EBITDA倍率は、M&Aや企業価値評価において広く活用される指標です。
EBITDA倍率は減価償却費などの非現金支出の影響を受けないため、企業の営業キャッシュフローに近い収益力を把握する指標として用いられます。
今回は、EBITDA倍率の計算方法から業界別の目安まで詳しく解説します。
EBITDA倍率を改善する具体的な方法やM&Aにおける活用のポイントも紹介するので、企業価値向上を目指す経営者の方はぜひ参考にしてください。
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EBITDA倍率は業種や会社規模によって異なるため、客観的な比較が大切です。
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EBITDA倍率とは企業価値がEBITDAの何倍に相当するかを示す指標
EBITDA倍率とは、企業価値がEBITDAの何倍に相当するかを示す指標です。
正式にはEV/EBITDA倍率と呼ばれ、買収資金を回収するまでのおおよその年数の目安として使われます。
たとえば、倍率が5倍なら、理論上5年で買収コストを回収できる計算です。
一般的には倍率が低いほど割安と判断される傾向がありますが、業界や成長性によって適正水準は異なります。
M&Aや企業価値評価で広く活用され、国際比較や上場・非上場企業を問わず使われます。
営業利益や純利益と異なり、金利・税金・減価償却費の影響を除いているため、本業のキャッシュ創出力に近い実態を捉えやすい点が特徴です。
EBITDA倍率の計算方法
EBITDA倍率の計算は2ステップで行います。
まずEBITDAを求め、次に企業価値で割ります。
EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えて算出するのが一般的です。
EBITDA=営業利益+減価償却費
たとえば、営業利益5,000万円で減価償却費2,000万円なら、EBITDAは7,000万円です。
企業価値(EV)は、株式価値に有利子負債を加え、現預金を差し引いた金額として算出されます。
EV=株式価値+純有利子負債+少数株主持分
企業価値が4億9,000万円でEBITDAが7,000万円なら、倍率は7倍です。
倍率が7倍であれば、理論上は約7年分のEBITDAに相当する価格で買収していることを意味します。
M&Aでは類似上場企業の平均倍率を対象企業のEBITDAに乗じて、企業価値を逆算する方法もよく使われます。
EBITDA倍率の一般的な目安と業種別の水準
EBITDA倍率の目安は業種・企業規模・成長性によって異なり、絶対的な基準はありません。
同業他社や市場平均と比較して判断します。
上場企業では一般的に8〜12倍が平均水準で、8倍以下なら割安、8倍超なら割高とされるケースが多くなります。
中小企業のM&A実務では、一般的に3〜5倍程度が目安です。
業種別では、以下のように差があります。
| 業種 | EBITDA倍率の目安 |
|---|---|
| 医療・ヘルスケア | 10~16倍 |
| IT・インターネット | 8〜15倍 |
| 製造業・成熟産業 | 4~7倍 |
| 建設業 | 3~5倍 |
| 飲食業 | 2~5倍程度 |
全業界平均は約5倍程度で、3倍未満は比較的割安、5倍超は割高と判断されます。
EBITDA倍率を活用するメリット
EBITDA倍率は、M&Aや企業価値評価において広く活用される指標です。
具体的に以下のようなメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
他の企業と比較しやすい
EBITDA倍率は利息・税金・減価償却費の影響を除いた収益力を基準にするため、資本構成や税制の違いによる影響を受けにくく、企業同士の比較がしやすい指標です。
日本企業と海外企業では税率や金利水準が異なりますが、EBITDA倍率なら公平に評価できます。
また製造業のように設備投資が大きく減価償却費が多い企業と、サービス業のような軽資産企業も同じ基準で比較可能です。
制度間のノイズを取り除けるため、グローバルM&Aや同業他社分析で特に重宝されます。
算出しやすい
EBITDA倍率は、計算に必要なデータがすべて決算書から簡単に取得できるため、専門ツールがなくても短時間で算出可能です。
企業価値は株式価値と純有利子負債から算出でき、EBITDAも営業利益と減価償却費から求められるため、決算書があれば比較的簡単に計算できます。
シンプルな式で済むため、M&Aの初期段階で多数の候補企業を素早く絞り込む際に便利です。
複雑なDCF法のように将来キャッシュフローを予測する必要がなく、誰でも扱いやすい点が実務的なメリットになります。
決算書さえあれば即座に計算できるため、迅速な意思決定を支援します。
EBITDA倍率のデメリット
EBITDA倍率は企業価値評価において便利な指標ですが、いくつかの注意点も存在します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業界によっては類似企業が見つからない場合がある
EBITDA倍率の計算では類似企業比較法が基本ですが、企業数の少ないニッチ業界では適切な比較対象が見つからないことも少なくありません。
特殊部品製造や特定の地域密着サービスなど、上場企業が少ない業界では同業他社のデータが不足します。
その結果、自社の倍率が業界平均より高いか低いかという相対評価ができず、割安・割高の判断が難しくなります。
上場企業が多いメジャー業界では問題ありませんが、中小企業や特殊業界ではこのデメリットが顕著です。
代替策として営業利益倍率や売上高倍率、個別事情を加味した独自分析を併用する必要があります。
将来性は慎重な判断が必要になる
EBITDA倍率は過去実績の利益を基に算出するケースが多く、将来の成長性・リスクを十分に反映していません。
急成長が見込まれるIT・バイオ企業では、現在の低倍率でも将来性プレミアムが加わる可能性があります。
逆に設備投資が継続的に必要な製造・建設業界では、過剰投資のリスクがEBITDAでは見抜けず、実際のキャッシュフローが悪化する恐れがあります。
判断に主観が入りやすいため、過去実績・業界トレンド・個別事業計画を組み合わせた予測が必要です。
定期的な設備投資負担を考慮したい場合は、営業利益やフリーキャッシュフローも合わせて分析しましょう。
EBITDA倍率が高い企業の特徴
EBITDA倍率が高い企業は市場から将来性や競争優位性を高く評価されています。
具体的な特徴は、以下の3点です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
売上が増えている
過去3〜5年間の売上・EBITDAが右肩上がりで推移する企業は、買い手の将来期待値が高まり、業界平均より高い倍率で評価されるケースがあります。
単なる現在の利益ではなく、これからも売上が伸び続けるという成長ストーリーが評価されるためです。
年平均成長率が高い企業ほど市場からの評価が高まり、EBITDA倍率も上昇する傾向があります。
他社が真似できない強みがある
独自技術・特許・ニッチトップやスケーラブルなビジネスモデルを持つ企業は、再現性が高く追加投資なしで売上を伸ばせるため、限界利益率が優位になり倍率が大幅に上昇します。
SaaS・クラウド企業は一度システム構築すれば追加コストがほぼゼロでユーザーを増やせるため、10〜20倍超の評価を受けます。
競合が真似しにくい参入障壁が高いほど、買い手は長期的に安心して高倍率を提示するでしょう。
顧客が分散していて安定している
売上が多数の顧客に分散し、ストック型収益が多い企業は、リスクが低く来年も同じ収益が見込めると判断され、倍率が安定して高くなります。
また、定期課金・長期契約による継続収益がある企業は、市場から高く評価されます。
一方で売上の50%以上が1社に依存している場合、顧客集中のリスクがあると判断され、倍率が下がる点に注意が必要です。
EBITDA倍率が低い企業の特徴
EBITDA倍率が低い企業は市場から将来性や安定性に懸念があると判断されています。
具体的な特徴は、以下のとおりです。
低い倍率になる要因を理解しておけば、自社の改善ポイントが明確になるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。
成長が止まっている
売上・利益が横ばいまたは下降傾向の成熟期・衰退期企業は、将来への期待が薄く倍率が抑えられます。
買い手から見て、投資する魅力に乏しいと判断されるためです。
直近業績が落ちている企業や、市場成長が限定的な地域密着型企業は、どんなにEBITDAが安定していても2.5〜4倍止まりです。
成長期企業が10〜15倍の評価を受けるのと比べて明確に低評価になります。
将来の収益拡大が見込めないため、買い手は投資回収に時間がかかると考え、高い倍率を提示しません。
売上が不安定である
景気変動・受注状況に左右されやすい企業や顧客集中リスクがある企業は、継続性が不透明と判断され倍率が低下します。
スポット売上中心のビジネスモデルでは、来年も同じ収益が見込めるか不確実です。
建設業や地域製造業で売上が8億→11億→9億と変動する場合、2.5〜4.0倍に留まります。
特定大口顧客1社依存もリスクが高く、倍率引き下げの要因です。
その顧客を失えば売上が大幅に減少する可能性があるため、買い手は慎重な評価を行います。
安定した継続収益がない企業は市場から低く評価されます。
人手や機械にお金がかかっている
労働集約型や資本集約型企業は、EBITDAから多額の再投資を差し引いた実質キャッシュフローが少なくなるため、倍率が低く抑えられます。
人員増加が必要なビジネスや設備投資が重い企業は、継続的なコスト負担が避けられません。
製造・運送業で車両・機械更新に数億円かかる場合、EBITDA1億円でも維持投資8,000万円で実質フリーキャッシュフローが小さくなるため、倍率が低く評価される傾向があります。
建設業など人手や設備に依存するビジネスは、利益率圧迫・事業承継リスクも加わり3〜5倍止まりです。
EBITDAが高くても実際に手元に残る現金が少ないため、買い手は慎重な評価を行います。
EBITDA倍率の評価を高めるポイント
EBITDA倍率を改善すれば、企業価値が高まり、M&Aでより高い評価を受ける可能性があります。
具体的には、以下の3点を確認しましょう。
倍率が1ポイント上がるだけで、売却額が数千万円~数億円増える可能性もあるため、具体的な改善施策を知っておくことが重要です。
サービスや商品の原価を削減する
原価を削減すると営業利益が直接増加し、EBITDAが向上します。
これにより買い手から効率的な事業体と評価されやすくなります。
具体的な施策は、仕入れ先の集約・交渉によるコストダウン、製造プロセスの見直しによる歩留まり改善、在庫管理徹底による廃棄ロス削減などです。
原価を1,000万円削減すれば、EBITDAが同額向上します。
仮にEBITDA倍率が6倍で評価される場合、EBITDAが1,000万円改善すると企業価値が約6,000万円上昇する可能性があります。
ただし、競争力を損なわない範囲で実施し、品質低下は避けましょう。
サービスや商品の価格を見直す
価格を適正に見直すと客単価・売上が向上し、営業利益が増加してEBITDAが改善します。
結果として、企業価値評価が有利になります。
具体的な施策は既存商品の値上げ、新製品・サービスの価格戦略見直し、アップセル・クロスセル促進などです。
価格戦略を見直し収益性が向上すると、EBITDAが改善し企業価値の評価も高まる可能性があります。
買い手は収益性の高い事業と判断し、M&Aでより高い評価につながります。
ただし、顧客離れを防ぐため、価値提供を強化しながら実施しましょう。
有利子負債を削減する
営業キャッシュフローを活用して有利子負債を返済すると、純有利子負債が減少し株式価値(EV)が増加します。
その結果、売却時に経営者が受け取る株式売却額(手取り)が増える可能性があります。
同時に財務健全性が向上し、買い手からの信用が高まるため、倍率自体の上振れも期待できるでしょう。
具体的な施策は営業利益増加分を繰上返済や借り換えに充てる、現預金を積み上げて実質負債を圧縮する、資本性資金の活用で金利負担を軽減するなどです。
M&Aでは財務リスクの低い企業として高い評価を受けやすくなります。
ただし、返済しすぎて手元資金が枯渇しないよう、キャッシュフロー管理を徹底しましょう。
(※EBITDAは利息前指標のため、利息減少はEBITDA自体を向上させません。)
まとめ|EBITDA倍率を理解してM&A交渉に活かそう
業種や企業規模によって目安となる倍率は異なりますが、上場企業では8〜10倍、中小企業では3〜5倍が一般的です。
EBITDA倍率は企業の営業収益力を評価するための重要な指標であり、M&Aや企業価値評価において広く活用されています。
企業価値を高めるには、原価削減や価格見直し、負債返済といった具体的な施策によってEBITDAを改善することが重要です。
ただし、EBITDA倍率だけで企業価値を判断するのは不十分です。
将来性や顧客基盤の安定性、競争優位性など多角的な視点が必要になります。
M&Aを検討する際は、自社の業種や規模に適した評価方法を理解し、適正な交渉を進めることが大切です。
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業界ごとの平均倍率や手数料、サービス内容まで一目でわかり、複数の専門家から客観的なアドバイスを受けられます。
EBITDA倍率を正しく理解し、M&A交渉を有利に進めましょう。
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EBITDA倍率に関するよくある質問
以下では、EBITDA倍率に関するよくある質問についてまとめました。
- EBITDA倍率は何倍が適正ですか?
-
絶対的な適正倍率はありません。
同業他社や市場平均と比較して判断する相対指標であり、買い手が求める投資回収期間や売り手の交渉力で決まります。
上場企業ではおおむね8〜10倍程度が一つの目安とされることが多いですが、業界や成長性によって大きく変動します。
中小企業のM&Aでは、3〜5倍程度が一般的な目安です。
- 赤字企業のEBITDA倍率はどう計算しますか?
-
EBITDAがマイナスの場合は倍率の比較が難しいため、実務では純資産法やDCF法など他の評価手法を併用することが一般的です。
EBITDAがマイナスになると倍率もマイナスになり、割安・割高の判断ができないためです。
赤字企業は純資産法、DCF法、売上高倍率など他の評価手法に切り替えます。
ただし一時的損失を除去すれば黒字になる場合は、正常化EBITDAを使って計算可能です。
赤字企業の評価は専門的な判断が必要になるため、「M&A比較ナビ」で複数の専門家に相談するのがおすすめです。
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