「後継者が見つからず、住職不在の危機に瀕している」
「檀家や信者の減少により、施設の維持や宗教活動の継続が困難になっている」
単独での法人運営に限界を感じ、深刻な課題を抱えている宗教法人関係者の方も少なくないでしょう。
この記事では、課題を解決する一つの選択肢として注目される「宗教法人のM&A」について、基本的なスキームや価格相場の考え方、具体的な成功事例、具体的な導入手順まで、網羅的に解説します。
M&Aを、大切な信仰とコミュニティを未来へ繋ぐための神聖な承継と捉え、次世代への確実な一歩を踏み出すための知識を深めていきましょう。
宗教法人のM&Aとは
宗教法人のM&Aとは、主に2つのケースを指します。
1つは、後継者不足や経営難に直面した法人が存続のために他の法人と統合する合併で、もう1つは、税制上の優遇措置などを目的に、法人格が事実上「売買(禅譲)」されるケースです。
株式会社のような株式譲渡はできず、法的には吸収合併の手続きを、事実上の売買では代表役員の地位を交代させる形で行われます。
背景には深刻な後継者問題があり、売り手は廃寺を回避でき、買い手は新規設立の困難さを避けられるメリットがあります。
ただし、法律が想定しない脱法行為と見なされる側面もあり、専門家への相談が不可欠です。
宗教法人のM&Aと他業界の違い
宗教法人のM&Aは、一般企業のM&Aと根本的に異なります。最大の違いは、一般企業が株式譲渡で経営権を売買するのに対し、宗教法人には株式が存在しないため代表役員の交代という形で事実上の経営権移転(禅譲)が行われる点です。
目的も大きく異なり、一般企業が事業拡大など営利を追求するのに対し、宗教法人は後継者不足の解決や法人の存続が主な動機です。また、買い手側は、お布施などが非課税となる特有の税制優遇を目的とするケースが多く、一般企業にはない特徴といえます。
宗教法人のM&Aの価格相場
宗教法人のM&Aに明確な価格相場はなく、個別の価値評価によって決まります。
価格は、法人格のみを取引するか、土地・建物などの資産を含むかで変動します。法人格のみの場合、闇市場では3,000万円から5,000万円程度が相場です。
一方、不動産が含まれる場合は資産価値が上乗せされ、納骨堂の経営許可を持つ場合はさらに高額となり、数億円に達することも珍しくありません。
価値を左右する主な要因は、不動産の資産価値、納骨堂などの許認可の有無、税制上の優遇措置です。ただし、宗教法人の売買は法的にグレーな側面も持つため、専門家への相談が重要です。
宗教法人のM&Aの成功事例
宗教法人におけるM&Aは、信者や地域社会との関係性が深く関わるため、一般企業の取引以上に慎重さが求められます。一方で、適切なスキームを選び、信頼関係を維持したうえで実施された事例も存在します。
具体的な宗教法人のM&Aの事例は、以下のとおりです。
以下では、宗教法人ならではの特殊性を踏まえつつ、実際に成功を収めたM&Aの事例を紹介します。
事例1. 後継者不在と老後の資金確保(千葉県)
千葉県で後継者不在に悩む宗教法人が、M&A(禅譲)によって約8,000万円で売却された事例があります。取引により、売り手の住職は老後の生活資金を確保し、買い手側は寺院の経営を継続することで、檀家や施設を守れました。
この事例は、M&Aが後継者問題を抱える宗教法人にとって、有効な解決策となるといえるでしょう。
売却益が事実上の退職金となり、引退後の住職の生活を支える重要な役割を果たす一方で、法人格の売買は税制優遇の悪用など、法的にグレーな側面も指摘されており、慎重な検討が必要です。
事例2. 休眠法人の売却(新潟県)
新潟県で活動を停止していた休眠状態の宗教法人が、企業経営者へ約3,000万円で売却された成功事例があります。上記の法人は檀家がおらず、建物も老朽化していましたが、買い手は節税目的で法人格を取得しました。
M&Aにより、買い手は通常10年以上かかるとされる宗教法人の設立手続きを大幅に短縮でき、売り手は活用されていなかった法人を資金化できました。
今回の事例は、資産価値が低い休眠法人でも、税制上のメリットや設立手続きの簡素化といった点に価値を見出す買い手がいれば、高額で取引される可能性を示しています。
事例3. 資産の有効活用(三重県)
三重県で、複数の未活用地を持つ宗教法人が約8,000万円で売却され、資産の有効活用に成功したM&A事例があります。取引により、買い手は取得した土地を飲食店や駐車場として活用し、新たな収益源を確保しました。
背景には、後継者不足に悩む売り手側の事情と、宗教法人が持つ税制優遇(収益事業への軽減税率適用など)や設立手続きの簡略化といったメリットを求める買い手側のニーズが合致したことがあります。
この事例は、M&Aが単なる事業承継だけでなく、遊休資産を収益化する効果的な手段となり得ることを示しています。
宗教法人のM&Aにおすすめの仲介会社・サービス
宗教法人のM&Aは、法律や税制の特例、地域社会との信頼関係など、一般企業とは異なる専門的な知識が欠かせません。
なかでもおすすめの仲介会社は、以下のとおりです。
どの仲介会社に相談すべきか迷っている方には、複数のサービスをまとめて比較検討できる「M&A比較ナビ」の活用がおすすめです。
自分に合った仲介会社を見つけるためにも、まずは無料相談から始めてみてください。
宗教法人特化M&Aキャピタル

会社情報 | 詳細 |
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サービス名 | 宗教法人特化M&Aキャピタル |
サポート内容 | • 後継者不足や経営難に悩む宗教法人のM&A仲介 • 売り手と買い手のマッチングおよび事業承継支援 • 休眠資産(土地・建物)の観光地化やコミュニティスペースとしての再活用提案 |
サポート体制 | • 経験豊富なM&Aアドバイザーによる相談から成約までの一貫したフルサポート • 宗教法人特有の法律や慣習に精通した専門スタッフが在籍 • 秘密厳守を徹底したサポート体制 • 全国対応 |
料金体系 | 譲渡企業(売り手)は完全成功報酬制 • 初期費用: 着手金、中間金、月額報酬は一切不要 • 相談料: 無料(電話・面談含む) • 費用発生タイミング: M&Aの最終契約が成約した場合にのみ報酬が発生 |
特徴 | • 宗教法人のM&Aに特化した専門性の高さ • 譲渡側の費用負担が成約まで一切ない「完全成功報酬制」 • 最短30日での成約を目指すスピード感 • M&Aの対象を、運営の自由度が高い「単立法人」に限定 • 節税目的のみの安易な売買は禁止 |
運営会社 | 宗教法人特化M&Aキャピタル |
URL | https://syukyoma.com/ |
宗教法人特化M&Aキャピタルは、後継者不足や資産活用に悩む宗教法人専門のM&A仲介サービスです。
最大の強みとして、売り手は相談料や着手金が無料で、成約まで一切費用がかからない「完全成功報酬制」を導入しています。宗教法人特有の法律や慣習に精通したアドバイザーが、秘密厳守で全国の案件に対応し、最短30日での迅速な成約を目指します。
節税目的のみの安易な売買は行わず、主に宗派の制約がない単立法人を対象に、信頼性の高い事業承継をフルサポートしている点が魅力です。
売却が完了した後、自分の心に大きな空虚感が残りました。信仰の場を持つことが、自分のアイデンティティの一部だったからです。しかし、次第に新しい道を歩むことができ、感謝の気持ちが湧いてきました。
引用:note
つちかわ行政書士事務所

会社情報 | 詳細 |
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サービス名 | つちかわ行政書士事務所 |
サポート内容 | • 宗教法人の事業承継・M&Aに関する手続きの代行・サポート • 売り手・買い手情報の案内・斡旋・仲介(マッチング) • 事業承継計画の立案支援 • 行政への認証申請、登記手続き • 承継後の経営問題に関するコンサルティング |
サポート体制 | • 宗教法人専門の行政書士によるフルサポート • 全国対応、希望場所への出張相談(主要都市圏は初回日当無料) • 税理士、公認会計士、司法書士、弁護士など他士業との連携によるワンストップサービス |
料金体系 | • 相談料:無料相談あり • 費用:サービス内容に応じて個別に見積もり ※詳細については要問い合わせ |
特徴 | • 宗教法人のM&A・事業承継に特化した専門性の高さ • 煩雑な行政手続きを含めたトータルサポート • 他の専門家と連携したワンストップでの課題解決 • 全国どこでも対応可能なフットワーク |
運営会社 | つちかわ行政書士事務所 |
URL | http://office-tsuchikawa.jp/shukyohojin-jigyoushoukei-total-support/ |
つちかわ行政書士事務所は、後継者不在や運営に悩む宗教法人のためのM&A(事業承継)を専門に手掛けるサービスです。
宗教法人に精通した行政書士が、承継先の斡旋・仲介から、行政への認証申請や登記といった複雑な手続きまで一貫して代行・サポートします。全国対応で、税理士や弁護士など他士業とも連携したワンストップ体制が強みです。
承継後の経営問題に関するコンサルティングも提供し、円滑な事業承継をトータルでプロデュースします。
宗教法人M&Aプロジェクト

会社情報 | 詳細 |
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サービス名 | 宗教法人M&Aプロジェクト |
サポート内容 | • 宗教法人の売却(禅譲)希望者と買収希望者のマッチング • 専門家による各種手続き支援 • 休眠宗教法人の売買仲介 • 買収希望者へのメリット(税制優遇、収益事業)や注意点(法人種別など)の解説 |
サポート体制 | • 様々な許認可業務に精通した専門家による総合的な支援 |
料金体系 | 相談料:無料(電話・公式サイトのフォーム) 仲介手数料:要問い合わせ |
特徴 | • 後継者不在や経営難に悩む宗教法人の売買(禅譲)に特化 • 新規設立が困難な休眠法人の売買も取り扱う • 買収検討者に対し「単立法人」を推奨するなど、具体的なアドバイスを提供 |
運営会社 | 宗教法人M&Aプロジェクト |
URL | https://s-houjin-trade.com/ |
宗教法人M&Aプロジェクトは、後継者不在や経営難に直面する宗教法人と、法人格の取得を希望する買い手を結びつけるマッチングサービスです。
専門家が各種手続きを支援し、売り手には寺社の存続や文化継承を、買い手には税制優遇や収益事業の可能性といったメリットを提示します。特に、新規設立が困難な休眠法人の売買も扱い、買い手にはリスク回避のため単立法人を推奨するなど、具体的なアドバイスが特徴です。
電話や公式サイトから無料相談が可能のため、宗教法人のM&Aをご検討の方はぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。
宗教法人のM&Aの動向(現状・課題・今後)
宗教法人のM&Aは、少子高齢化や信者数の減少、後継者不足といった社会的課題を背景に増加傾向にあります。しかし、宗教活動の公共性や信者との関係性を考慮する必要があるため、一般企業とは異なる課題も多く存在します。
今後の方向性を理解するには、現状の動きと直面する課題、そして将来的な展望を整理しておくことが重要です。
以下では、宗教法人におけるM&Aの動向を詳しく見ていきましょう。
【現状】後継者不足を背景にM&Aは活発化
現在、多くの寺院や神社では、住職の高齢化や少子化、地方の過疎化による檀家・氏子の減少などを背景に、後継者不足が深刻な問題となっています。
担い手が見つからず、活動を維持できずに廃寺や閉鎖に追い込まれるケースも少なくありません。
このような状況下で、事業承継の有効な手段としてM&Aが活発化しています。宗教活動に意欲のある第三者へ法人を引き継げば、後継者問題を解決し、法人の存続を図ることが可能です。
その結果、地域コミュニティの心の拠り所を守り、大切な教えや文化を次世代へ継承する動きが広がっています。
【課題】税優遇を悪用した「脱法行為」の横行
宗教法人のM&Aが活発化する一方、税制上の優遇措置を悪用した取引が社会問題となっています。宗教法人は、お布施などが非課税になるほか、境内地の固定資産税も免除されます。
制度に目を付け、宗教活動を目的としない第三者が法人格を不正に取得し、脱税やマネーロンダリングに悪用するケースが後を絶ちません。インターネット上では法人格が数千万円から億単位で売買される「闇市場」も形成されています。
文化庁はこうした行為を法の趣旨にもとる脱法行為と位置づけ、犯罪の温床になるとして強く警鐘を鳴らしています。
【今後】需要拡大と規制強化のせめぎ合い
今後、宗教法人のM&Aは二つの側面で進むとみられます。後継者不足は続くため、事業承継を目的としたM&Aの需要はさらに拡大するでしょう。
一方で、脱法行為の横行を受け、文化庁は活動実態のない法人への監督を強め、解散命令も視野に入れるなど規制を強化しています。しかし、現行法には法人格の売買そのものを直接禁じる規定がなく、規制には限界があるのが実情です。
正当な事業承継との線引きも難しく、今後は健全な承継を促しつつ、不正を防ぐための透明性確保や法整備が焦点となります。
宗教法人のM&Aのスキーム
宗教法人におけるM&Aは、一般企業と同じ手法がそのまま使えるわけではありません。
宗教法人法や非営利法人としての位置付け、さらに信者や地域社会との関係性を踏まえた特有のスキームが求められます。適切な手法を理解することで、法的リスクを避けつつ円滑な承継や運営の安定化につなげられます。
具体的なスキームは以下のとおりです。
以下では、宗教法人のM&Aで用いられる代表的なスキームについて解説します。
役員の変更を通じた事実上の売買(禅譲)
宗教法人は株式がないため、役員(代表役員や責任役員)を変更することで、事実上の経営権を移転させる手法です。禅譲や法人格の売買とも呼ばれます。
買い手は、新規設立の煩雑さを避け、税制優遇や墓地経営権などを迅速に引き継ぐことが目的です。手続きは役員変更の登記で完了しますが、宗教活動を本来の目的としない取引は、脱法行為と見なされる可能性があります。
後継者不足に悩む法人と、法人格を取得したい買い手のニーズが合致する形ですが、文化庁は悪用に警鐘を鳴らしています。
合併
宗教法人法に定められた正式な手続きで、後継者不足や経営安定化のため、複数の宗教法人が一つの法人になる手法です。
一方の法人が他方を吸収する吸収合併と、すべての法人が解散して新たな法人を設立する新設合併があります。合併により、消滅する法人の権利や義務はすべて存続・新設法人に引き継がれます。
信者や債権者を保護するため、内部での議決や公告、所轄庁の認証、登記などの厳格な手続きが法律で定められており、適法かつ透明性の高いスキームです。
事業承継
宗教法人の事業承継は、主に代表役員の地位を引き継ぐ形で行われます。多くの法人では住職が代表役員を兼ねているため、「住職の交代」が事業承継の中心です。
手続きは各法人の規則に基づき、責任役員会での選任などを経て行われます。特に宗派に属する法人の場合は、本山といった包括宗教団体の承認が必要になることが一般的です。後継者不足から親族外の第三者に承継するケースも増えており、その際はトラブル防止のため契約書を交わすなど、円滑な引き継ぎが重要となります。
宗教法人のM&Aを活用するメリット
宗教法人におけるM&Aは、後継者不在や信者数の減少といった課題を解消する手段として注目されています。以下では、譲渡側と譲受側に分けて、宗教法人のM&Aを活用するメリットを解説します。
譲渡側のメリット
譲渡側(売り手)にとって最大のメリットは、深刻化する後継者問題の解決です。
M&Aにより新たな担い手を見つけると、廃寺や閉鎖を回避し、法人を存続させられます。その結果、先祖代々守ってきた信仰の場や文化財、そして檀家や信者といった大切なコミュニティを守り抜くことが可能です。
また、法人の土地や建物の資産価値に応じた売却益を得れば、前任住職の退職金や老後の生活資金を確保したり、法人が抱える負債から解放されたりといった経済的な恩恵も期待できます。
譲受側のメリット
譲受側(買い手)にとって最も大きな魅力は、税制上の優遇措置です。
宗教活動で得たお布施や寄付は非課税となり、境内地や建物にかかる固定資産税も免除されます。また、新規設立の認可は非常に困難ですが、既存の法人を買収することで、許認可を含めた事業基盤を迅速に手に入れられます。
そのため、霊園や納骨堂などの、原則として宗教法人にしか運営が認められていない事業へのスムーズな参入が可能です。土地や信者といった経営資源も一括で獲得できるため、事業拡大の時間とコストを大幅に削減できます。
宗教法人のM&Aを実施するポイント・注意点
宗教法人のM&Aを進める際には、一般企業以上に慎重な対応が求められます。宗教法人法や税制の特例に加え、信者や地域社会との信頼関係を損なわないことが大きな課題となるためです。
成功のためには適切に整理して理解しておくことが重要です。以下では、宗教法人のM&Aを実施する際のポイントや注意点を、譲渡側と譲受側に分けて紹介します。
譲渡側の注意点
譲渡側(売り手)は、法的に定められた厳格な手続きを遵守することが重要です。不動産などの重要財産を処分する際は、1ヶ月前までに信者などへの「公告」が法律で義務付けられています。
加えて、法人の規則や所属する宗派の規定に基づく手続き(責任役員会の決議、本山の承認など)も必須です。宗派によっては、売却益の一部を「冥加金」として納める規定が設けられている場合もあるため注意が必要です。
手続きを怠ると、取引自体が無効になったり、過料が科されたりするリスクがあるため、専門家と相談し慎重に進める必要があります。
譲受側の注意点
譲受側(買い手)は、宗教活動を目的としない安易な買収に潜むリスクを理解しておきましょう。文化庁は、税制優遇のみを目的とした法人格の売買を脱法行為と見なし、厳しく監視しています。
特に、活動実態のない「休眠法人」は、行政から解散命令を受けるリスクがあります。また、反社会的勢力が関与していないかなど、法人の背景を徹底的に調査(デューデリジェンス)することが必要です。
宗教法人特有の法規制や社会的な視線を十分に理解し、健全な運営計画を持つことが大前提となります。
宗教法人のM&Aを実施する手順
宗教法人のM&Aを実施する手順は、以下の通りです。
宗教法人のM&Aは法務や税務が複雑なため、まず専門家へ相談することが重要です。M&Aアドバイザーや弁護士、行政書士などが、後継者問題といった課題を整理し、最適な戦略を提案します。譲渡の目的を明確にしたうえで、専門家のネットワークを活かして、法人の価値や伝統を尊重してくれる適切な承継先候補を選定し、交渉の土台を築きます。
数ある仲介会社からどの会社に相談するか迷っている方は、「M&A比較ナビ」を活用してみましょう。希望条件に合う専門家を比較・検討できるため、自身のニーズにあった仲介会社と出会えるでしょう。
候補先と基本的な合意に至ったら、買収監査(デューデリジェンス)を行います。デューデリジェンスは、対象法人の財務や法務、税務状況などを詳細に調査し、隠れた負債や法的リスクがないかを確認する重要な工程です。
特に宗教法人では、法人の「規則」や財産処分の適法性、収益事業の区分、宗教活動の実態などが厳しくチェックされ、買収の妥当性が判断されます。
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な譲渡条件を交渉し、契約を締結します。宗教法人のM&Aの核心は、代表役員の変更による経営権の移転です。
法人の規則に従って責任役員会などで新しい代表役員を選任し、法務局で変更登記を行うことで、法的に経営権が移転します。手続きには、所轄庁への届出も必要です。
最終契約に基づき、譲受側から譲渡側へ対価が支払われる決済(クロージング)が行われます。その後、新体制での運営がスタートします。
帳簿や重要書類、運営ノウハウなどの経営資源だけでなく、信者や地域社会との関係性など、有形無形の資産を円滑に引き継ぐことが、M&A後の安定した運営を成功させるポイントです。
宗教法人のM&Aに関するよくある質問
以下では、宗教法人のM&Aを進めるうえで寄せられることの多い質問とポイントを整理しています。
- 信者・檀家の合意形成はどう行う?
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宗教法人のM&Aにおける信者・檀家の合意形成は、法的な公告手続きと、実務上の丁寧な対話の両方が不可欠です。
法律(宗教法人法)では、合併契約の要旨を公告し、信者・利害関係者が意見を述べる機会を保障することが義務付けられています。実務上は、後継者不足などの背景を正直に説明し、事前に対話の場を設けて理解と納得を得ることが、円滑な合意形成とM&A成功につながります。
- 宗教法人のM&Aによる承継で重視すべき法規制は?
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最も重視すべき法規制は宗教法人法です。特に、不動産などの重要財産を処分する際の「公告義務」や、代表役員交代に伴う「法人規則」に則った手続きと「登記」が不可欠です。
宗教法人のM&Aには特有の法規制が絡み、手続きは複雑です。したがって、どの専門家に相談すべきかの選定が成功につながります。
仲介会社を選ぶ際は多くの選択肢から簡単に比較検討できる、「M&A比較ナビ」の活用がおすすめです。まずは一度、当サイトで信頼できる専門家を探してみてはいかがでしょうか。