物流業界は、EC市場の拡大や人手不足、AI・ロボティクスの導入が進む物流業界では、企業同士のM&A(合併・買収)が競争力の強化や業務効率化、サービス網の拡充などの課題解決の有力な手段として注目を集めています。
本記事では、物流M&Aの基本から業界動向、成功事例、実際の進め方や注意点までを解説します。
物流業界に関わる方はもちろん、今後M&Aを検討している経営者や投資家の方はぜひ参考にしてみてください。
物流M&Aとは
物流M&Aとは、運送会社や倉庫業者などの物流関連企業が、合併や買収を通じて事業の統合・再編を行うことです。
株式や事業の取得、企業同士の統合により、経営資源やネットワークを一体化します。
主な目的は、事業エリアや配送網の拡大、人材や設備の確保、業務効率化、経営基盤の強化などです。人手不足や後継者不在、「2024年問題」などの課題を解決する手段としても活用されています。
物流M&Aは、業界の課題対応と成長戦略の両面で重要な役割を果たしています。
物流M&Aの成功事例
物流業界では、M&Aを通じて人手不足や輸送力の確保、コスト削減、ネットワーク拡大などの課題を解決する動きが活発になっています。なかでも、戦略的に実施されたM&Aは、業績向上や事業拡大につながる成果を上げています。
実際に物流M&Aに成功した事例は、以下のとおりです。
以下では、実際に成果を上げた代表的なM&Aの事例を紹介し、どのような効果があったのかを見ていきましょう。
事例1:日本郵政グループの海外展開
日本郵政グループは、国内市場の縮小に対応するため、2015年にオーストラリアの大手物流会社トール・ホールディングスを約6,200億円で買収しました。狙いは、アジア・オセアニアを中心とした国際物流事業の強化です。
買収により、物流ネットワークは55ヶ国以上に拡大し、グローバル展開が一気に進み、株式上場前の成長戦略としても注目されました。
一方で、2017年に約4,000億円、2021年に674億円の減損損失を計上し、収益性の低い事業の売却にも踏み切りました。
本事例は、海外M&Aの可能性とともに、PMIやリスク管理の重要性を示しています。
参考:日本郵政グループ「当社子会社の一部事業の譲渡に関するお知らせ」
事例2:ヤマトホールディングスの技術系企業買収
ヤマトホールディングスは、物流の効率化とDX推進を目的に、技術系企業のM&Aを積極的に進めています。とくに注目されたのが、2019年に実施したIT物流システム企業「Packcity Japan」への出資・連携強化です。
M&Aの狙いは、宅配ロッカーや無人受け取りシステムの導入を通じて、再配達の削減や人手不足への対応を図ることでした。さらに、ラストワンマイルの効率化や消費者の利便性向上にも寄与しています。
買収後、ヤマトは宅配ロッカーの設置を加速させ、EC事業者との連携を強化しました。データ活用による配送最適化も進み、業務負荷の軽減とサービス品質の向上を同時に実現しています。
本事例は、単なる規模拡大ではなく、デジタル技術を取り入れた新たな物流モデルの構築に向けた戦略的M&Aの成功例といえます。
事例3:佐川急便の地域密着型企業との統合
佐川急便は2024年7月、低温物流に強みを持つC&Fロジホールディングスを約1,237億円で買収しました。目的は、地域に根ざした低温物流網の強化と、全国規模の一貫コールドチェーンの構築です。
C&FロジHDは、地域密着型の食品物流において高い実績を持ち、佐川急便とは既に業務提携実績がありました。買収により、両社の物流網や人材を相互に活用し、共同配送や拠点統合を通じて効率化とコスト削減を実現しました。
また、ふるさと納税や食品ECへの対応力向上、新規分野への進出など、事業基盤の多角化にもつながっています。この統合は、地域密着型企業の現場力と大手の経営資源を融合させた成功事例といえます。
参考;株式会社M&Aベストパートナーズ「佐川急便のSGホールディング、C&Fロジホールディングスへの対抗TOBが成立」
物流M&Aにおすすめの仲介会社
物流業界でのM&Aを成功させるには、適切な仲介会社の選定が重要です。業界特有の事情や課題に対応できる専門性のある仲介会社を選ぶことで、スムーズな交渉や統合、成約後の成長につながります。
物流M&Aでとくにおすすめの仲介会社は、以下のとおりです。
以下では、各仲介会社の特徴を紹介します。
それぞれの仲介会社には、実績やサポート体制、得意分野など独自の強みがあります。自社の規模やニーズ、目指す事業の方向性にマッチしたパートナーを見つけるためにも、複数社を比較・検討することが成功のポイントです。
どの仲介会社が最適か迷った場合や、プロの視点で自社の課題や希望に合った会社を選びたい場合は、第三者による仲介会社比較サービス「M&A比較ナビ」の活用がおすすめです。
日本M&Aセンター
会社名 | 株式会社日本M&Aセンター |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 鉄鋼ビルディング24階 |
設立 | 1991年4月 |
事業内容 | M&A仲介・アドバイザリー(中堅・中小企業向け)、企業評価、事業承継支援、PMI支援など |
日本M&Aセンターは、物流業界に特化した実績と専門性を持つ大手仲介会社です。累計7,000件以上の成約実績があり、物流業界でも多数の支援事例があります。運行管理者資格を持つアドバイザーが在籍し、許認可や労務など業界特有の課題にも対応可能です。
全国・海外に拠点を持ち、広範なマッチング力も強みです。PMI(統合支援)まで一貫して対応し、トラック運送や倉庫業など幅広い分野のM&Aに実績があります。
費用はやや高めですが、専門性とサポート力を重視する企業には信頼できる選択肢です。
なお日本M&Aセンターの詳細は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
M&A総合研究所
会社名 | 株式会社M&A総合研究所(M&A総研ホールディングス) |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN館17階 |
設立 | 2018年10月12日 |
事業内容 | M&A仲介事業、M&Aメディア事業 |
M&A総合研究所は、物流・運送業界のM&Aに強みを持つ仲介会社です。業界特有の許認可や人手不足、後継者問題などに精通したアドバイザーが在籍し、数多くの成約実績を誇ります。
サービスは完全成功報酬制を採用しており、着手金や中間金は不要です。成約まで費用がかからないため、初めてM&Aを検討する企業にも安心感があります。全国対応・平均6.2か月というスピード感ある支援も特徴です。
利用者からは「丁寧な対応」「費用面の明確さ」が高く評価されており、物流M&Aを効率よく進めたい企業にとって、有力な選択肢となります。
なおM&A総合研究所の詳細は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
ストライク
会社名 | 株式会社M&A総合研究所(M&A総研ホールディングス) |
本社所在地 | 東京都千代田区大手町1丁目2番1号 三井物産ビル15階 |
設立 | 1997年7月 |
事業内容 | M&Aの仲介、M&A市場SMARTの運営、企業価値の評価、企業価値向上・財務に関するコンサルティングなど |
ストライクは、物流・運送業界のM&Aに実績を持つ仲介会社です。中堅・中小企業の事業承継や成長支援を多数手がけており、物流分野でも多くの成約事例を公開しています。
公認会計士や税理士などの有資格者が多数在籍し、許認可や労務管理など業界特有の課題にも対応できます。独自のM&Aプラットフォーム「SMART」により、買い手・売り手の効率的なマッチングも可能です。
全国に拠点を構え、初回相談からPMI(統合支援)まで一貫したサポートを提供しています。報酬体系は明確で、レーマン方式を採用しており、費用面の安心感もあります。
迅速な対応力と専門性の高さから、物流M&Aを検討する企業にとって最適な選択肢となるでしょう。
なおストライクの詳細は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
物流業界でM&Aが注目される理由
近年、物流業界では企業の統廃合や事業承継を目的としたM&Aが活発化しています。
物流業界でM&Aが注目されている理由は、以下のとおりです。
以下では、具体的な理由について紹介します。
人手不足・2024年問題への対応
物流業界では、人手不足と「2024年問題」への対応が深刻な経営課題となっています。
M&Aにより他社のドライバーやスタッフを引き継ぐことで、即戦力の確保や人員の柔軟な再配置が可能です。人材育成ノウハウの共有や後継者問題の解決にもつながります。
2024年問題では、ドライバーの労働時間が制限され、輸送力不足やコスト増が懸念されています。M&Aにより規模の経済を活かせば、共同調達やIT導入で業務効率化を進めることが可能です。
ネットワーク統合による配送ルートの最適化や、労働環境の改善による離職防止も期待できます。
人手不足と2024年問題の双方に対応できる手段として、M&Aの重要性が高まっています。
事業承継・後継者問題の解決
物流業界では、経営者の高齢化により後継者不在が深刻化しており、廃業に追い込まれる中小企業が増えています。特に地方や小規模事業者では、親族内承継が難しく、事業継続が困難です。
M&Aを活用すれば、会社や従業員、取引先との関係を保ちながら事業承継が可能です。買収企業の資本力やノウハウにより、経営の安定や成長も期待できます。従業員や取引先の安心感にもつながり、グループ化によって新たな成長機会も広がるでしょう。
人材・車両・拠点が密接に関わる物流業界では、M&Aによる統合がスムーズな事業承継につながります。会社の存続と発展を両立できる手段として、M&Aが注目されています。
経営基盤・ネットワーク強化
物流業界では、M&Aによって経営基盤の強化とネットワークの拡大が実現できる点が注目されています。
大手グループに加わることで資本力やノウハウを得られ、財務の安定や経営効率の向上が図れます。車両や倉庫、システムの共有によりコスト削減も可能です。
また、他地域の物流会社を取り込むことで、新たなエリアへの進出やネットワークの迅速な拡充が可能です。取引先や顧客の基盤も広がり、事業の成長につながります。
さらに、ITや自動化技術を持つ企業との統合によりDXが進み、新規サービス展開の機会も生まれます。M&Aは、安定と成長を両立できる手段としても重要性を増しています。
コスト削減や業務効率化
物流業界では、M&Aによってコスト削減と業務効率化が実現できる点が注目されています。
統合により拠点や設備の重複を整理でき、車両や燃料の一括調達でコスト圧縮が可能です。配送ルートやネットワークを統合すれば、輸送効率も向上します。
また、ITシステムの共通化により投資負担を抑えつつ、自動化や業務の標準化が進みます。ノウハウや人材を共有することで業務レベルも向上し、迅速な意思決定にもつながるでしょう。
M&Aは、コストと効率の両面で競争力を高める有効な手段です。
物流2024年問題とM&Aの関係
物流業界では、人手不足や長時間労働が以前から深刻な課題となってきました。とくに、「2024年問題」は、輸送力の低下やコストの増加などの深刻な影響をもたらしており、各社は対応を急いでいます。その中で、M&Aを活用した経営資源の再編や体制強化が、有効な手段として注目されています。
以下では、物流2024年問題の背景と、M&Aが果たす役割について見ていきましょう。
物流2024年問題とは
物流2024年問題とは、2024年4月に施行された法改正により、トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられたことをきっかけに、物流業界が直面するさまざまな課題のことです。
年間960時間の上限や休息時間の厳格化により、従来の働き方が大きく制限され、輸送力の不足やドライバーの収入減、さらなる人手不足が懸念されています。
その影響は業界内にとどまらず、配送の遅延やサービス低下など、荷主や消費者にも広がる可能性があります。今後は、業務の効率化やDXの推進、共同配送の活用など、持続可能な物流体制への転換が必要です。
2024年問題がM&Aに与える影響
労働時間の上限規制によって事業継続が難しくなる企業が増えたことで、M&Aを活用する動きが広がっています。
2024年の物流業界におけるM&A件数は121件と、前年から約2割増加しました。事業承継やドライバー・車両の確保、コスト削減を目的とした再編が進んでいます。
国土交通省の試算では、必要な対策を取らない場合、2024年度の輸送能力は約14%、2030年度には約34%不足すると見込まれています。ドライバーの離職や採用難も重なり、多くの企業が単独での対応に限界を感じているのが現実です。
人手や輸送力の確保が難しくなるなかで、中小の物流企業が大手やファンドの傘下に入る動きも増えています。M&Aは、人材・資源の確保やネットワークの強化、業務の効率化を実現する手段として、業界全体の構造変化を支えています。
問題解決としての物流M&A戦略
物流業界では、人手不足や2024年問題、後継者不在、コスト増加など複数の課題が深刻化しています。業界が抱える構造的な課題に対し、M&Aは実効性の高い対応策として活用が進んでいます。
2024年のM&A件数は121件と前年から2割以上増加しました。労働規制の強化やEC需要の拡大、経営者の高齢化が背景にあります。
M&Aにより、他社のドライバーや車両、拠点を取り込み、人材や輸送力の確保が可能です。事業承継の促進や拠点統合によるコスト削減、IT導入による業務効率化も実現できます。
M&Aを成功させるには、シナジーの活用や統合プロセスの管理、DX推進が不可欠です。物流M&Aは、多面的な課題を解決する有力な戦略として、今後も活用が進む見通しです。
物流M&Aの代表的な手法と特徴
物流業界におけるM&Aには、いくつかの代表的な手法があり、それぞれ目的や状況に応じて選ばれています。物流M&Aの代表的な手法と特徴は以下のとおりです。
事業承継、規模拡大、効率化など、M&Aを通じて実現したい方向性によって、最適な手法は異なります。以下では、物流業界で活用されている主なM&A手法とその特徴を整理します。
水平統合
水平統合は、同じ業種・業態の企業同士が行うM&Aで、物流業界でも広く活用されています。
競合関係にあった企業を取り込むことで、営業エリアや取引先の拡大、サービス強化を実現できます。
また、拠点や設備、管理部門の統合により無駄を省き、コスト削減や業務効率化につなげることも可能です。ノウハウの共有やネットワークの最適化を通じて、競争力の向上も期待されます。
一方で、人員再編による混乱や独占禁止法への配慮が必要になる場合もあります。とはいえ、水平統合は成長を目指す物流企業にとって、有効な選択肢のひとつです。
垂直統合
垂直統合は、サプライチェーンの異なる段階にある企業同士が統合・買収するM&A手法です。
物流会社が荷主企業や製造・販売業者を取り込むことで、上流から下流までの工程を自社で一貫管理できるようになります。
一貫管理により、中間コストの削減や品質・納期の一元管理が可能となり、安定供給とサービス向上が期待できます。また、新たな事業領域への進出や、データ活用によるビジネスの高度化も可能です。
ただし、異業種の統合には多額の投資と高度な経営管理が求められ、柔軟性の低下や取引先との関係悪化といったリスクもあります。
垂直統合は、物流の効率化と競争力強化を図るうえで有効な手段です。
多角化
多角化は、物流企業が新たな分野や市場に進出するためにM&Aを活用する手法です。
倉庫業や冷凍物流、IT物流など、異なる領域の企業を取り込むことで、短期間で新規事業を立ち上げられます。
異なる領域の企業を取り込むことで収益源を複数化でき、景気変動や業界特有のリスクにも強い経営体制が築けます。さらに、買収先のノウハウや技術を活用することで、既存事業との相乗効果も期待できるでしょう。
進出先の分野によっては、既存事業と関連性の高い「関連多角化」や、まったく異なる分野への「無関連多角化」、複数の異業種を統合する「コングロマリット型」に分けられます。
ただし、異業種の統合は経営の複雑化や投資リスクも伴うため、戦略的な判断が重要です。多角化は、成長と安定の両立を目指す物流企業にとって、有力な選択肢の一つです。
物流業界でM&Aを活用するメリット
物流業界でM&Aを活用するメリットについて、譲渡側と譲受側それぞれの立場から紹介します。
M&Aによってメリットを享受できるかどうか、参考にしてみてください。
譲渡側のメリット
物流業界でM&Aを活用すると、譲渡側にはいくつかのメリットがあります。
まず、後継者がいなくても事業を続けられるため、廃業せずに済みます。会社を売却することで、まとまった資金を得ることが可能です。
また、従業員の雇用を守ることができ、これまで築いてきた取引先との関係やノウハウ、資産も引き継がれます。さらに、経営者が個人保証や債務から解放されるケースもあります。
大手グループの一員となれば、経営の安定やサービス向上も期待できるでしょう。
このように、M&Aは経営者や従業員、取引先にとって、次の世代へ安心して事業をつなぐ手段といえます。
譲受側のメリット
物流業界でM&Aを活用する譲受側には、事業規模や営業エリアを短期間で拡大できる点が大きなメリットです。
また、リスクを抑えながら新たな拠点や顧客、人材、倉庫・車両などの設備を一気に獲得できます。
すでに実績のある組織を買収することで、ゼロから立ち上げる時間やコストを抑えられ、さらにはシナジー効果によるコスト削減やサービス強化も期待できます。
物流M&A成功のポイント・注意点
物流M&Aは、人手不足や事業承継、ネットワークの強化など多くの課題に対応できる有効な手段です。しかし、統合後の運営がうまくいかなければ期待した効果は得られません。
成功させるためには、戦略的な視点と現場に即した実行力の両立が重要です。物流M&A成功のポイントは、以下のとおりです。
以下では、物流M&Aを効果的に進めるために押さえておくべきポイントを解説します。
目的を明確にする
物流M&Aを成功させるには、まず「なぜ行うのか」という目的を明確にすることが重要です。人手不足の解消、事業承継、エリア拡大など、目的に応じて選ぶべき相手や進め方が変わります。
目的が曖昧なままだと、交渉が難航したり、統合後に期待した効果が得られないリスクがあるため注意が必要です。実際、明確な目的を持った企業ほど、シナジー創出や事業拡大に成功している事例が多く見られます。
M&A実施前に目的を言語化し、社内で共有しておくことが、ターゲット選定やPMI(統合プロセス)の設計にもつながります。目的の明確化は、物流M&Aの成果を左右する出発点です。
統合後の成長を見据えたシナジーを重視する
物流M&Aを成功させるには、統合後のシナジーを重視することが重要です。シナジーとは、企業統合によって売上拡大やコスト削減などの相乗効果を得ることを指します。
たとえば、SGホールディングスはC&FロジHDを買収し、低温物流の統合によって大規模なシナジー効果を見込んでいます。成功事例の多くに共通するのは、明確なシナジー創出計画と統合プロセス(PMI)の徹底です。
ネットワークやシステム、ノウハウを共有することで、M&Aは単なる規模拡大にとどまらず、持続的な成長につながります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する
物流M&Aを成功させるには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が重要です。業務のデジタル化により、アナログ作業の効率化やコスト削減、人的ミスの防止が可能です。伝票の電子化だけでも年間300億円超の効果があるとされています。
AIによる配送ルートの最適化やリアルタイム追跡の導入は、配送効率やサービス品質の向上につながります。2024年問題による人手不足への対応策としても有効です。
また、DXノウハウを持つ企業のM&Aは、グループ全体のデジタル化を加速させます。セイノーホールディングスなどの事例では、DXとM&Aの相乗効果によりネットワークの強化と効率化が進んでいます。
DX推進は、物流M&Aの成果を高める重要な戦略です。
M&A仲介会社を活用する
物流M&Aを成功させるには、専門のM&A仲介会社を活用することが有効です。物流業界は許認可や人材管理など特有の事情が多く、実績ある仲介会社の知見が成約率向上に直結します。
仲介会社は、適切なマッチングや価格交渉、契約支援まで一括で対応し、トラブルやミスマッチを防ぎます。
手数料(譲渡価格の3〜5%程度)は発生しますが、専門性の高い仲介会社の支援は、スムーズで効果的なM&A実現の重要なポイントです。
物流業界でM&Aを実施する手順
物流業界のM&Aを実施する手順は、以下の通りです。
まずは、なぜM&Aを行うのか、目的を明確にします。
たとえば「ドライバー不足解消したい」「後継者問題の解決したい」などの理由が目的として挙げられます。
目的が曖昧だと価格交渉・PMIでぶれため、目的に沿って「株式譲渡(許可承継)か事業譲渡(許可再取得)」かを早期に想定しておきましょう。
物流業界に精通したM&A仲介会社やアドバイザーに早めに相談しておくと、リスクを回避し、スムーズな進行が可能です。
どの専門家に依頼すれば良いか分からない方は「M&A比較ナビ」の活用をおすすめします。
M&A比較ナビなら、仲介会社のトップレイヤーを直接紹介してくれるため、初めてM&Aを実施する方にとって不安を軽減できるでしょう。
自社とシナジーがあるか、企業文化や経営方針が合うか、財務状況や車両・設備、主要顧客や従業員の状況などを総合的に比較検討しましょう。
物流業界では、車両台数や倉庫立地、荷主との関係性が大きなポイントになるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
面談では、経営理念や今後のビジョン、会社の方向性、従業員やドライバーへの配慮などについて、両者の考え方をすり合わせます。
M&A成立後にミスマッチや誤解が生じないよう、しっかり対話し、信頼関係を築くことが大切です。場合によっては、従業員や主要荷主へ説明する時期・方法も話し合っておきましょう。
双方が大まかな条件や方針で合意できたら、基本合意書(LOI)を取り交わします。
この段階で買収金額の幅や独占交渉期間、どこまで調査するか(デューデリジェンスの範囲)、許認可の承継方法など、大まかな枠組みを文書にまとめます。
とくに株式譲渡か事業譲渡かによって必要な許認可対応が異なるため、前提条件もきちんと整理しましょう。
続いて、買い手側によるデューデリジェンス(DD=詳細調査)を実施します。
財務や法務だけでなく、従業員や労務、運送業許認可、車両や倉庫、主要荷主との契約内容など、幅広い観点でリスクや問題点を洗い出します。
万が一、想定外のリスクが見つかった場合は、条件の見直しや追加交渉につながることもあるため、売り手も必要な資料をあらかじめ揃えておくとスムーズです。
契約書には、最終的な取引価格や譲渡内容、クロージングまでに必要となる許認可手続きや資産・株式の移転方法などが明記されます。
たとえば、株式譲渡であれば代表者や役員変更の届出、事業譲渡であれば運送業許可の譲渡譲受認可取得など、大切な手続きを漏れなく確認しましょう。
買収代金の支払いや資産・株式の名義変更、必要な許認可や各種届出、保険や車検証の名義変更など、実際の引き渡し手続きを着実に進めます。
また、M&A完了後はPMI(買収後の統合プロセス)が始まり、システムや管理体制、ドライバーの待遇などを統合していきます。
ここでしっかりとコミュニケーションを取り、オペレーション面で混乱が起きないよう進捗をモニタリングすることが、M&Aの成功を左右します。
物流M&Aに関するよくある質問
物流M&Aに関しては、検討段階から実行・統合後に至るまで、多くの疑問や不安が生じやすい分野です。以下では、物流M&Aを進めるうえで寄せられることの多い質問とポイントを整理しています。
Q 地方の物流会社でもM&Aは可能?
A 地方の物流会社でもM&Aは十分に可能です。
実際、後継者不足や人手不足を背景に、地方の中小物流企業を対象としたM&Aは増加しています。地域密着型のサービスや独自の強みが評価され、大手による買収事例も多くあります。
実績ある仲介会社の支援を受ければ、地方の物流会社でもスムーズなマッチングと交渉が期待できるでしょう。
とくに、「M&A比較ナビ」を活用すれば、信頼できる仲介会社のトップレイヤーを紹介してもらえるため、初めてのM&Aでも安心して進められます。
地方企業ならではの事情や強みを理解した専門家とともに、最適なパートナー探しや交渉を円滑に進めていくことが可能です。
Q M&Aの進め方がわからない場合は?
A M&Aの進め方がわからない場合は、仲介会社や専門家への相談が最も確実です。
仲介会社や専門家に早めに相談することで、自社に合った進め方を提案してもらえます。M&Aは目的の明確化から契約、統合支援(PMI)まで段階的に進めます。専門家は手続きの流れや価格の算定、相手先の選定、契約書作成などを一貫してサポートします。
不安な場合は、複数の仲介会社を比較し、対応力や費用を確認しましょう。自分だけで悩まず、プロの力を借りることが成功の近道です。
「M&A比較ナビ」のようなサービスを活用すれば、実力ある仲介会社を効率的に選べるため、初めてのM&Aでも安心して進めることが可能です。