印刷会社のM&Aとは?成功事例・価格相場・仲介会社まで徹底解説

「ペーパーレス化の波が押し寄せ、従来の事業モデルだけでは将来が不安だ」
「高額な設備投資の負担が重く、同業者との価格競争も激化の一途をたどっている」

この記事では、課題に直面する経営者の方に向けて、印刷業界のM&A最新動向、価格相場の考え方、事業承継・事業拡大に成功した具体的事例、そして成功に導くプロセスまでを解説します。

M&Aを単なる売却ではなく、貴社の歴史と技術を未来へつなぐ成長戦略として捉え、次章ではまず業界の動向から整理していきます。

目次

印刷会社のM&Aとは

印刷会社のM&Aとは、市場縮小や後継者不足などの業界課題に対応し、企業の存続と成長を図るための重要な経営戦略です。

目的は、デジタル分野への進出による事業領域の拡大、同業他社との統合による既存事業の強化、そして経営者の高齢化に伴う事業承継問題の解決など多岐にわたります。背景には、インターネット普及による紙媒体の需要減少という構造変化があり、異業種からの参入や海外展開も含め、生き残りをかけた再編手段として活発化しています。

印刷会社のM&Aと他業界の違い

印刷会社のM&Aは、他業界と比べ、市場縮小と後継者不足という「守り」の側面が強い点で大きく異なります。

成長戦略が中心の他業界に対し、印刷業界では売り手は事業承継、買い手はデジタル化への事業転換や異業種からの参入を目的とするケースが特徴的です。

そのため、IT企業などによる買収が活発で、M&A時の企業調査(デューデリジェンス)では、印刷設備の資産価値や土壌汚染リスクなどの業界特有の項目が重要な論点となります。

印刷会社のM&Aの価格相場

印刷会社のM&Aに明確な価格相場はなく、中小企業で数千万円から数億円とさまざまです。

価格は、企業の価値を専門的に評価する「企業価値評価」を基準に、売り手と買い手の交渉で決まります。中小企業では、企業の純資産に将来の収益力(のれん代)として利益の数年分を加える方法が一般的です。

また、類似企業の市場評価を参考にするEBITDAマルチプル法(過去の参考値として4-6倍程度、市場状況により変動)も用いられます。特に、特殊印刷技術、安定した顧客基盤、企画力などは価値を高め、逆に借入金や設備の老朽化、土壌汚染などの潜在リスクは評価を下げる要因となります。

印刷会社のM&Aの成功事例

市場縮小が進む印刷業界では、事業基盤の強化や新領域への進出を目指し、M&Aが活発化しています。同業間の統合による生産体制の強化や、異業種の技術を取り込んだ高付加価値サービスの創出事例は、今後の経営戦略の参考になるでしょう。

具体的には、以下のような事例が挙げられます。

以下では、各成功事例を詳しく紹介します。

事例1. 日本創発グループによるシルキー・アクトの買収

株式会社日本創発グループによる株式会社シルキー・アクトの買収は、互いの強みを活かした戦略的なM&Aの成功事例です。

買収の目的は、日本創発グループの多様な企画・販促ノウハウと、シルキー・アクトが持つクリアファイル製造における高い技術力および一貫生産体制を融合させ、高付加価値な商品・サービスを提供することにありました。

市場が縮小する印刷業界において、事業領域の拡大と競争力強化を図る典型的な戦略です。このM&Aにより、両社は相互の事業基盤を強化し、新たなビジネスチャンスの創出を目指しています。

事例2. 大日本印刷(DNP)によるHKホールディング株式取得

大日本印刷(DNP)株式会社による株式会社HKホールディングスの買収は、DNPが注力するモビリティ・産業用高機能材事業を強化するための戦略的な一手です。

M&Aの目的は、自動車部品や産業機器向けに高い加飾成形技術を持つ光金属工業所(HKホールディングス傘下)をグループに加え、両社の技術力とネットワークを融合させることにあります。これにより、変化の激しい市場ニーズに迅速に対応し、先進的な商材の開発・提供を加速させることが可能です。この買収は、DNPが既存事業との技術的シナジーを重視し、成長を加速させるM&A戦略を具体化した成功事例と言えます。

事例3. 日本創発グループと飯島製本の完全子会社化

日本創発グループによる飯島製本の完全子会社化は、印刷から製本までの一貫体制を構築し、ワンストップサービスを強化することを目的とした戦略的M&Aの成功事例です。

100年以上の歴史と高い製本技術を持つ飯島製本をグループに加えることで、両社の強みを融合しました。品質向上と経営効率化を図り、強固な企業共同体として業界内での競争力を高めることが狙いです。

この統合により、顧客への提供価値を高めるとともに、グループ全体の持続的な成長と企業価値向上を目指しています。

印刷会社のM&Aにおすすめの仲介会社・サービス

印刷会社のM&Aを成功させるためには、業界特有の課題や価値評価に精通した専門家のサポートが必要です。数多くの仲介会社の中から、自社の規模や目的に合致した信頼できるパートナーを見つけることが成功への鍵となります。

印刷業界に強みを持つ代表的な仲介会社・サービスとして、以下が挙げられます。

以下では、各仲介業者を解説します。

どの仲介会社に依頼するか迷っている場合は、複数のサービスをまとめて比較検討できる「M&A比較ナビ」の活用がおすすめです。

自分に合った仲介会社を見つけるためにも、まずは無料相談から始めてみてください。

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印刷業M&A総合センター

出典:印刷業M&A総合センター
会社情報詳細
サービス名印刷業M&A総合センター
サポート内容・印刷業界に特化したM&A・事業承継の仲介
サポート体制・秘密保持の徹底
・業界の専門知識を持つコンサルタントが担当
・幅広い買い手ネットワーク
・M&A成立後のPMIサポート
料金体系・譲渡企業(売り手)は着手金・中間金など一切不要の完全手数料無料
・買い手企業からのみ手数料を受領
特徴・国内初の印刷業特化型サービス
・譲渡企業の手数料が完全無料
運営会社株式会社M&A Do
URLhttps://print-ma-center.jp/

印刷業M&A総合センターは、株式会社M&A Doが運営する、国内初の印刷業界に特化したM&A仲介サービスです。

最大の特徴は、事業を譲渡する売り手企業からは着手金や中間金などの手数料を一切受け取らない「完全無料」の料金体系を採用している点です。これにより、後継者不足や事業再編に悩む印刷会社が費用負担を気にすることなく、安心してM&Aによる事業承継を検討できます。

業界特有の設備や工程に精通した専門家が、秘密保持を徹底しながら、幅広い買い手ネットワークを活かして最適なマッチングをサポートします。

スクロールできます

印刷業に特化しているだけあって、専門的な設備や業界事情の理解が深く、打ち合わせもスムーズでした。
最適な買い手企業を紹介していただき、納得のいく条件でM&Aを成立させることができました。

引用:お客様の声

売り手企業からの手数料が無料という点が大きなメリットでした。
経営者側の事情や従業員の雇用継続など、細かい点も配慮して交渉を進めていただいたので、安心して任せられました。

引用:お客様の声

>>(無料)印刷業M&A総合センターに問い合わせる

インテグループ

出典:インテグループ
会社情報詳細
サービス名インテグループ
サポート内容・中小企業に特化したM&A仲介、事業承継支援
・企業価値の無料算定
・M&Aの初期相談から最終契約締結までのワンストップ支援
・買い手向けのディール・ファインディング・サービス
サポート体制・M&Aの全プロセスに精通したコンサルタントによる一貫担当制
・売り手・買い手双方に寄り添う中立的な交渉支援
・秘密保持契約に基づく厳重な情報管理
料金体系・完全成功報酬制(相談料・着手金・中間金は一切無料)
・成功報酬は「譲渡価格」を基準としたレーマン方式
・最低報酬額:1,500万円(税別)
特徴・売り手・買い手ともに完全成功報酬制を採用する上場企業
・中小企業のM&A・事業承継に特化した豊富な実績
・印刷業界を含む多様な業種での成約事例
・独立系ならではの幅広い情報力とマッチング力
運営会社インテグループ株式会社
URLhttps://www.integroup.jp/industry/print.html

インテグループは、中小企業のM&A・事業承継を専門とする、東証グロース上場の仲介会社です。

最大の特徴は、売り手・買い手ともにM&Aが成約するまで費用が一切かからない「完全成功報酬制」を採用している点にあります。これにより、依頼者は金銭的なリスクを負うことなく、安心してM&Aの検討を進めることが可能です。

印刷業界においても豊富な支援実績と有力な買い手ネットワークを持ち、企業価値の無料算定から交渉、契約までを一貫してサポートし、最適なマッチングを実現します。

企業の歴史や文化、従業員の想いを尊重したマッチングを重視しており、譲渡後も経営者が事業に関わり続けるなど、柔軟な条件交渉にも対応可能です。

スクロールできます

今回森山様にご担当していただきました。
難しい取引先でしたが常に私達に「お任せください」と安心感を与えていただきました。
無事に締結の運びとなり大変感謝しております。

本当にありがとうございました。

引用:Google Map

この度、インテグループ阿部祐輝さんには大変お世話になりました。会計事務所さんからご提案頂き、数ある中からインテグループさんなら大丈夫でしょうとのお墨付きで始まりました。10か月余りでクロージング出来ましたこと感謝いたしております。親身になって相手様とも交渉していただいたお陰で、希望通りとなり安心して引き継げました。色々とありがとうございました。

引用:Google Map

こちらにM&Aの意志など一切ないのに「営業ではありません」という口ぶりで平気で営業電話をかけてくる。代表を出すよう指名してくるが、取り次ぐわけないだろう。

引用:Google Map

>>(無料)インテグループに問い合わせる

インテグループの詳細については、以下の記事で解説しているため、あわせてご覧ください。

ベネフィットM&Aコンサルタンツ

出典:ベネフィットM&Aコンサルタンツ
会社情報詳細
サービス名株式会社ベネフィットM&Aコンサルタンツ
サポート内容・M&A仲介、事業承継コンサルティング
・初回相談から最終契約までの一貫サポート
サポート体制・大阪を拠点とした地域密着型サポート
・親会社のネットワークと金融機関との連携
・担当者による一気通貫のサポート体制
・自社コールセンターによる独自のソーシング力
料金体系・着手金・月額報酬:無料
・中間金:発生するが、不成立の場合は全額返金
・成功報酬:レーマン方式(最低報酬額2,000万円)
特徴・実質的な費用リスクが低い「完全成功報酬型」
・創業55年の親会社が持つ豊富なネットワーク
・売り手・買い手・従業員・社会の「四方よし」を理念とする
・製造業を含む多様な業界に対応
運営会社株式会社ベネフィットM&Aコンサルタンツ
URLhttps://www.bmac.co.jp/business-type/587/

ベネフィットM&Aコンサルタンツは、大阪を拠点とする地域密着型のM&A仲介会社です。

後継者不足や事業の将来性に悩む印刷会社の経営者にとって、M&Aが成約するまで実質的な費用負担なく相談できる「完全成功報酬型」の料金体系は大きな魅力です。着手金や月額報酬が不要で、万が一M&Aが不成立に終わった場合でも中間金が返金されるため、リスクを抑えられます。55年の歴史を持つ親会社のネットワークと金融機関との強固な連携を活かし、最適な相手企業探しをサポートしてくれる点も心強いポイントです。

売り手・買い手だけでなく、従業員や地域社会にも配慮した「四方よし」の理念を掲げており、安心して会社の未来を託せるパートナーとなり得ます。

>>(無料)ベネフィットM&Aコンサルタンツに問い合わせる

印刷会社のM&Aの動向(現状・課題・今後)

デジタル化の進展と後継者不足という構造的な問題を背景に、印刷業界ではM&Aによる再編が加速しています。企業の生き残りと成長をかけた戦略を理解するため、現状・課題・今後の視点から業界の動向を解説します。

【現状】印刷業界の市場縮小と事業承継課題

印刷業界は、デジタル化の進行による市場縮小と、経営者の高齢化に伴う後継者不足という二重の課題に直面しています。

紙媒体の需要が長期的に減少し、特に書籍・雑誌などの出版印刷や商業印刷の分野で市場規模が縮小されているのです。さらに、業界の多くを占める中小企業では、後継者が見つからず事業継続が困難になるケースが増加しています。

これらの課題を解決する有効な手段として、事業の存続と従業員の雇用維持、そしてデジタル分野への進出などを目的としたM&Aが活発化しているのが現状です。

【課題】収益基盤の弱体化と競争激化、デジタル対応遅れ

印刷業界は、収益基盤の弱体化、競争激化、デジタル対応の遅れという三重苦に直面しており、これがM&Aの動機となっています。

市場の構造的な縮小とネット印刷の台頭による価格競争で、多くの企業の利益率が低下しています。さらに、原材料費やエネルギー価格の高騰が追い打ちをかけている状況です。

加えて、経営層のデジタルへの理解不足や専門人材の不足から、Webサイト制作やデータ活用といった顧客ニーズの変化に対応できず、ビジネスチャンスを失っているのが課題です。

【今後】規模拡大と異業種参入による新ビジネス創出

今後の印刷業界では、M&Aを通じた規模拡大と異業種参入による新ビジネス創出が加速します。

デジタル化の波に対応するため、印刷会社はXR・メタバースといった最先端技術を持つ企業や、Web制作・動画制作会社などを買収し、従来の印刷業の枠を超えたソリューション提供を目指す動きが活発です。

また、パッケージ印刷や特殊印刷の技術を持つ企業は、他業種から見ても魅力的であり、M&Aによって高機能素材開発やエレクトロニクス分野など、新たな市場へ進出する事例も増えています。事業承継を機にデジタルに強い企業と連携し、ビジネスモデルを変革するケースも見られます。

印刷会社のM&Aのスキーム

印刷業界の再編が進む中で、M&Aは重要な経営戦略の一つです。会社の経営状況や譲渡・譲受の目的に応じて、最適な手法を選択することが成功の鍵となります。代表的なM&Aのスキームとして、以下が挙げられます。

以下では、各スキームをそれぞれ詳しく解説します。

株式譲渡

株式譲渡は、会社の経営権を包括的に承継するM&A手法であり、後継者問題の解決や事業の円滑な引き継ぎに最も適しています。

買い手は、印刷事業に必要な許認可や従業員、取引先との契約などをそのまま引き継げるため、手続きが比較的簡便で、譲渡後すぐに事業を継続できる点がメリットです。中小印刷企業では簿外債務が少ない場合もあるが、潜在的なリスク(例: 簿外債務)を引き継ぐ可能性があるため、買い手側は事前のデューデリジェンス(買収監査)が重要です。

売り手経営者にとっては、創業者利益の獲得や個人保証から解放されるといったメリットがあります。

事業譲渡

事業譲渡は、会社の事業の一部または全部を個別に選んで売買する手法で、特定の事業や資産のみを取引したい場合に有効です。

譲受側は、印刷工場や特定の技術など、必要な資産だけを選んで買収できるため、簿外債務といった意図しない負債を引き継ぐリスクを回避できます。譲渡側は、会社そのものを手元に残したまま不採算事業を切り離し、売却で得た資金を主力事業へ集中させることが可能です。

ただし、資産や契約、従業員の移管には個別の同意や手続きが必要となり、プロセスが煩雑になる点がデメリットです。また、買い手は許認可の再取得が必要になる場合もあります。

資本・業務提携

資本・業務提携は、各企業の経営的な独立性を維持したまま、互いの技術や販売網などの経営資源を共有し、協力関係を築く手法です。

本格的な買収に比べてリスクを抑えつつ、シナジー効果を試したい場合に適しています。特に印刷業界では、デジタル化に対応するためIT企業と提携するなど、自社にないリソースを補い、新たなサービス展開を目指す際に有効です。

株式を持ち合う「資本提携」を行えば、単なる「業務提携」よりも強固で長期的な関係性を構築できますが、期待した効果が得られないリスクや、提携解消が複雑になる可能性も考慮する必要があります。

印刷会社のM&Aを活用するメリット

印刷業界が直面する市場の変化や後継者問題といった経営課題に対し、M&Aは有効な解決策となり得ます。会社を譲渡側、そして譲受側の双方に大きな利点が期待できるからです。以下では、譲渡側と譲受側に分けて、それぞれのメリットを詳しく解説します。

譲渡側のメリット

M&Aは、後継者問題を抱える印刷会社の経営者にとって、事業と従業員の雇用を守りつつ、創業者利益を得られる最適な選択肢の一つです。

具体的には、第三者に会社や事業を譲渡することで廃業を回避し、長年培ってきた印刷技術や取引先との関係を次世代に引き継げます。大手企業の傘下に入ることで、自社だけでは難しかった最新のデジタル印刷機への設備投資や販路拡大が実現し、会社の更なる成長も期待できます。

経営者個人としても、株式売却によって得た利益を確保できる上、金融機関からの借入金に関する個人保証からも解放されるのがメリットです。

譲受側のメリット

M&Aは、事業拡大や新規分野への進出を目指す印刷会社にとって、時間とコストを大幅に削減できる極めて効率的な戦略です。

ゼロから事業を立ち上げるのではなく、既に実績のある会社を買収することで、印刷工場や設備、熟練技術者、そして既存の顧客基盤といった経営資源を一括で獲得できます。これにより、同業種であれば迅速なシェア拡大が、異分野であればデジタルマーケティングやパッケージ印刷といった新市場へのスピーディーな参入が可能です。

また、両社の技術や販売網を組み合わせることで、新たなサービスの創出やコスト削減といったシナジー効果も期待できます。

印刷会社のM&Aを実施するポイント・注意点

印刷会社のM&Aを成功させるには、計画的な準備とプロセスにおけるリスク管理が不可欠です。会社を譲渡側と譲受側では、それぞれ気をつけるべき点が異なります。以下では、各注意点をそれぞれ紹介します。

譲渡側の注意点

会社を譲渡する際は、より良い条件で売却するために自社の企業価値を最大限に高めておくことが重要です。

具体的には、専門スキルを持つ人材の確保、企画・デザイン力や特殊印刷技術(例: UV印刷、箔押し)などの付加価値、そして財務諸表に現れない独自の強みを明確にアピールできるように準備しましょう。同時に、M&Aの交渉過程では、独自の印刷技術や顧客情報といった機密情報が漏洩しないよう、秘密保持契約(NDA)を確実に締結することが不可欠です。

また、M&Aによる環境変化が原因で、重要な従業員が離職するリスクも考慮し、丁寧なコミュニケーションを心がける必要があります。

譲受側の注意点

会社を譲り受ける側は、買収後に想定外のリスクやコストが発生することを避けるため、デューデリジェンス(買収監査)を徹底することが成功のポイントです。

特に印刷会社の場合、工場が使用してきた化学薬品による土壌汚染のリスクや、消防法(例: インクや化学薬品の保管基準)や建築基準法への準拠状況といった環境・法規制面の確認が不可欠となります。加えて、印刷機器の老朽化や保守契約の内容、簿外債務の有無など、財務・労務面のリスクも詳細に調査する必要があります。

これらのリスクを事前に把握し、買収価格や契約内容に反映させることが重要です。

印刷会社のM&Aを実施する手順

印刷会社のM&Aを実施する手順は、以下の通りです。

STEP
M&Aの目的・戦略の明確化

まず、後継者問題の解決や事業の安定化など、M&Aを行う目的を明確にします。その上で、特定の印刷技術や熟練した人材、安定した取引先といった自社の強みを客観的に分析し、譲渡先にとって魅力的に映るよう整理します。

STEP
専門家や仲介会社への相談・依頼

M&Aは専門的な知識が不可欠なため、独力での進行は困難です。M&A仲介会社や銀行、商工会議所など、専門家への相談が成功の鍵を握ります。特に、印刷業界特有の設備評価やビジネス慣習に精通した専門家を選ぶことで、自社の価値を正しく評価し、最適な譲渡先を見つけ出すことが可能になります。

どの仲介会社を選ぶべきかわからない方は、複数の会社を比較検討できる「M&A比較ナビ」のようなサービスを利用するのもおすすめの方法です。

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STEP
買い手・譲渡先候補の選定と交渉

専門家を通じて自社の希望に合う譲渡先候補を探します。関心を示した企業とは秘密保持契約を結び、詳細な情報開示と交渉に進みます。経営者同士のトップ面談でビジョンをすり合わせることが重要です。

譲渡先は同業の印刷会社に限らず、印刷技術を求める異業種も有力な候補となり得るため、広い視野で選定します。

STEP
デューデリジェンス(詳細調査)の実施

基本合意後、買い手による買収監査(デューデリジェンス)が行われます。これに対し、譲渡側は要求された資料の提出が必要です。

特に印刷会社では、設備の老朽化、インク等による土壌汚染リスク、環境規制への対応状況、熟練技術者の在籍状況などが厳しく評価されるため、事前の準備が譲渡価格に大きく影響します。

STEP
契約締結と事業引き継ぎの準備

デューデリジェンスの結果を基に最終的な条件交渉を行い、合意に至れば最終契約を締結します。同時に、M&A後の統合プロセス(PMI)の準備も進めます。

特に、環境変化への不安から生じる従業員の離職を防ぐため、M&Aの目的や今後の体制について丁寧に説明し、従業員の雇用とモチベーションを維持することが重要です。

STEP
クロージング(取引完了)

最終契約書に定められた条件が全て満たされた後、譲渡代金の決済と株式(経営権)の移転手続きを行います。このクロージングをもって、M&Aに関するすべての法的手続きが完了し、経営権が正式に買い手へと移ります。

譲渡側にとっては、事業と従業員を次代に託し、経営から退く最終段階です。

印刷会社のM&Aに関するよくある質問

以下では、印刷会社のM&Aを進める上で寄せられることの多い質問とポイントを整理しています。

印刷業界特有の技術や設備はM&A後どのように引き継がれますか?

印刷会社のM&Aにおける技術や設備は、デューデリジェンスで資産価値が評価された後、M&A手法に応じて引き継がれます。

株式譲渡では、印刷機器や保守契約、技術ノウハウが包括的に承継されるため手続きが簡便です。一方、事業譲渡では、必要な設備や技術を個別に選んで売買するため、手続きは煩雑になりますが、不要な資産を引き継ぐリスクを避けられます。

デジタル印刷や新技術を持つ企業を買収する際のポイントは?

デジタル企業買収の成功は、技術の将来性と自社とのシナジー評価が鍵です。デューデリジェンスでは設備やシステム統合のリスク、専門人材の確保が重要になります。

このような複雑な評価には専門家の助言が欠かせません。

どの仲介会社に依頼するかお悩みの方は、数ある仲介会社をまとめて比較できる、「M&A比較ナビ」の活用がおすすめです。まずは一度、当サイトで信頼できる専門家を探してみてはいかがでしょうか。

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