「事業を引き継いでほしい」
「ホテル運営に挑戦したい」
本記事では、ホテルM&Aの基本から、注目される背景、買収・売却それぞれのメリット、実際の成功事例や価格の目安まで、わかりやすく紹介します。
ホテル業界に関わる方はもちろん、今後の事業展開を考えている方にも役立つ内容です。
ホテルM&Aとは
ホテルM&Aとは、ホテル事業や運営会社を他社に譲渡・統合する手法で、ホテル業界における企業の合併・買収を指します。
近年は、経営者の高齢化や後継者不在に伴う事業承継の手段として注目されており、創業者利益の確保や従業員の雇用維持にもつながります。
また、訪日外国人の増加に対応するため、大手企業や投資ファンドが都市部や地方のホテルに投資する動きも活発です。
異業種からの新規参入や、経営不振に陥ったホテルの再生を目的としたM&Aも増えており、業界全体の構造転換や収益改善の手段として幅広く活用されています。
ホテルM&Aと他業界の違い
ホテルM&Aの最大の特徴は、不動産価値と営業許可、そして運営ノウハウといった無形資産の評価が重視される点です。
建物や土地の価値に加え、旅館業法などの許認可が承継できるかどうかも重要な検討項目です。
一方、製造業では設備や技術、小売業では在庫や販売網、IT業では開発力やデータ資産など、業界ごとに評価の軸や規制、統合時の注力ポイントが大きく異なります。
ホテルM&Aは、とくに現場運営の引き継ぎと許認可手続きが複雑で、専門的な支援が欠かせません。
ホテル業M&Aの価格相場
ホテルM&Aの価格相場は、物件の立地やブランド、稼働率により大きく異なりますが、近年の取引では1室あたり約6,000万〜2億5,000万円の範囲で推移しています。
企業価値を収益力で評価するEV/EBITDA倍率は、ビジネスホテルで5〜8倍、フルサービス型や高級ホテルでは12〜20倍が目安です。
背景には、インバウンド需要の回復、円安による外資流入、都市部でのホテル供給減少などがあります。
今後は大阪・関西万博やIR開業なども追い風となり、取引価格は高止まりまたは上昇傾向が続くと見込まれます。M&Aを検討する際は、per-key価格とEV/EBITDA倍率の両面からの評価が欠かせません。
ホテル業界M&Aの事例
ホテル業界では、インバウンド需要や都市開発を背景に、あらゆるM&Aが行われています。
事業承継や経営再建を目的としたものから、ブランド強化や事業拡大を狙ったものまで、その背景や戦略は多様です。
以下では、実際に行われた主な事例をもとに、M&Aの傾向や特徴を詳しく見ていきます。
事例1. 野村不動産HDのホテル2社合併
野村不動産ホールディングス株式会社は、2022年4月1日付で「野村不動産ホテルズ株式会社」と「株式会社UHM」を合併しました。存続会社は野村不動産ホテルズです。
本合併の目的は、「NOHGA HOTEL」と「庭のホテル」の2ブランドを統合管理し、ノウハウや人材の共有によるサービス向上と運営効率の強化を図ることです。予約システムや顧客データの一元化、共同購買によるコスト削減など、シナジー効果を見込んでいます。
合併後は、NOHGA HOTELの上野・秋葉原・京都の3施設と、庭のホテル 東京の計4施設を中心に運営。レストランやフィットネスを備えたライフスタイル提案型の宿泊施設として差別化を進めています。
今後はブランドの多様化や海外展開も視野に、ホテル事業の拡大と収益力向上を目指します。
事例2. 三菱地所による株式交換
三菱地所株式会社は、2021年8月1日付で株式会社ロイヤルパークホテル(RPH)を株式交換により完全子会社化しました。RPH株式1株につき三菱地所株式0.025株を割当てる簡易株式交換で、全株式約5,472万株を取得しています。
本件は、三菱地所の「長期経営計画2030」に基づくノンアセット戦略の一環です。グループ内ホテルの一体運営と意思決定の迅速化を目的とし、共同購買やIT統合によるコスト削減も進めています。
今後は、旗艦ホテルを含む全施設の運営効率化とブランド強化を図り、ホテル事業の拡大とDX推進を進める方針です。
事例3. ハウステンボスの子会社化
エイチ・アイ・エス(HIS)は、2010年4月にハウステンボス(HTB)を連結子会社化しました。新規発行株6万株のうち4万株(約20億円)をHISが引き受け、発行済み株式の66.67%を取得しています。残る株式は九州電力やJR九州など地元5社が保有しました。
HTBは1992年に開業し、1996年をピークに入場者数が減少しています。2003年に約2,289億円の債務を抱えて経営破綻し、野村系ファンドの支援も2008年の金融危機で終了しました。
子会社化後、HISは新規ホテルの開業、施設改修、イベント拡充を実施し、さらに飲食・物販強化や組織改革にも取り組み、2010年度以降は10期連続で黒字化を達成しました。
HISの資金力と旅行事業のノウハウを活かし、地域企業との連携も深めた点が大きな特徴です。旅行商品とテーマパーク運営を結びつけたシナジーにより、HTBはV字回復を果たしました。
ハウステンボスの子会社化の事例は、破綻企業の再建モデルとしてM&A活用の成功例といえます。
ホテル業M&Aにおすすめの仲介会社・サービス
ホテル業界でM&Aを検討する際は、業界知識に長けた仲介会社や支援サービスの選定が重要です。
売却か買収かによっても最適な支援先は異なり、慎重な見極めが求められます。スムーズかつ有利な条件でM&Aを進めるには、信頼できる専門家の存在が欠かせません。
以下では、ホテル業に特化したM&A仲介会社やサービスを紹介します。
どこに相談すべきか迷っている場合は、複数の専門家の提案を一括で受けられる「M&A比較ナビ」の活用もおすすめです。
Tabiji Partners
会社情報 | 詳細 |
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サポート内容 | ・売却・買収相談(無料) ・簡易価格算定 ・M&A方針策定 ・マッチング(案件提案/バイヤー紹介) ・交渉・デューデリジェンス支援 ・PMI支援(統合後支援) |
サポート体制 | ・専任コンサルタントが案件ごとに一貫フォロー ・M&A後の運営・集客支援までPMIチームが対応 ・Airbnb運営ノウハウ共有 |
料金体系 | 相談無料 |
特徴 | ・宿泊運営経験を持つ創業メンバーによる業界深耕型アドバイス ・独自コミュニティを活用し2~4ヶ月での成約実績 ・PMIまで一貫支援 ・完全成果報酬型でリスク低減 |
運営会社 | 株式会社Tabiji Partners |
URL | https://tabipa-ma.com/ |
Tabiji Partnersは、民泊・ホテル・旅館に特化したM&A仲介サービスです。
創業者自身が宿泊施設の運営経験を持ち、現場目線に根ざした提案が強みです。独自の業界ネットワークを活かし、成約まで平均2~4ヶ月というスピード感を実現しています。
着手金・中間金なしの完全成果報酬型で、PMI(統合後支援)まで一貫対応しています。さらに、Airbnb公式パートナーとして、M&A後の稼働改善にも強みを持っている点も特徴です。
民泊・旅館など宿泊事業の売却・承継を検討している方は、一度無料相談を受けてみましょう。
M&A総合研究所
会社情報 | 詳細 |
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サポート内容 | ・売り手/買い手双方への初期相談(無料) ・企業価値算定(無料) ・買手候補のAIマッチングによる探索 ・M&Aスキーム策定支援 ・交渉・デューデリジェンスサポート ・基本合意締結〜クロージングまでの交渉支援 ・PMI(統合後フォロー)支援 |
サポート体制 | ・専任M&Aアドバイザーが案件ごとにフルサポート(伴走型) ・AI×ビッグデータ活用によるマッチングチームと人による個別交渉チームの連携体制 ・PMI専門チームによる統合後の集客・運営改善支援 ・24時間365日対応のオンライン相談窓口 |
料金体系 | 相談無料 |
特徴 | ・AIマッチングシステム:PKSHA Technology提携の高度レコメンド(売り手要望×買手適合性を自動抽出) ・スピード成約:最短49日でクロージング実績 ・完全成功報酬:売り手リスクゼロで依頼可能 ・譲渡価格ベース:負債を含めず手数料が抑制可能 |
運営会社 | 株式会社M&A総合研究所 |
URL | https://masouken.com/ |
M&A総合研究所は、ホテル・旅館業界のM&Aに実績を持つ独立系の仲介会社です。譲渡企業向けに完全成功報酬制を採用しており、着手金や月額費用は一切発生しません。
独自のAIマッチングを活用し、最短49日でのスピード成約を実現します。許認可の引継ぎや資産価値評価、人材承継など、ホテル業界特有の要素にも精通した専門アドバイザーが、相談からクロージングまで一貫して対応します。
これまでに40件以上のホテルM&Aを支援しており、地方旅館からリゾートホテル、民泊まで幅広く対応しています。
実績と信頼を重視する方には、無料相談の利用がおすすめです。
M&A総合研究所の詳しい情報は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
クロスワンコンサルティング(Xone)
会社情報 | 詳細 |
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サポート内容 | ・事業再生支援 ・事業承継 ・M&Aアドバイザリー ・ターンアラウンドマネージャー(プロ経営者)派遣 人材紹介・人材派遣 運営受託・リース契約 |
サポート体制 | ・M&A専任アドバイザーがヒアリングからクロージングまで伴走 ・ホスピタリティ業界特化のネットワークで外部スポンサー・ファンド選定を支援 ・ターンアラウンドマネージャー常駐派遣で抜本的な経営立て直しを実行 ・運営受託・リース契約でオーナー家を残した再建も実現 |
料金体系 | 相談無料 |
特徴 | ・ホスピタリティ企業に特化し、120社以上の支援実績を保有 ・クライアントの「自律的」再生を最終目標とする伴走型支援 ・M&Aのみならず、ターンアラウンドマネージャー派遣や運営受託までワンストップで提供 ・外部スポンサーや金融機関との緊密なネットワークを活用 |
運営会社 | クロスワンコンサルティング株式会社 |
URL | https://www.xone-consulting.co.jp/ |
クロスワンコンサルティングは、ホスピタリティ業界に特化した事業再生・M&Aアドバイザリー会社です。約120件のホテル・旅館支援実績をもとに、後継者不在対策や資本再構築、運営改善までをワンストップで支援します。
M&Aでは、株式譲渡や事業譲渡など複数手法を柔軟に設計し、プロ経営者(ターンアラウンドマネージャー)の派遣による経営立て直しも可能です。人材派遣や運営受託も組み合わせ、成約後の安定稼働まで支援を継続します。
地方旅館からリゾートホテル、民泊やグランピング施設まで幅広く対応しており、業界特有の課題にも精通しています。
ホテル業界でのM&Aや再生を検討する際は、クロスワンコンサルティングの無料相談を活用することで、実情に即した最適なスキームを検討できます。
>>クロスワンコンサルティング(Xone)の公式サイトを見てみる
ホテルM&Aの動向
観光需要の回復を背景に、ホテル業界ではM&Aが加速しています。2024年度の国内ホテル・旅館市場は約5.5兆円に達し、インバウンドや円安の影響で宿泊単価と稼働率が上昇しています。
M&Aの主な目的は、後継者不足への対応、地域戦略としての買収、DX・省人化への対応、サステナブル施設への投資です。大手ホテルチェーンに加え、外資ファンドやREIT、旅行代理店など異業種からの参入も進んでいいるのが現状です。
都市部ではホテルの再編や複合開発、地方では老舗旅館の承継が活発化しています。また、高級旅館では、海外富裕層を視野に入れた買収が増えています。
今後は、インバウンド拡大やESG対応を背景に、再編の動きが一層広がる見通しです。ホテルM&Aは、拡大・効率化・持続可能性を軸に多様化が進んでいます。
ホテルM&Aのスキーム
ホテル業界におけるM&Aでは、事業の特性や資産の種類、許認可の扱いなどに応じて、さまざまなスキームが採用されます。
最適な手法を選ぶことで、取引のリスクを抑えながらスムーズな事業承継や再編が可能です。
ホテルM&Aの主な形態とスキームは、以下のとおりです。
以下では、ホテルM&Aで用いられる代表的なスキームと、それぞれの特徴について解説します。
株式譲渡
株式譲渡は、売り手企業の発行済株式を買い手に売却し、経営権をまとめて移す方法です。
会社が持つ資産や負債(帳簿に記載のないものも含む)をすべて引き継ぐため、買い手はリスクについて確認しましょう。ただし、手続きは株主間の契約と名簿の書き換えだけで完了するため、比較的シンプルです。
売り手側には、譲渡益に対して約20.315%の税率で株主所得課税がかかりますが、報酬が譲渡額に連動する成功報酬型の仕組みを選べば、手元に残る金額を最大化しやすい点もメリットです。
事業譲渡
事業譲渡は、会社の一部の事業や資産を切り出して、第三者に譲り渡す方法です。譲渡する資産や負債を自由に選べるため、不要な債務を引き継がずに済むというメリットがあります。
一方で、契約や取引先との関係を個別に引き継ぐ必要があるため、関係各所の同意取得や手続きに手間がかかります。また、譲渡には取締役会と株主総会の決議が必要です。
さらに、譲渡益には法人税や消費税が課税される点にも注意が必要です。
合併(吸収・新設)
合併は、複数の会社を統合して1つにする方法です。
吸収合併では、譲渡側の会社が消滅し、買い手側の会社にすべての権利や義務が引き継がれます。子会社の統合やグループ内再編に適した手法です。
一方、新設合併では、関係する会社がすべて消滅し、新たに設立した会社へ統合されます。どちらの方式も法人格の消滅や新設に伴って設立手続きや費用が発生しますが、グループ再編を目的とする場合には有効な選択肢です。
株式交換・株式移転
株式交換は、買い手企業が売り手企業の株式を取得し、対価として自社の株式などを交付して、売り手企業を完全子会社化する方法です。現金を使わずに支配権を得られる点が利点ですが、交付する株式の流動性に注意しましょう。
株式移転は、新たに持株会社を設立し、既存の企業をその子会社として統合する手法です。グループ経営の体制づくりやホールディングス化を目的とする際に適しています。
会社分割(吸収・新設分割)
会社分割は、既存企業の一部事業を他社または新たに設立する会社に移す手法です。
吸収分割では、既存の他社が対象事業をそのまま引き継ぐため、契約の再締結が不要で手続きが比較的スムーズです。
一方、新設分割では、承継する事業を新たな会社に移すことで、分社化や持株会社化を実現できます。どちらの場合も、株主総会での決議や分割計画の策定など、一定の手続きが必要です。
マネジメントコントラクト(MC方式)
マネジメントコントラクト方式は、ホテルの所有者が運営を専門会社に委託し、経営ノウハウや人材の提供を受ける契約形態です。
オーナーは施設の所有権を維持したまま、運営面はプロに任せることで収益の向上を図れます。
一方で、利益分配の条件や運営責任の線引きによって、所有者と運営会社の間で利害が対立する可能性もあるため、契約内容の明確化が重要です。
フランチャイズ(FC方式)
フランチャイズ方式は、ホテルの運営者がブランドオーナー(フランチャイザー)から商標や運営ノウハウの使用許可を受け、自社でホテルを直営する仕組みです。
オーナーはロイヤルティを支払う代わりに、知名度の高いブランドの集客力を活用できるため、業界未経験者でも参入しやすい点が特徴です。
ただし、売上に応じたロイヤルティの支払いが継続的に発生するため、収益構造への影響には注意が必要です。
リース方式
リース方式は、運営会社がホテルの不動産を所有者から借り受け、自己資金を抑えて運営を行う方法です。
ファイナンスリースが主流で、初期投資を抑えながら、賃料を固定費として計画的に運営できる点がメリットです。
一方で、長期的に見ると購入より総支払額が高くなる可能性があり、物件の所有権を持てない点はデメリットとなります。契約内容や期間によっては、柔軟性に制限が生じる場合もあります。
ホテルM&Aを活用するメリット
ホテル業界におけるM&Aは、単なる事業の売買にとどまらず、経営課題の解決や成長戦略の実現に直結する手段として注目されています。
市場環境や経営資源に応じて最適な形で活用することで、売り手・買い手双方に多くの利点がもたらされます。
以下では、ホテルM&Aを活用することで得られる主なメリットについて、譲渡側と譲受側に分けて詳しく見ていきます。
譲渡側のメリット
ホテルや旅館をM&Aで売却する最大のメリットは、後継者不在という経営課題を解決できる点です。親族や社内に適任者がいない場合でも、第三者に事業を引き継いでもらうことで、長年築いてきたブランドや従業員の雇用を守りつつ、事業の継続が可能になります。
また、大手チェーンや資本力のある企業に譲渡すれば、スケールメリットを活かした待遇改善や販路拡大が期待でき、従業員や地域社会への好影響にもつながります。
さらに、株式譲渡などの手法を用いれば、創業者利益(キャピタルゲイン)を得ることができ、次の事業投資やセミリタイアの資金として活用できます。事業価値をしっかりと評価してもらいながら、スムーズな経営引退を実現できる点も大きな魅力です。
譲受側のメリット
ホテル事業を買収することで、買い手は新規参入やエリア拡大をスピーディーに実現できます。ゼロから施設を立ち上げる場合と比べて、既存の建物や設備、営業許可をそのまま引き継げるため、初期投資を抑えつつ、許認可取得にかかる時間や手間を大幅に削減できます。
また、既存の顧客基盤や従業員、運営ノウハウを活用できるため、サービス水準を保ったまま収益化までの期間を短縮できる点も大きな利点です。さらに、買収後に物流や仕入れ、プロモーション活動を統合すれば、コスト削減と売上拡大の両立が可能となり、いわゆる「シナジー効果」も期待できます。
とくに、デジタル化やESG対応を強化したい企業にとっては、既存ホテルを基盤に新たな戦略を素早く展開できる点も大きな魅力です。
ホテル業界でM&Aを実施するポイント・注意点
ホテル業界でM&Aを実施する際は、一般的なM&A手法だけでなく、業界特有の制度や運営上の要素を十分に踏まえる必要があります。営業許可の引き継ぎや従業員体制、施設の状態など、事前に確認すべき項目が多岐にわたるため、慎重な対応が求められます。
以下では、ホテルM&Aを進めるうえで押さえておきたいポイントや注意点について解説します。
譲渡側の注意点
ホテルや旅館を売却する際は、財務状況、稼働実績、顧客情報、修繕履歴、許認可の内容を整理し、正確に開示できる状態を整えることが重要です。不備があると、後からリスクが発覚し、価格交渉や成約に悪影響を及ぼす可能性があります。
営業許可や建築・消防関連の適合状況についても、買い手側の再申請の有無を確認し、手続き負担を軽減できるスキームを検討しておく必要があります。
また、キーパーソンの離職を防ぐために、雇用条件や組織文化の共有を早期に進め、基本合意の段階で明確化しておくことが望ましいです。
交渉期間が長引くこともあるため、最低価格の設定や資金繰りの見通しを立てておくことも不可欠です。目的を明確にし、専門家と連携しながら進めることで、希望条件での成約につながりやすくなります。
譲受側の注意点
ホテルや旅館を買収する際は、財務・法務だけでなく、不動産の老朽化や地盤リスク、退職給付引当金の有無、旅館業の許認可が承継可能かどうかなど、多面的なデューデリジェンスが必要です。とくに中小施設では、帳簿外の負債が見落とされやすいため、契約前にリスクを精査し、取得価格に反映させておくことが重要です。
許認可や契約関係を切らさず引き継ぐには、株式譲渡や吸収合併といった手法の検討も有効です。また、買収後の統合(PMI)を円滑に進めるために、IT・予約システムや人事制度の移行計画を事前に整えておく必要があります。
さらに、共同仕入れや人材交流によるシナジー効果を定量的に試算し、投資回収期間や収益見込みを明確にすることで、M&Aの成功率が高まります。加えて、譲渡手法によって課税内容が異なるため、資金調達や税務の設計についても専門家と十分に協議することが欠かせません。
ホテルM&Aを実施する手順
ホテルM&Aを実施する手順は、以下の通りです。
まずは「後継者不在の解消」「地域展開」などM&Aの目的を明確にし、KPIやスケジュールを設定します。
市場調査や企業価値の仮算定を行い、資金計画や体制、アドバイザー選定を含めた戦略を整理したうえで、NDAを締結します。
自社戦略に合う買い手を絞り込み、ノンネームシートで概要や条件を提示します。関心を示した候補とはNDAを交わし、面談や意向表明(EOI)を経て比較検討を行い、最適な相手を選定します。
複数の候補を効率よく探すには、「M&A比較ナビ」の活用が有効です。
買い手と取引価格やスキーム、独占交渉期間などの主要条件を仮決定し、LOIやMOUを交わして交渉の枠組みを固めます。
秘密保持や違約金も明記し、調査協力の体制を整えたうえで、次のデューデリジェンスへ進みます。
基本合意後、買い手は財務・法務・税務・許認可・不動産などの調査を専門家とともに実施しましょう。売り手は資料提出やQ&Aに正確・迅速に対応し、現地確認や面談を通じて運営実態を開示します。
調査結果は最終条件や契約条項の調整に活用されます。
最終契約に署名・押印し、登記や許認可の変更など必要な手続きを完了させます。
対価の支払いと資産の引渡しが行われた後は、システムや人事制度、ブランドの統合(PMI)を進め、アーンアウトやエスクロー条件に対応しながら統合効果を確認します。これにより、新体制での安定運営が始まります。
ホテル業界のM&Aに関するよくある質問
以下では、ホテル業界のM&Aを進めるうえで寄せられることの多い質問とポイントを整理しています。
- 地方の中小規模ホテルでもM&Aは可能ですか?
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地方の中小規模ホテルでもM&Aは実現可能です。
事業譲渡や株式譲渡、リース方式などのスキームを活用すれば、譲渡対象や負債の範囲を柔軟に調整でき、小規模なホテルでも実情に合ったM&Aが進めやすくなります。
- 買い手はホテルM&Aで何を重視しますか?
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ホテルM&Aにおいて買い手が重視するのは、立地、稼働状況、収益性の3点です。
観光需要の高いエリアかどうか、過去の稼働率やADR・RevPARといった指標の安定性を確認し、将来的な成長や資産価値の向上も含めて総合的に判断されます。
専門家からアドバイスを受けたい場合は「M&A比較ナビ」に相談しましょう。
M&A比較ナビは複数の専門業者から最適な支援先を比較・検討できるため、より良い条件でM&Aを進めたい経営者におすすめです。
まだM&Aすると決めていない場合でも、運営するホテルの強み・弱みを把握するために、まずは問い合わせをしてみてください。