会社売却を検討する際「自分の会社はいくらで売れるのか」が最初に気になるでしょう。
会社には不動産のような一律の定価がなく、純資産や将来性、顧客基盤などをもとに企業価値を評価するのが一般的です。
さらに、買い手が期待するシナジーや交渉条件によっても価格は変わります。
本記事では、会社売却の相場の考え方や主な算定方法、価格を左右する要素、高く売るための準備、売却の流れまで解説します。
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会社はいくらで売れる?売却価格に決まった相場はない
会社がいくらで売れるかは、売上高だけでは判断できません。
売却価格の土台になるのは、保有する資産や負債、継続的に生み出している利益、今後の成長性などです。
中小企業のM&Aでは、時価純資産に数年分の利益を加えて目安を出す方法も使われます。
ただし、算定した金額がそのまま売却価格になるわけではない点に注意が必要です。
最終的な価格は、企業価値の評価結果を踏まえ、売り手と買い手の交渉によって決まります。
なお「企業価値」と株主が受け取る「株式価値」は厳密には異なり、評価方法によっては事業価値などから有利子負債等を調整して株式価値を算出します。
中小企業では「時価純資産+数年分の利益」が一つの目安になる
中小企業の売却価格を簡易的に把握したい場合は、時価純資産に数年分の利益を加える「年買法」が一つの目安です。
たとえば、時価純資産が3,000万円、年間利益が1,000万円で、利益3年分を上乗せすると、6,000万円が概算額です。
ただし、何年分の利益を加えるかに統一された基準は定められていません。
業種の成長性、利益の安定性、顧客構成、経営者への依存度などによって評価は変わります。
年買法は正式な売却価格を確定する計算式ではなく、自社の価格帯を大まかにつかむための方法として捉えるとよいでしょう。
売上高だけでは会社の売却価格を判断できない
「年商1億円ならいくらで売れる」といった形で、売上高だけから売却価格を出すのは困難です。
同じ年商でも、営業利益が2,000万円の会社と赤字の会社では収益力が異なります。
借入金の額や保有資産の内容によっても、株式価値には差が出るでしょう。
また、継続取引の多い会社や独自技術を持つ会社は、財務数値だけでは捉えにくい価値が評価される場合も見られます。
売上高は会社の規模を知る指標の一つですが、価格を直接決める数値ではない点に注意が必要です。
純資産や利益、キャッシュフロー、事業の強みを含めた評価が必要です。
直近1年だけでなく、複数年の推移を見る視点も欠かせません。
会社の売却価格を算定する3つの方法
中小企業のM&Aでは、純資産を基準にする方法、将来の収益力から算出する方法、類似会社の市場評価を参考にする方法などが使われます。
実務では、会社の規模や業種、成長段階に応じて適した手法を選び、複数の結果を比較するのが一般的です。
ここでは、会社がいくらで売れるかを考える際に知っておきたい3つの方法を紹介します。
コストアプローチ(時価純資産法・年買法など)
コストアプローチは、会社が保有する資産と負債に注目して企業価値を算定する考え方です。
代表的な時価純資産法では、貸借対照表に記載された資産や負債を時価に修正し、その差額から株式価値を求めます。
土地や有価証券など、簿価と現在価値が離れている資産を多く持つ会社では、実態を反映しやすい点が特徴です。
また、中小企業のM&Aでは、時価純資産に数年分の利益を加えて会社の価値を試算する「年買法」が用いられる場合もあります。
たとえば、時価純資産5,000万円に年間利益2,000万円の3年分を加える場合、目安は1億1,000万円です。
ただし、加算する利益の種類や年数に統一された基準はなく、案件ごとに異なります。
一方、将来の成長性やブランド、顧客基盤などの無形価値は反映しにくい側面も持ちます。
必要に応じてインカムアプローチやマーケットアプローチなど、ほかの評価手法も踏まえて検討することが大切です。
インカムアプローチ(DCF法など)
インカムアプローチは、会社が将来生み出す利益やキャッシュフローに注目して企業価値を算定する方法です。
代表的なDCF法では、将来のフリーキャッシュフローを予測し、一定の割引率を用いて現在価値に換算します。
今後の成長が見込まれる会社や、無形資産が収益に大きく影響する会社を評価しやすい点が特徴です。
ただし、事業計画や成長率、割引率などの前提によって結果が大きく変わります。
将来予測の妥当性を確認する必要があるため、単純な計算だけで結論を出す方法とは異なります。
客観性の高い事業計画とあわせて評価することが重要です。
マーケットアプローチ(類似会社比較法など)
マーケットアプローチは、上場している類似企業や実際のM&A事例を基準に、自社の企業価値を算定する考え方です。
類似会社比較法では、売上高や営業利益、EBITDAなどに対する市場の評価倍率を参考にします。
市場で成立している評価を反映しやすいため、同業種で比較対象となる企業が多い場合に使いやすい方法です。
ただし、規模や収益構造、成長率が近い会社を見つけられないケースも見られます。
比較できる類似企業やM&A事例が少ない場合は、適切な評価倍率を設定しにくい点に注意が必要です。
比較対象の選び方によって評価が変わるため、自社と類似企業の違いを確認しながら使います。
会社の売却価格を左右する主な要素
同じ売上規模の会社でも、売却価格が同じになるとは限りません。
買い手は、現在の財務状況だけでなく、買収後も安定して利益を得られるか、事業を伸ばせるかといった点まで確認します。
売却価格に影響する代表的な要素を把握しておきましょう。
利益の水準と安定性
会社の売却価格では、現在どれだけ利益を出しているかに加え、その利益が今後も続くかが重視されます。
一時的な特需で利益が増えている会社より、複数年にわたって安定した利益を確保している会社のほうが、買い手は将来の収益を予測しやすくなります。
また、売上が増えていても、粗利率や営業利益率が下がっている場合は注意が必要です。
買い手は決算書だけでなく、月次推移や取引構成まで確認します。
不要な費用やオーナー個人に関係する支出が含まれる場合は、実態に近い収益力へ調整して説明できるようにしておくと、評価の根拠を示しやすいでしょう。
顧客基盤・技術・人材などの無形資産
財務諸表に直接表れにくい強みも、会社の売却価格を左右します。
長年取引している顧客基盤、独自技術、ブランド、特許、許認可、専門性の高い人材などは、買い手にとって事業を引き継ぐ価値につながる要素です。
特に、新規参入に時間がかかる業界や、人材採用が難しい業界では、既存の組織や取引関係そのものが評価される場合も想定されます。
ただし、強みを経営者の感覚だけで説明しても伝わりにくいため、契約継続率や顧客数、保有資格、技術実績など、確認できる情報に整理しておくことが重要です。
買い手が再現しにくい強みほど、高い評価につながりやすいでしょう。
経営者への依存度
経営者が営業、採用、技術判断、顧客対応のほとんどを担っている会社は、売却後に業績が落ちるリスクを買い手が意識します。
社長が抜けても事業を継続できる体制が整っていれば、引き継ぎ後の不確実性を抑えやすくなります。
具体的には、管理職への権限移譲、業務マニュアルの整備、顧客情報の共有、複数担当制への移行などが有効です。
会社の強みが経営者個人に集中している場合は、売却直前に解消するのが難しいケースも見られます。
M&Aを検討し始めた段階から、組織で事業を回せる状態へ近づけておくのが重要です。
引き継ぎに必要な期間も短くなれば、買い手側の負担軽減にもつながります。
買い手とのシナジーや業界の需要
売却価格は、売り手企業単独の価値だけで決まるわけではない点にも注意が必要です。
買い手が自社との組み合わせによって売上拡大やコスト削減を期待できる場合は、企業価値を高く評価する可能性が生じます。
たとえば、販売網を持つ会社が独自製品を持つ会社を買収するケースや、人材不足の会社が専門人材を抱える会社を取得するケースです。
また、業界再編が進んでいる時期や、買収ニーズが強い業種では複数の候補が集まりやすくなります。
自社の価値を高めるには、どの買い手にどの強みが響くのかを整理し、相性のよい候補へ情報を届ける視点も欠かせません。
会社を高く売るために売却前からできること
会社を高く売りたい場合、交渉段階だけで価格を引き上げようとしても限界が伴います。
売却を決めてから慌てて整えるより、早い段階で課題を洗い出し、改善できる項目から手を付けたほうが交渉しやすくなります。
財務情報を整理して実態を説明できる状態にする
買い手は、決算書や試算表を通じて会社の収益力とリスクを確認します。
帳簿と実態が一致していない項目や、回収見込みの低い売掛金、長期間動いていない在庫などが残っていると、評価額の引き下げにつながる場合も想定されます。
未払い残業代や簿外債務なども、デューデリジェンスで確認される重要な項目です。
売却を検討したら、過去数年分の決算資料や契約書、借入状況を整理し、必要に応じて会計処理を見直しましょう。
数字の背景を説明できる状態にしておくと、買い手との認識差を減らし、価格交渉も進めやすくなります。
問題点を隠すのではなく、事前に把握して対応方針まで示す姿勢も大切です。
継続的に利益を生み出せる仕組みを整える
高く評価されやすい会社には、売却後も利益が続く根拠が求められます。
特定の取引先への依存度が高い場合は顧客を分散し、単発案件が中心なら継続契約を増やすなど、収益の安定性を高める取り組みが有効です。
また、営業方法や製造工程、顧客対応を仕組み化すると、経営者が交代しても事業を維持しやすくなります。
売却直前に一時的な利益を増やすより、数年単位で安定した収益実績を積み上げたほうが、買い手は将来の業績を判断しやすくなります。
M&Aを選択肢に入れた時点から、利益の再現性を意識して経営を整えるのが大切です。
再現性の高い収益構造は、価格だけでなく買い手の安心感にもつながります。
複数の買い手候補を比較する
会社の価値は買い手によって異なるため、1社だけとの交渉では、自社の適正な評価を判断しにくい点に注意が必要です。
同じ会社でも、買収目的や期待するシナジーによって提示価格が変わる可能性が生じます。
複数の買い手候補と交渉できれば、価格だけでなく、従業員の雇用や経営者の処遇、社名の継続なども比較しやすくなるでしょう。
ただし、候補先を広げるほどよいわけではなく、情報管理には注意が必要です。
M&A仲介会社やFAなどの専門家と相談しながら、自社と相性のよい候補を選び、同じ条件で比較できる状態を整えるのが重要です。
売却条件を一覧化しておくと、金額以外の違いも判断しやすくなります。
会社売却の流れ
会社売却は、価格を算定して買い手を見つければ終わりではありません。
案件によって順序や期間は変わりますが、全体像を理解しておくと、各段階で必要な準備を進めやすくなります。
相談・企業価値算定・売却準備
最初に、会社を売る目的と希望条件を整理します。
価格だけでなく、従業員の雇用を守りたい、経営から完全に退きたいなど、優先順位を決めておけば交渉の軸がぶれにくいでしょう。
その後、M&A仲介会社やFAなどへ相談し、企業価値の概算を確認します。
売却方針が決まったら、決算情報や事業内容、組織体制などを整理し、買い手候補への打診に必要な資料を準備する流れが一般的です。
情報に誤りや不足があると後の交渉に影響するため、会社の実態が伝わる内容に整えておきましょう。
この段階で想定スケジュールも確認しておくと、その後の対応がスムーズです。
買い手候補の選定・トップ面談・基本合意
売却準備が整ったら、買い手候補を選びます。
初期段階では会社名を伏せた資料で打診し、関心を示した候補と秘密保持契約を結んだうえで詳細情報を開示する方法が一般的です。
候補が絞られた後は、経営者同士のトップ面談を行い、事業方針や売却後の体制を確認します。
価格だけでなく、従業員の処遇や取引先との関係、経営者の引き継ぎ期間なども重要な論点です。
双方が大枠の条件に合意すると、意向表明書の提出や基本合意契約の締結へ進みます。
ここで条件を整理しておくと、その後の詳細交渉も進めやすいでしょう。
基本合意には独占交渉権などが含まれる場合もあるため、内容を十分に確認します。
デューデリジェンス・最終契約・クロージング
基本合意後は、買い手が財務や法務、労務などを詳しく調べるデューデリジェンスを実施します。
調査で簿外債務や契約上の問題が見つかれば、売却価格や契約条件が見直される場合もあるため、売り手は資料を正確に開示し、質問に回答できる体制を整えておくのが重要です。
調査結果を踏まえて条件が確定したら、最終契約を締結します。
最後に、株式や事業資産の移転、代金の支払いなどを行うクロージングを迎え、取引は完了です。
売却後に引き継ぎ期間を設ける場合は、契約内容に沿って業務移行を進めます。
最終契約では、譲渡価格だけでなく表明保証や補償条件も確認しておきましょう。
会社の売却価格と経営者の手取り額は同じではない
会社が1億円で売れたとしても、その全額が経営者の手元に残るわけではない点にも注意が必要です。
M&A仲介会社やFAへ支払う報酬、弁護士や税理士など専門家への費用、売却に伴う税金などが差し引かれるためです。
また、株式譲渡と事業譲渡では、課税される主体や税金の考え方が異なります。
会社がいくらで売れるかを確認するときは、売却価格だけでなく、最終的な手取り額まで試算しておくのが重要です。
契約する支援会社によって手数料体系も異なるため、着手金や中間金、成功報酬の計算方法を事前に確認しましょう。
まとめ|会社がいくらで売れるかは複数の要素から判断する
会社がいくらで売れるかは、売上高だけでは決まりません。
時価純資産や将来性などを総合的に評価し、最終的な価格は交渉で決まります。
まずは年買法などで概算を確認し、必要に応じて専門家の企業価値算定を受けると、自社の価格帯を把握しやすくなります。
売却を急ぐ前に財務や業務体制を整え、複数の買い手候補を比較できる状態をつくるのも重要です。
どの専門家やM&A仲介会社に相談すればよいか迷う場合は「M&A比較ナビ」を活用し、自社の業種や規模に合った支援実績を持つパートナーを比較してみましょう。
M&A仲介会社によっては、初期相談や簡易的な企業価値算定を無料で受け付けているため、まずは自社の価値を把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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会社がいくらで売れるかに関するよくある質問
売却を検討する段階では、価格だけでなく、買い手がどこに価値を感じるかを理解しておくのが大切です。
ここでは、会社がいくらで売れるかを調べる際によく出る疑問を取り上げます。
- 赤字の会社でも売れますか?
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赤字だからといって、必ず売却できないわけではありません。
買い手が評価するのは、以下も含めた事業全体です。
- 現在の利益
- 顧客基盤
- 許認可
- 技術
- 人材
- 立地
- 設備など
たとえば、一時的な投資によって赤字になっている会社や、買い手の販路を活用すれば収益改善が見込める会社は、M&Aの対象になる場合も想定されます。
一方、赤字が長期間続き、改善策も見えない場合は、評価が下がりやすくなります。
赤字の原因を整理し、買い手が引き継ぐメリットを具体的に説明できるかが重要です。
まずは、財務状況と事業上の強みを分けて整理しましょう。
- 小さな会社でも売却できますか?
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年商や従業員数が小さい会社でも、買い手が価値を感じれば売却の可能性が生じます。
中小企業のM&Aでは、売上規模の他に下記も評価の対象です。
- 安定した利益
- 特定地域での顧客基盤
- 専門人材
- 許認可など
ただし、売却価格が小さい案件では、仲介会社の最低成功報酬が負担になる場合も想定されます。
そのため、会社規模に合った支援会社やM&Aプラットフォームを選ぶ視点も重要です。
会社の規模の小ささだけを理由に、売却を諦める必要はありません。
まずは簡易的な企業価値算定を行い、買い手から見た強みと課題を確認するとよいでしょう。
- 会社売却にはどのくらいの期間がかかりますか?
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会社売却にかかる期間は、案件の規模や買い手候補の数、デューデリジェンスの内容などによってさまざまです。
検討開始から成約まで、半年〜1年程度を要するケースもあるとされています。
買い手が早く見つかっても、条件交渉や資料確認に時間がかかれば成約時期は延びます。
特に、契約書や労務関係の資料が整理されていない場合は、確認作業が増えやすくなるでしょう。
売却希望時期が決まっているなら、直前ではなく余裕を持って準備を始めるのが重要です。
早めに企業価値を把握し、課題を整えておくと、交渉も進めやすくなります。