建設業M&Aとは?業界の現状から成功のポイント、価格相場まで徹底解説

「会社を続けたいけれど、後継者がいない」
「人手不足で事業の先行きが不安」

本記事では、建設業におけるM&Aの基本から、業界ならではの特徴、実際の進め方、価格相場まで、初めての方にもわかりやすく解説します。買い手・売り手双方に役立つ情報を紹介しているため、建設業界でM&Aを検討している方はぜひ参考にしてください。

目次

建設業M&Aとは

建設業M&Aとは、建設会社同士が合併・買収を行い、会社の規模を大きくしたり、新しい技術や人材を手に入れたりする手段です。

近年では、後継者不足や人手不足の問題を解決したり、事業をもっと発展させるために活用されるケースも見られます。建設業M&Aは会社だけでなく従業員やお客様の未来にもかかわるため、事前の準備や慎重な計画がとても大切です。

規模が小さい会社でもM&Aは十分に可能で、技術力や地域の強みが評価されて取引が進むことも珍しくありません。

つまり、建設業M&Aは「会社の将来を守る・伸ばすための有力な方法」といえます。

建設業M&Aと他業界の違い

建設業のM&Aは、他業界と比べて「人材」や「許認可」の扱いが重要になるのが大きな特徴です。

職人や技術者のノウハウが価値の源泉であり、彼らの定着やモチベーション維持が欠かせません。また、建設業許可や入札資格などの許認可は会社ごとに与えられるため、M&A後も確実に引き継げるよう注意が必要です。

さらに、未完了工事や過去の瑕疵など現場ごとのリスク対応も求められます。

人材の定着、許認可の継承、現場リスクの引き継ぎといった要素があるため、建設業のM&Aは他業界と大きく異なる特性を持っています。

建設業M&Aの価格相場

建設業のM&Aでは「この価格が相場」という明確な基準はありませんが、実務ではいくつかの目安が使われています。

まずよく使われるのが営業利益の2~3倍という算定方法です。たとえば営業利益が1,500万円の会社なら、おおよそ3,000万円〜4,500万円がひとつの目安です。ただし、特別な技術や許認可を持っている会社では、もっと高く評価されることもあります。

実際の事例でも、売上が数億円規模の中小建設会社では1〜3億円程度の譲渡価格がよく見られます。一方、大手ゼネコンのM&Aでは、数十億〜数百億円規模になるケースも珍しくありません。

M&A価格は「純資産+将来の利益」など複数の方法を使って計算され、最終的には企業の規模、収益性、職人の定着、許認可の状況、買い手との相性(シナジー効果)なども大きく影響します。

そのため、建設業のM&Aでは財務だけでなく、現場力や人材力なども加味して価格が決まることが多いのが特徴です。

建設業M&Aの事例

建設業界では、後継者不在や事業の拡大、新分野への進出などを背景に、M&Aがひとつの経営戦略として活発に行われています。実際にどのような企業がどのような目的でM&Aを進めているのかを知ることは、自社の今後を考えるうえでも参考になるでしょう。

建設業M&Aの主な事例は、以下のとおりです。

以下では、建設業界における具体的なM&Aの事例を紹介します。

事例1. 戸田建設によるカケンの子会社化

2025年2月28日、戸田建設株式会社子会社アペックエンジニアリングは、名古屋市の設備工事・温浴施設運営会社である株式会社カケンの全株式を取得し、グループに加えました。

今回の事例のM&A目的は2つあります。1つ目は、名古屋や大阪などでの設備工事の拠点を強化すること。2つ目は、カケンが持つスーパー銭湯の運営や浴槽ろ過システムなどのノウハウを取り入れ、温浴事業を広げることです。

今回の買収により、戸田建設グループは設備工事の地域展開を進めると同時に、新たな収益源として温浴事業にも力を入れ、多角的な成長を目指しています。

事例2. 清水建設による丸彦渡辺建設の子会社化

2023年5月31日、清水建設株式会社は、北海道札幌市の老舗建設会社・丸彦渡辺建設株式会社の株式を57.8%取得し、子会社化しました。

丸彦渡辺建設は1918年創業で、北海道を中心に建築・土木工事やリニューアルなど幅広く手がけてきた企業です。王子製紙グループなどからも安定的に工事を受注し、従業員は約490名、売上高は264億円(2022年3月期)にのぼります。

清水建設は、今回のM&Aによって札幌や北海道全体での施工体制を強化し、将来のインフラ需要や再開発に対応する狙いです。また、丸彦渡辺建設が持つ地域密着のノウハウや顧客基盤を取り込むことで、両社の技術力や営業力を高め、相乗効果を目指しています。

建設業のM&Aにおすすめの仲介会社・サービス

建設業のM&Aを成功に導くためには、業界特有の事情やニーズを理解した仲介会社やサービスの選定が重要です。スムーズな交渉や最適なマッチングを実現するには、信頼できるパートナーの存在が欠かせません。

以下では、建設業に特化したM&A仲介会社やサービスを紹介します。

どこに相談すべきか迷っている場合は、複数の仲介会社を一括で比較できる「M&A比較ナビ」の活用もおすすめです。

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M&Aベストパートナーズ

会社情報詳細
サポート内容・初期相談・企業価値算定
・譲渡先・買収先の選定
・トップ面談の調整
・条件交渉
・デューデリジェンス(買収監査)支援
・基本合意書の作成
・最終契約締結・資金決済
・PMI(統合後)サポート
サポート体制・専任アドバイザー制度
・分業制による効率化
・全国展開サポート
料金体系相談無料
特徴・建設・製造・不動産・医療・ヘルスケア・物流・ITの6業界に特化
・各業界の専門知識とネットワークを活用
・業界特有の課題解決に強み
運営会社株式会社M&Aベストパートナーズ
URLhttps://mabp.co.jp/

M&Aベストパートナーズは、建設業など6業界に特化したM&A仲介会社です。全国8拠点・15,000社超のネットワークを活かし、地域密着のマッチングを得意としています。

建設業向けには、ゼネコンや設備工事に詳しい専門チームが在籍し、許認可の承継や職人の引継ぎ、未完工リスクへの対応など、現場特有の課題に対応可能です。

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丁寧な対応と高いマッチング力から、中小建設会社の後継者問題や事業拡大のパートナーとして注目されています。

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M&Aベストパートナーズの詳しい情報は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

建設M&A総研

会社情報詳細
サポート内容・建設業許可や指名競争入札資格の承継手続き支援
・職人ネットワークの維持・引き継ぎ
・未完工事や瑕疵担保責任などの業界特有のリスク評価
・建設業界の商慣習や法規制に関する専門的アドバイス
サポート体制・専任アドバイザー制度
・全国対応・組織体制
・分業制による効率化
料金体系相談無料
特徴・建設業・土木業に特化した深い業界知識
・許認可承継や職人ネットワーク維持の豊富な実績
・業界特有の課題(未完工事、瑕疵担保責任など)への対応力
運営会社株式会社M&A総研ホールディングス
URLhttps://kensetsu-manda.com/

建設M&A総研は、建設・土木業に特化したM&A仲介サービスを提供する東証プライム上場企業です。

建設業出身の専門アドバイザーが、許認可の引継ぎや職人ネットワーク、未成工事リスクなど業界特有の課題にも対応し、相談から成約、引継ぎ支援まで一貫してサポートします。

着手金・月額報酬が不要の完全成功報酬型で、費用負担を抑えたM&Aが可能です。全国8拠点とオンライン対応により、全国どこからでも利用できます。

豊富な業界ネットワークとAIマッチングにより、精度の高いマッチングと平均7ヶ月のスピード成約を実現しています。

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BUILDMA

会社情報詳細
サポート内容・建設業許可の承継要件や通知タイミングの調整
・職人・技術者の雇用継続と待遇保護
・工事経歴書や機材リストなどの業界特有資料の作成支援
・移行後の業務フローの整理と提案
・現場管理体制の引継ぎサポート
サポート体制・専門アドバイザー
・情報管理体制
・士業連携
料金体系相談無料
特徴・工種ごとの価値評価・現場管理体制・業界構造まで熟知
・建設業許可や施工ノウハウの承継に特化したサポート
・最短2週間での譲渡完了実績
・累計150件超の建設業M&Aサポート実績
運営会社株式会社インフィニティライフ (infinity Life Inc.)
URLhttps://build-ma.com/

BUILDMAは、建設業に特化したM&A仲介サービスで、経営者の想いに寄り添う丁寧な支援が特長です。企業価値の算定から買い手探し、許認可や職人の引継ぎ、契約・統合後のフォローまで一貫対応します。

建設業出身の専任アドバイザーが担当し、150件以上の実績をもとにした的確なサポートを受けられます。

着手金・月額報酬は無料で、売り手の成功報酬も200万円までの部分は無料と、低コストで利用しやすい点も魅力です。小規模事業者や地域密着の建設会社に特に適したサービスです。

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建設業M&Aの主な形態とスキーム

建設業のM&Aには、会社の全体を譲渡する方法から、一部の事業だけを引き継ぐケースまで、さまざまな形態やスキームがあります。目的や会社の状況によって最適な進め方は異なるため、事前に基本的な種類を理解しておくことが重要です。

建設業M&Aの主な形態とスキームは、以下のとおりです。

以下では、建設業M&Aでよく使われる主な手法について解説します。

株式譲渡

株式譲渡は、会社の株主が保有する株式を買い手に売ることで、会社の経営権を移す方法です。会社そのものは変わらないため、許認可や取引先との契約、従業員、技術・ノウハウなどをそのまま引き継げるのが大きなメリットです。

建設業では、許認可や入札資格も会社単位で引き継げるため、事業の継続がしやすい点も魅力です。

ただし、借金や過去の責任も引き継がれるため、事前にしっかり調査(デューデリジェンス)を行うことが欠かせません。

事業譲渡

事業譲渡は、会社の中から特定の事業や部門だけを切り離して、買い手に売る方法です。たとえば、建設会社の「土木部門」や「設備工事部門」だけを売却することもできます。

売り手と買い手の間で、引き継ぐ資産や契約、従業員などの内容を個別に決められるため、買い手は必要な事業だけを引き継ぎ、不要な負債などを避けられるのがメリットです。

ただし、建設業許可や契約はそのまま引き継げないため、名義変更や新たな申請が必要になることもあります。その分、準備や手続きに時間とコストがかかる点には注意が必要です。

会社分割・合併

会社分割や合併は、会社の組織や資本を再編する方法です。

分割には、既存の会社に事業を引き継がせる「吸収分割」と、新しい会社を作って事業を移す「新設分割」があります。合併は、複数の会社を一つにまとめる手法です。

吸収分割・新設分割・合併といった手法を使えば、特定の事業だけを切り出したり、会社同士をまとめて事業規模を拡大することができます。たとえば、複数の建設会社が合併して効率化を図るケースなどがあります。

ただし、登記や契約の見直しなど手続きが多く、許認可の再取得も必要になるため、時間やコストがかかる点には注意が必要です。

出資・資本提携

出資・資本提携は、買い手企業が対象会社に資金を出して株式を持ち、資本関係を築く方法です。たとえば、大手ゼネコンが地方の工務店に出資し、将来の買収や協業を視野に入れて関係を強めるケースがあります。

出資・資本提携では、経営権をすぐにすべて引き継ぐのではなく、段階的に関わることができるのが特長です。出資比率や経営方針などは、事前に両社で契約を結び、役割を明確にします。

出資を受ける側にとっては、事業承継や設備投資の資金を確保する手段にもなります。ただし、出資の割合によっては買い手側の経営への関与が限られるため、将来の方向性について十分な話し合いが必要です。

建設業M&Aの売り手側のメリット

建設業界では、後継者不足や将来の事業継続に不安を抱える企業が増えており、M&Aはその有力な選択肢として注目されています。

建設業M&Aの売り手側のメリットは、以下のとおりです。

以下では、建設業M&Aにおける売り手側の各メリットについて紹介します。

第三者に事業を引き継げる

後継者がいない場合でも、外部の企業に事業を引き継ぐことで、会社を続けられます。

親族や社員にこだわらず、自社の技術やノウハウを理解する企業に譲渡すれば、事業の継続だけでなく新たな成長も期待できます。

国や自治体もM&Aによる事業承継を後押ししており、税制優遇や補助金などの支援が受けられる場合もあります。譲渡後は、長年のブランドや取引先を引き継いだうえで、買い手企業の力を活かしてさらに発展できる可能性があります。

倒産や廃業を避けられる

後継者がいない場合や資金繰りが厳しい場合でも、M&Aを活用すれば廃業や倒産を避けることができます。

廃業すると、清算手続きや借金の処理、資産の処分などに多くの手間とコストがかかりますが、M&Aであればそれらをまとめて買い手に引き継ぐことが可能です。

その結果、経営者が背負っていた借金の個人保証から解放されることもあります。会社が残ることで、地域や取引先への影響も小さく抑えられます。

従業員の雇用が新しい会社に引き継がれる

会社をM&Aで引き継げば、従業員の雇用を守ることができます。

廃業や倒産を選ぶと従業員は職を失い、生活にも大きな影響が出ますが、M&Aでは買い手企業がそのまま雇用を継続するケースが多くあります。

建設業に多い職人や現場監督などの技術者も、引き続き活躍できるため、買い手にとっても即戦力になります。

従業員の生活や雇用を守ることは、経営者にとって非常に大きな責任のひとつです。M&Aという選択によって、大切な人材の働く場を確保し、これまで共に歩んできた従業員の将来を支えられることはメリットといえるでしょう。

売却益を得られる

株式譲渡や事業譲渡を通じて、経営者や株主はまとまった資金を得られます。売却益は、老後資金や新たな事業への投資、借金の返済など、自由に活用できます。

廃業ではほとんど利益が残らないことも多いですが、M&Aなら会社の価値に応じた対価が得られるため、金銭的にも精神的にもゆとりが生まれます。特に高い技術力や安定した取引先を持つ企業は、市場価格以上の評価がつくこともあります。

建設業M&Aの買い手側のメリット

建設業界では、人材不足や競争激化への対応、事業の多角化などを目的に、M&Aを活用する企業が増えています。建設業M&Aの買い手側のメリットは、以下のとおりです。

以下では、建設業における買い手側の主なメリットについて紹介します。

即戦力となる人材を確保できる

M&Aによって売り手企業が抱える熟練の職人・技術者や施工管理者をそのまま取り込み、採用・教育にかかる手間やコストを削減できます。

特に建設業では現場ノウハウが人材に依存するため、経験豊富な人材を即戦力として活用できることは大きな強みです。

また、新規採用では確保困難な専門スキルをすぐに社内に取り込むことで、プロジェクト対応力が向上します。

自社の技術力やサービスの幅を強化できる

買収先企業が保有する特殊工法やICT活用技術、温浴施設施工ノウハウなど、既存にはない技術・ノウハウを獲得できます。

これにより自社のサービスラインアップを拡充し、顧客に対する提案力を強化できます。

M&Aで得た技術資産を自社の既存事業へ融合させることで、市場における競争優位性を高め、長期的な成長を促進できます。

設備投資や調達コストを抑えられる

M&Aによるグループ規模の拡大は、「コストシナジー」を生み出し、資材の大量仕入れによる価格交渉力強化や、重複設備の統廃合によるメンテナンス費用削減を可能にします。

買収先の拠点を活用した共同調達や物流ネットワークの統合により、調達コスト全体を低減し、設備投資負担を分散できます。

上記により、資本効率の改善と利益率の向上が期待されます。

建設業M&Aの売り手側の注意点

建設業におけるM&Aは、多くのメリットがある一方で、売り手側には事前に押さえておくべき重要なポイントもあります。建設業M&Aの売り手側の主な注意点は、以下のとおりです。

以下では、売り手がM&Aを進めるうえで注意すべき点について解説します。

経営権や会社のコントロールを失う

M&Aで買い手が会社の株式を多く取得すると、売り手の経営者は会社の意思決定に関わりにくくなることがあります。たとえば、経営方針が変わり、これまでのやり方が続けられなくなることもあります。

対策としては、「株主間契約」で重要な決定には売り手の同意が必要とするルールをあらかじめ取り決めておくことが有効です。

実際に、ある地域工務店が大手ゼネコンに買収された際、買い手の方針で営業エリアが広がり、地元密着の営業スタイルが変わってしまい、取引先が離れるケースもありました。

このように、M&A後も自社の方針や大切にしてきた価値観を守るためには、契約時の取り決めが重要です。後悔のない譲渡を実現するには、将来の経営体制まで見据えた準備が欠かせません。

企業文化や社風が変わる可能性がある

M&A後、買い手企業の文化や働き方が売り手の会社と大きく違うと、現場に混乱が起きることがあります。たとえば、大手企業のマニュアル重視や評価制度が、職人中心の家族的な社風と合わず、やる気の低下や退職につながることもあります。

対策として、PMI(統合後の計画)の段階で、双方の文化や良い習慣を話し合い、「ベストプラクティス」として共有する取り組みが効果的です。

文化の違いを乗り越えるには、早めの対話と歩み寄りが大切です。

従業員の雇用条件や処遇が変わるリスクがある

M&A後、給与や福利厚生が買い手企業のルールに変わることで、従業員にとって条件が悪くなる場合があります。特に、日当制で働く職人と月給制の違いが調整できず、不満から退職につながるケースもあります。

M&A後に待遇が変わることで従業員が不満を抱えるのを防ぐには、譲渡契約に「従業員の待遇を一定期間守る」という内容をあらかじめ入れておくことが大切です。

また、新しい評価制度を導入する際も、時間をかけて丁寧に準備を進めることで、スムーズな移行が期待できます。

希望通りの条件で売却できない場合がある

M&Aでは、買い手との価格交渉がうまくいかないと、思っていたよりも安い金額で会社を譲ることになったり、従業員の雇用条件で譲歩することになったりする場合があります。

特に、地元とのつながりや現場ノウハウなど、目に見えにくい価値が正しく評価されないと、価格に大きな差が出ることもあります。

このような事態を避けるためには、複数の買い手を比べて、価格だけでなく、譲渡後の経営参加や従業員の扱いなども含めて総合的に判断することが大切です。また、FA(ファイナンシャルアドバイザー)に依頼して、会社の価値を裏付ける資料を用意しておくと、交渉を有利に進めやすくなります。

建設業M&Aの買い手側の注意点

建設業のM&Aでは、買い手企業にとっても注意すべきポイントが多くあります。建設業M&Aの書いて側の注意点は、以下のとおりです。

以下では、買い手側がM&Aを進めるうえで押さえておきたい主な注意点を紹介します。

従業員の離職やモチベーション低下する可能性がある

M&Aの直後は、売り手企業の従業員が不安を感じやすく、離職やモチベーション低下が起きやすくなります。実際、ある調査では、M&A後1年以内に従業員の約半数が退職するケースもあると報告されています。

主な原因は、情報不足や役割があいまいになること、社風の違いによる戸惑いなどです。

こうした問題を防ぐには、M&A前から丁寧に情報を共有し、定期的に意見を聞く場をつくることが大切です。特にキーパーソンとなる従業員には、退職を防ぐためのインセンティブやボーナスを用意するのも効果が期待できます。

買収価格が高額になりやすい

建設業のM&Aでは、公共入札資格や特殊な施工技術、職人ネットワークといった無形の強みを持っており、買い手はそれらを高く評価して、買収価格に上乗せする傾向があります。

M&Aでは上記のリスクが非重要で、取引後に期待した効果が出せなければ、買い手企業の損失や株主の不満につながる可能性もあります。

対策としては、相乗効果などの将来利益を過度に楽観せず、慎重に見積もることが大切です。たとえば、利益の見込みを控えめに設定し、DCFや他社比較など複数の方法で買収価格の上限をあらかじめ決めておくと安心です。

投資回収が難しくなることがある

建設業のM&Aでは、買収後の収益が安定せず、思ったように投資を回収できないことがあります。たとえば、工事の遅れや資材費の高騰などで、キャッシュフローが計画どおりに進まないケースも珍しくありません。

投資を予定通りに回収できなくなる主な原因としては、契約の遅延による損害、労務費や資材費の増加、工事の未完了リスクなどが挙げられます。

工事遅延やコスト増加といったリスクに備えるには、プロジェクトごとの進捗と費用の管理を徹底し、契約内容にも柔軟な条項を盛り込んでおくことが重要です。

また、「成果が出た分だけ支払う」仕組み(Earn-out)や、一定の資金を預けて保証に使う仕組み(エスクロー)を使うことで、支払いリスクを減らすこともできます。

建設業でM&Aを実施する手順

建設業のM&Aを実施する手順は、以下の通りです。

STEP
自社の目的とM&Aの全体像を明確化

M&Aを進めるには、まず自社の目的と方針を明確にすることが大切です。

後継者問題の解決や人手不足対策、技術の獲得など、目的を整理し、希望する相手企業の規模や地域、業種、財務状況などの条件を具体的に決めましょう。

STEP
条件に合う売り手・買い手候補探し

条件に合う売り手や買い手を見つけるには、建設業に強い仲介会社やFAに相談し、候補企業を絞り込むのが効果的です。興味のある相手とは、秘密保持契約(NDA)を結んだうえで、経営陣同士の面談を行い、お互いの考えをすり合わせます。

その後、譲渡の方法や金額、調査の範囲などをまとめた「基本合意書(LOI)」を結び、交渉を本格化させていきます。

どの専門家に依頼すれば良いか分からない場合は「M&A比較ナビ」の活用をおすすめします。

M&A比較ナビなら、仲介会社のトップレイヤーを直接紹介してくれるため、初めてM&Aを実施する方も安心して利用できます。

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STEP
デューデリジェンス~最終契約交渉

基本合意書の締結後は、詳細な調査(デューデリジェンス)と最終契約の準備に入ります。

調査では、財務や契約、許認可、人事、技術体制などを専門家とともに確認し、リスクの有無を精査します。

その結果をもとに、譲渡価格や支払い条件、従業員の扱いなどを交渉し、最終契約書(株式譲渡契約など)を法務・財務の専門家の立ち会いで締結します。

STEP
クロージング(実行)

M&Aの最終段階では、株式譲渡なら株主名簿の書換え、事業譲渡なら資産の移転、会社分割や合併なら登記などの手続きを行い、正式に引渡しを実行します。

同時に、建設業許可や入札資格の名義変更・再申請など、必要な行政手続きも進めます。

STEP
PMI(統合後統合)

M&A後は、組織体制や業務フローを整理し、両社の統合を図ります。工事管理や原価管理の仕組みを統一し、従業員には研修や待遇面でのフォローを実施します。

あわせて、許認可や経審点数の維持に向けたチェックも行います。

建設業M&Aに関するよくある質問

以下では、建設業M&Aを進めるうえで寄せられることの多い質問とポイントを整理しています。

建設業のM&Aとは何ですか?

建設業のM&Aとは、建設会社が他社と経営や事業を統合・譲渡することで、後継者不足の解消や技術獲得、事業拡大などを実現する手段です。

株式譲渡や事業譲渡、会社分割、資本提携といった方法があり、戦略策定から調査・契約・統合まで段階的に進めます。

ただし、建設業では許認可の承継や職人の定着、未完工事のリスク管理など特有の課題も多く、慎重な準備と実行が成功のカギとなります。

中小建設会社でもM&Aは可能ですか?

中小建設会社でもM&Aは十分に可能であり、後継者不在や人手不足の解決策として注目されています。実際に近年はM&A件数が大きく増え、国や自治体も税制優遇や補助金などで後押ししています。

事業承継によって技術や取引先を残せるほか、買い手企業の資金力やノウハウを活かして経営基盤や受注機会を広げることも可能です。ただし、許認可の継承や職人の定着には専門家の支援が欠かせません。

適切な準備と支援体制を整えれば、中小企業でもM&Aは現実的かつ有効な選択肢となります。

建設業界に理解のあるM&A仲介会社に依頼したい場合は、複数社を一括で比較できる「M&A比較ナビ」の活用もおすすめです。

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