ・弁護士による無料チャット相談 ・契約書の自動生成 ・エスクローサービス ・サイト移行代行(オプション) |
サポート体制 | ・契約弁護士による法務サポート ・システム化された取引プロセスによる迅速な対応 |
料金体系 | ・売主:無料 買主:成約額の5%(税込、最低55,000円) |
特徴 | ・売主の手数料が完全無料 ・オンラインで取引が完結 ・個人間の小規模案件が豊富 ・手厚いリーガルサポート |
運営会社 | ラッコ株式会社 |
URL | https://rakkoma.com/ |
ラッコM&Aは、WebサイトやSNSアカウントの売買に特化した国内最大級のオンラインM&Aプラットフォームです。売主の手数料が無料という点が最大の特徴で、個人間の小規模な取引も活発に行われています。
取引プロセスは徹底的にシステム化されており、契約書の自動生成や弁護士への無料チャット相談、安全な代金決済を保証するエスクローサービスなど、オンラインで完結できる手厚いサポートが充実しています。これにより、初心者でも安心してスピーディに取引を進めることが可能です。
サイト売買など、個人や小規模での利用もしやすいサービスで展開しているため、今後より個人の働き方が見直されていくことに伴い、より多くの人に認知され事業も拡大すると思います
引用:OpenWork
今回ラッコM&A使って売却したけど譲渡契約書とか色々めんどうなんやってくれんめっちゃ助かった。掲載してから売れるまで3ヶ月かかったけど2垢無事に売却出来て良かった。値引きしてきた方を一切省いたのは正解だった。商社に勤めてる時から値引き無しのスタイル確立してたから今も生きてて良かったと
引用:X(旧Twitter)
良さそうなメディアがあって、ラッコM&A登録したら新着通知で埋め尽くされた
引用:X(旧Twitter)
ラッコM&Aの詳しい情報は、下記の記事をご確認ください。
サイトマ

会社情報 | 詳細 |
---|---|
サービス名 | サイトマ |
サポート内容 | ・サイト売買・M&Aの「完全お任せ」仲介 ・価格交渉、契約書作成、サイト移行の代行 |
サポート体制 | ・専任アドバイザーによる一貫サポート ・本人確認の徹底とエスクロー決済による安全な取引 |
料金体系 | 【売主】 ・着手金:33,000円(税込) ・成功報酬:譲渡金額の20%(税別) 【買主】 ・着手金:33,000円(税込) ・成功報酬:譲渡金額の15%(税別) |
特徴 | ・9年連続90%超(2016-2024年)の高い成約率 ・半数以上の案件が30日以内に売却されるスピード ・掲載案件に対する厳格な審査 ・手厚いサポート体制 |
運営会社 | エベレディア株式会社 |
URL | https://saitoma.com/ |
サイトマは、ECサイトを含むWebサイトの売買を「完全お任せ」で代行する仲介サービスです。専門知識が必要な価格交渉、契約書作成、サイト移行まで専門スタッフが一貫してサポートするため、ECサイト運営で多忙な方でも安心して売却を進められます。
6年連続で成約率90%超という高い実績と、半数以上の案件が30日以内に売却されるスピード感が大きな強みです。掲載には厳格な審査があるため、質の高い案件が集まりやすい一方、手厚いサポートのため手数料は他のサービスに比べて高めに設定されています。
今回副業ということでTRANBIを使いたまたま選んだサイトの仲介業者さんがサイトマさんで対応が良かったです。また機会があればぜひ使いたいです。
引用:Google Map
価格が高い案件という事もあり慎重な部分もありましたが 時期によるM&Aの動向やサイトマさんの実績ベースでのお客様の需要なども聞く事ができ 思うような買い手様とマッチングする事ができました。
引用:Google Map
サイトマの詳しい情報は、以下の記事で紹介しているため、あわせてご覧ください。
サイトックス

会社情報 | 詳細 |
---|---|
サービス名 | SITESTOCK(サイトストック) |
サポート内容 | ・WebサイトのM&A仲介 ・サイト査定 ・契約書ドラフト作成支援 ・交渉仲介(仲介交渉プラン) |
サポート体制 | ・当事者間で交渉する「直接交渉プラン」 ・専任エージェントが仲介する「仲介交渉プラン」 |
料金体系 | 【直接交渉プラン】 ・売主:成約額の3%(最低55,000円・税込) ・買主:無料 【仲介交渉プラン】 ・売主・買主共通:基本仲介料110,000円+成功報酬(成約額の10%) |
特徴 | ・長い運営実績(累計成約2,000件以上) ・売主手数料が業界最低水準(3%〜) ・豊富な成約データに基づくAIサイト査定 ・交渉プランを選択可能 |
運営会社 | 株式会社サイトストック |
URL | https://sitestock.jp/ |
サイトストックは、2007年から運営されているサイト売買・M&Aの老舗専門仲介サービスです。ECサイトを含む多様なWebサイトを対象とし、累計成約実績は2,000件以上を誇ります。
最大の特徴は、当事者間で交渉する「直接交渉プラン」と、専任エージェントがサポートする「仲介交渉プラン」の2種類から、ニーズに合わせて選択できる点です。売主の手数料が業界最低水準の3%からと低コストなため、特に小規模なECサイトの売却を検討している場合に利用しやすいプラットフォームといえます。
フットワークが軽く、こちらと譲渡先の双方の事情を汲み取り、
適切な仲介をいただいたことが、非常に助かりました。引用:事例インタビュー
サイトストックというか、渡邉さんが親身になってやってくださったので不安な事もなく順調に行けたので助かりました。ありがとうございます。
引用:事例インタビュー
アップデートをもろに喰らった某サイトがサイトストックで7000万円で強気の売りに出されていたところを見ると、いくらマーケットの立場とは言えサイトストック側も信頼できんよなあ
引用:X(旧Twitter)
サイトックスの詳細は、以下の記事で解説しているため、参考にしてみてください。
ECサイトのM&Aの動向(現状・課題・今後)
EC市場の拡大に伴い、事業承継や成長戦略としてM&Aが活発化する一方、買収後の統合や競争激化といった課題も存在します。これからのEC業界でM&Aを成功させるには、未来を見据えた戦略が不可欠です。
以下では、現状・課題・今後の3つの視点からECサイトM&Aの動向を紐解いていきます。
【現状】ECサイトM&A市場の活況と成長背景
EC市場の急成長を背景に、M&Aが活発化しています。2024年の国内BtoC-EC市場は約23.6兆円(経済産業省推計)に達し、2025年以降も年平均3-5%の成長が見込まれるため、多くの企業が成長戦略としてM&Aを選択しています。
特に、ECノウハウやデジタル資産獲得を目的とした異業種からの参入が顕著です。売り手は創業者利益の獲得や後継者問題の解決、買い手は事業展開の迅速化や新規顧客獲得を主な目的としており、市場の成長がM&Aの需要を双方から押し上げる好循環が生まれています。
【課題】ECサイトM&Aが直面する統合と競争の壁
ECサイトのM&Aには、買収後の統合プロセス(PMI)と激化する市場競争という大きな課題があります。
異なる企業文化やITシステムの統合は難しく、従業員の離職やサービス品質の低下を招くリスクを伴います。また、Amazonや楽天といった巨大プラットフォーマーとの競争は激しく、物流コストの上昇や人材不足も深刻な問題です。
これらの課題を乗り越え、期待したシナジー効果を発揮できなければ、M&Aは失敗に終わる可能性も少なくありません。
【今後】技術革新とグローバル展開が拓くEC M&Aの未来
今後のECサイトM&Aは、AIやIoTといった技術革新の取り込みと、グローバル市場への展開が成功の鍵となります。
M&Aは、自社にない先進技術や新しいビジネスモデルを迅速に獲得する有効な手段です。また、国内市場の成熟を見据え、海外のEC企業を買収してグローバルな足がかりを築く「クロスボーダーM&A」の重要性も増しています。
技術力と海外販路をM&Aによって確保することが、企業の非連続的な成長を実現する上で不可欠な戦略となるでしょう。
ECサイトのM&Aのスキーム
ECサイトのM&Aを成功させるには、目的に応じて最適なスキーム(手法)を選択することが重要です。会社全体を売買するのか、特定の事業だけを切り出すのかによって、手続きや税務、引き継がれる資産・負債の範囲が大きく異なります。
ECサイトのM&Aの主なスキームは、以下のとおりです。
以下では、ECサイトのM&Aで主に用いられる代表的な5つのスキームについて解説します
株式譲渡
株式譲渡は、ECサイト運営会社の株式を売買することで経営権を移転する手法です。手続きが比較的シンプルで、サイト運営に必要な従業員や取引先との契約、顧客基盤をそのまま引き継げるのがメリットに挙げられます。
ECサイト運営が会社の主事業である場合に適しており、特にモール型ECサイトのようにサイト単体での売買が規約で難しい場合に有効です。ただし、買い手は会社の負債や簿外債務もすべて引き継ぐリスクを負うため、事前のデューデリジェンスが重要となります。
事業譲渡
事業譲渡は、ECサイト事業そのものと関連資産(ドメイン、顧客情報、在庫など)を選択して売買する手法で、サイトM&Aで最も一般的に用いられます。買い手は必要な資産だけを取得でき、不要な負債を引き継ぐリスクを回避できるため、安全にEC事業へ参入できる点がメリットです。
売り手にとっては、本業がある場合にEC事業だけを切り離して売却し、経営資源を主力事業に集中させることができます。ただし、資産や契約を個別に移転させる手続きが煩雑になる点には注意が必要です。
合併
ECサイトのM&Aにおける合併は、複数のEC企業が一つに統合することで、経営基盤の強化や市場シェアの拡大、運営の効率化を目指す手法です。特に、同業種同士が統合することで、仕入れや物流の共通化によるコスト削減や、互いの顧客基盤を活用したクロスセルなど、大きなシナジー効果が期待できます。
手続きの煩雑さから、株式交換などで一度親子会社関係を構築した後に、最終的な統合手段として吸収合併が選択されるケースも少なくありません。
株式交換・株式移転
株式交換や株式移転は、買い手企業が自社の株式を対価として、ECサイト運営会社を完全子会社化する手法です。この方法の最大のメリットは、買収のための現金を準備する必要がない点です。
これにより、手元資金が少ない企業でもM&Aを実行できます。また、売り手企業の法人格は維持されるため、買収後もブランドや組織体制を保ちやすく、従業員の心理的な抵抗が少ないことがメリットです。主に上場企業が非上場企業を買収する際や、グループ再編でホールディングス体制を構築する際に活用されます。
第三者割当増資
第三者割当増資は、ECサイト運営会社が特定の第三者(買い手企業)に対して新たに株式を発行し、その対価として出資を受ける手法です。これにより、ECサイト運営会社は事業拡大に必要な資金を調達できると同時に、買い手企業との資本関係を構築し、業務提携や経営支援を受けやすくなります。
買い手にとっては、比較的少ない投資でEC事業に関与し、将来的に完全子会社化を目指す足がかりとすることも可能です。経営権を完全に移転するわけではないため、緩やかな提携から始めたい場合に有効な選択肢です。
ECサイトのM&Aを活用するメリット
ECサイトのM&Aは、売り手と買い手の双方に大きなメリットをもたらす戦略的な選択肢です。以下では、譲渡側と譲受側に分けて具体的なメリットについて解説します。
譲渡側のメリット
ECサイトの売却は、創業者利益の獲得や事業の選択と集中を実現する有効な手段です。サイトの運営には専門人材や継続的なコストがかかるため、事業を売却することで、これらの経営資源を本業に再投資できます。
また、後継者不在の問題を抱える経営者にとっては、M&Aによってサイトのブランドや従業員の雇用を維持したまま事業を存続させることが可能です。業績が好調なうちに売却すれば、将来の市場変動リスクを回避しつつ、築き上げたサイトの価値を最大化できるという大きなメリットがあります。
譲受側のメリット
ECサイトの買収は、事業拡大や新規参入にかかる時間とコストを大幅に削減できる点が最大のメリットです。すでに顧客基盤やブランド認知度、SEO効果を持つサイトを獲得することで、ゼロから立ち上げるリスクを回避し、迅速に収益化を図れます。
特に、自社製品と親和性の高いECサイトを買収すれば、即座に新たな販売チャネルを確保でき、大きな売上増が期待できます。さらに、サイト運営のノウハウや優秀な人材も同時に獲得できるため、事業全体の競争力強化にも繋がるでしょう。
ECサイトのM&Aを実施するポイント・注意点
ECサイトのM&Aを成功に導くためには、売り手・買い手双方が特有のポイントと注意点を理解しておくことが不可欠です。以下では、それぞれの立場から特に注意すべき点を解説します。
譲渡側の注意点
ECサイト譲渡の成功は、サイト価値の最大化と周到な事前準備が重要です。UI/UXに優れ、安定した顧客基盤を持つサイトは高値が期待できます。売却に備え、アクセス解析などの運営データを整理し、在庫状況や商標権を明確にしておきましょう。
注意点として、譲渡後のロックアップ(引き継ぎ期間)や競業避止義務の条件を交渉段階で確認することが不可欠です。また、譲渡益にかかる税金は高額になるため、専門家と事前に協議し、手取り額を把握した上でスムーズな取引を目指すことが重要です。
譲受側の注意点
ECサイト買収の成功は、明確なシナジーの想定と徹底したリスク検証が不可欠です。自社の既存事業との相乗効果を具体的に描き、将来の収益性を客観的に評価することが重要です。
注意点として、専門家によるデューデリジェンス(買収監査)を徹底し、簿外債務や仕入先との契約に潜むリスク(COC条項など)を必ず洗い出しましょう。M&Aの成否は、買収後の統合プロセス(PMI)にかかっています。異業種から参入する場合は特に、PMI計画を事前に具体化しておくことが成功のポイントとなります。
ECサイトのM&Aを実施する手順
ECサイトのM&Aを実施する手順は、以下の通りです。
M&A成功の第一歩は、目的の明確化です。売り手は後継者問題の解決や創業者利益の獲得など、売却目的を定めます。
買い手は新規参入の時間短縮や、特定の顧客層・技術の獲得といった、買収による具体的なシナジー効果を描くことが重要です
M&Aの成功には、ECビジネスに精通した専門家の支援が不可欠です。仲介会社やFA、士業の中から、自社の規模や業種に合った実績を持つアドバイザーを選びましょう。サイトの収益構造やシステムに詳しい専門家は、適正な価値評価やリスク分析に繋がります。
どの仲介会社を選ぶべきかわからずお困りの場合は、複数の会社を比較検討できる「M&A比較ナビ」のようなサービスを利用するのもおすすめの方法です。
候補先選定とトップ面談では、経営者同士の価値観のすり合わせが重要です。秘密保持契約後、詳細情報を開示し面談に臨みます。ECサイトでは財務情報に加え、サイトのコンセプトやブランドイメージ、顧客との関係性といった定性的な価値観の共有が成功につながります。
基本合意書は、その後の交渉の土台となる重要な文書です。暫定的な譲渡価格や独占交渉権などを盛り込み、双方の意思を確認します。ECサイト特有のドメインや各種アカウントなど、引き継ぐ無形資産の範囲をこの段階で明確にすると、後の交渉が円滑に進みます。
ECサイトのデューデリジェンスでは、ビジネス面とIT面の精査が特に重要です。財務・法務に加え、アクセス解析データやSEO状況、システムの脆弱性、個人情報管理体制などを徹底調査します。モール型ECの場合、運営規約の確認は必須のリスク評価項目です。
最終契約締結後、ECサイト特有の資産移転を確実に行います。デューデリジェンスの結果を基に最終条件を確定・契約し、代金決済を完了させます。その後、ドメインやサーバー、各種アカウントの名義変更といった、ECサイト運営に不可欠な引き継ぎを速やかに行いましょう。
PMIは、M&Aの効果を最大化する最終かつ最重要なプロセスです。システム連携や業務プロセスの統合、従業員のケアなどを計画的に進めます。ECサイトでは、運営会社変更を顧客に適切に告知することも、スムーズな事業継続とブランドイメージ維持のために不可欠です。
ECサイトのM&Aに関するよくある質問
以下では、ECサイトのM&Aを進める上で寄せられることの多い質問とポイントを整理しています。
- 商品や在庫はM&Aにどう影響しますか?
-
ECサイトのM&Aにおいて、商品と在庫は事業価値を左右する重要要素です。
商品の独自性や将来性、高い利益率は評価を高めます。一方、在庫は資産ですが、売れ残った不良在庫は評価を下げる要因となります。安定した仕入れ先の確保と、その契約がM&A後も引き継げるかは、事業の継続性を判断する上で重要です。
- ECサイトの運営ノウハウやシステムはどこまで引き継がれますか?
-
ECサイトM&Aでのノウハウやシステムの引き継ぎ範囲は、M&A手法で決まります。
株式譲渡なら会社ごと包括的に、事業譲渡なら契約で個別に定めます。運営ノウハウやシステム、SNSアカウントは重要な引き継ぎ対象ですが、一部アカウントは規約で譲渡できないため注意が必要です。
このような複雑な交渉を成功させるには、ECに強い専門家選びが鍵となります。「M&A比較ナビ」で、あなたの事業に最適なアドバイザーを見つけてみましょう。