- SaaS業界のM&Aの基本や価格相場を知りたい方
- SaaS事業の売却や事業承継を検討している方
- SaaS企業の買収により、顧客基盤やプロダクトを拡大したい方
- SaaS業界に詳しいM&A仲介会社やアドバイザーを比較したい方
SaaS業界のM&Aは、サブスクリプション型の収益や顧客基盤、プロダクトなどを第三者へ承継する方法の一つです。
本記事では、SaaS業界のM&Aの基本から、価格相場、成功事例、スキーム、仲介会社の選び方、実施手順まで解説します。
- SaaS業界のM&Aの基本や、他業界との違いがわかる
- SaaS業界のM&Aで見られる価格相場や評価指標を整理できる
- 実際のM&A事例から、買い手が重視するポイントを把握できる
- SaaS業界のM&Aに対応できる仲介会社や専門家の選び方がわかる
専門家選びで迷う場合は、株式会社M&Aミライ・パートナーズが運営するM&A比較ナビを活用し、複数の仲介会社を比較しながら相談先を検討しましょう。
株式会社M&Aミライ・パートナーズは、中小企業・ベンチャー企業向けにM&A仲介支援やM&A連携支援、M&Aプラットフォーム活用支援を行う会社です。
独自データベースと13,000社超のネットワークを活用し、条件に合う相談先の比較を支援しています。
SaaS業界のM&Aでは、事業価値や技術面、顧客契約の整理が必要になるため、複数の仲介会社を比較しながら相談先を選びましょう。
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SaaS業界のM&Aとは
SaaS業界のM&Aとは、インターネット経由で利用するソフトウェア事業や、その運営会社を売買する取引です。
SaaSは「Software as a Service」の略で、クラウド経由でソフトウェアを利用するサービス形態を指します。
料金は、月額制や年額制のサブスクリプション形式で設定されることが一般的です。
たとえば、顧客管理、会計、人事労務、チャット、営業支援などのクラウドサービスがSaaSに該当します。
SaaS業界のM&Aでは、会社の株式や事業だけでなく、以下のような資産も評価対象です。
- 契約中の顧客数
- 月額収益や年額収益
- 解約率
- プロダクトのソースコード
- 開発・運用体制
- 販売チャネル
- ブランド認知
SaaSは継続課金型のビジネスが中心となるため、売上の安定性や成長率が確認されやすい傾向があります。
小売業や製造業のM&Aでは在庫や設備、店舗などが重視される一方、SaaSではARRやMRR、解約率などの指標も確認されます。
ARRは年間経常収益、MRRは月間経常収益のことです。
SaaS業界のM&Aを検討する際は、財務情報だけでなく、継続収益や解約率などの指標も整理しておきましょう。
SaaS業界のM&Aと他業界の違い
SaaS業界のM&Aでは、固定資産の規模だけでなく、継続収益・顧客基盤・プロダクトの成長性が確認されやすい点が特徴です。
製造業や店舗ビジネスでは、不動産、設備、在庫、店舗網などの有形資産が評価に影響します。
一方、SaaSでは、顧客が継続利用し、将来の収益が積み上がるかどうかも評価の材料になります。
SaaSで確認される項目は、主に以下のとおりです。
- ARR
- MRR
- 解約率
- 顧客獲得単価
- 顧客生涯価値
- 契約更新率
- プロダクトの拡張性
- ソースコードやインフラの状態
- セキュリティ体制
たとえば、売上が同じSaaS企業でも、解約率が低い事業は将来収益を見通しやすいといえます。
既存顧客からの追加契約が見込める場合は、顧客基盤を活かした成長余地の説明もしやすいです。
反対に、売上が伸びていても、特定の大口顧客に依存している場合は、解約時の売上減少リスクが残ります。
開発担当者が1人に集中している場合も、買収後の運用や引き継ぎに不安が出やすい状態です。
SaaS業界のM&Aでは、財務数値だけでなく、プロダクト・技術・顧客契約を引き継げる状態かどうかも確認対象です。
SaaS業界のM&Aの価格相場
SaaS業界のM&A価格は、ARR、MRR、成長率、解約率、利益水準、顧客基盤などをもとに個別に決まります。
評価の目安として、年間経常収益を示すARRに一定の倍率をかける場合があります。
ARRは、一般的にMRRを12か月換算して算出される年間経常収益の指標です。
たとえば、MRRが500万円であればARRは6,000万円です。
仮にARRの3倍で評価される場合、企業価値の目安は1億8,000万円になります。
ただし、3倍は計算例であり、実際の倍率は成長率や解約率、利益水準などによって変わります。
また、大口顧客への依存、売上成長の鈍化、技術負債、開発体制の弱さなどは、評価額が下がる要因の一つです。
SaaS業界のM&Aでは、価格の目安に加え、譲渡後の運営体制や顧客対応も確認されます。
SaaS業界のM&Aの成功事例
SaaS業界のM&A事例を見ると、買い手が何を評価しているかを把握しやすくなります。
SaaS業界のM&Aでは、単なる売上の取得ではなく、プロダクトの補完や顧客基盤の拡大、AIやクラウド戦略の強化を目的とした取引が見られます。
代表的な事例は、以下のとおりです。
事例1. SalesforceによるSlackの買収
SalesforceによるSlackの買収は、CRMとビジネスチャットを組み合わせ、顧客情報や社内コミュニケーションを同じ業務基盤で扱おうとした事例です。
Salesforceは2021年7月、Slack Technologiesの買収完了を発表しました。
Salesforceは、Slackとの統合により、社内外の情報共有やコミュニケーションを集約する「Digital HQ」構想を推進すると説明しています。
買収契約の発表時点では、Slack株主に1株あたり26.79ドルの現金とSalesforce普通株式0.0776株を交付する条件でした。
企業価値は約277億ドルとされています。
Slackは、企業の会話やアプリ連携を集約するコミュニケーション基盤です。
SalesforceのCRMと組み合わせることで、営業やカスタマーサクセスの顧客情報や商談状況、社内のやり取りを同じ業務基盤で扱いやすくなることが期待されます。
この事例から、SaaS業界のM&Aでは単体プロダクトの売上だけでなく、買い手の既存サービスと組み合わせた後の利用シーンも評価材料になるとわかります。
事例2. MicrosoftによるNuance Communicationsの買収
MicrosoftによるNuance Communicationsの買収は、AIや音声認識技術を業界特化型クラウドに取り込んだ事例です。
Microsoftは2022年3月、Nuance Communicationsの買収完了を発表しました。
Nuanceは、ヘルスケア、金融、小売、通信などに対応する会話型AI企業です。
MicrosoftはNuanceについて、音声認識やAIを活用して業務支援を行う「アンビエント・インテリジェンス」分野の企業と説明しています。
買収契約の発表時点では、MicrosoftがNuanceを1株あたり56ドルで取得する内容でした。
純負債を含む取引価値は197億ドル規模です。
Microsoftは、NuanceのAI技術や医療分野での知見により、Microsoft Cloud for Healthcareの強化を見込んでいます。
たとえば、医師が診察内容を記録する場面では、音声入力や自動文書化の技術を使うことで、記録作業の負担軽減が可能です。
この事例から、SaaS業界のM&Aでは汎用的な売上規模だけでなく、特定業界に深く入り込んだプロダクトや顧客基盤も評価材料になるとわかります。
事例3. Thoma BravoによるAnaplanの買収
Thoma BravoによるAnaplanの買収は、SaaS企業が投資ファンドによって非公開化された事例です。
Anaplanは、企業の予算管理や事業計画を支援するクラウド型プラットフォームを提供する企業です。
Thoma Bravoは2022年6月、Anaplanを約104億ドルの全額現金取引で買収しました。
買収後、Anaplanの普通株式はニューヨーク証券取引所での上場・取引を停止しています。
Thoma Bravoは、Anaplanのクラウド型企業計画ソリューションや市場の成長性に触れ、Anaplanのビジョン推進と持続的な価値創出を支援すると説明しました。
Anaplanの買収事例から、SaaS業界のM&Aでは事業会社だけでなく、ソフトウェア領域に強い投資ファンドも買い手候補になるとわかります。
SaaS業界のM&Aにおすすめの仲介会社・サービス
SaaS業界のM&Aでは、一般的なM&Aの知識に加え、IT事業やサブスクリプション収益、プロダクト、開発体制への理解が求められます。
SaaS業界のM&Aでおすすめの仲介会社・サービスは、以下のとおりです。
パラダイムシフト

| 会社情報 | 詳細 |
|---|---|
| サポート内容 | ・M&Aニーズのヒアリング ・M&Aスキームの提案 ・候補先企業の紹介 ・譲渡企業・譲受企業のマッチング ・条件交渉の支援 ・デューデリジェンスの支援 ・最終条件交渉から成約までの支援 |
| サポート体制 | ・SaaS業界の専門知識とトレンドを熟知したチーム ・IT分野に詳しい投資ファンド、弁護士、会計士出身者による専門チーム ・SaaS企業の要望に合わせたオーダーメイド型支援 |
| 料金体系 | 着手金:無料 中間手数料:無料 ※成功報酬のレーマン式を採用 |
| 特徴 | ・IT/デジタル領域のM&A成約支援件数No.1 ※日本マーケティングリサーチ機構調べ ・SaaS企業に強いM&Aアドバイザリー ・全国のIT企業約14,000社のネットワーク ・年間30件~40件のM&A支援実績 |
| 運営会社 | 株式会社パラダイムシフト |
| URL | https://paradigm-shift.co.jp/lp/saas |
パラダイムシフトは、IT・デジタル領域に特化したM&Aアドバイザリーです。
「自社単独での販路拡大や開発投資が限界にきている」といった課題を抱えるSaaS企業が、買い手企業との連携や事業譲渡という選択肢を探る際の相談先となります。
IT企業とのネットワークを活用した精度の高いマッチング力が特徴の一つです。
客観的な評価として、2022年6月期の日本マーケティングリサーチ機構による調査において、「IT/デジタル領域のM&A成約支援件数No.1」を獲得した実績を持ちます。
料金体系は、「着手金0円・中間手数料0円の成功報酬型」を基本として掲げています。
ただし、案件の性質によっては例外的に費用が発生するケースもあるため、本格的な依頼前に料金発生の条件をすり合わせておくことが重要です。
M&Aの進行はすごくスピーディーに進み、デューデリそのものも問題ありませんでしたが、自分ひとりで資料作りなどをしていたため、本業が忙しい時期と重なったときは本業の業務が追い付かなくなるということがありました。それをパラダイムシフトさんに相談したら、土日に本業のヘルプをしてくれた。ここまでサポートしてくれる仲介会社はないんじゃないですか。
引用:ご利用されたお客様の声
仲介を頼むなら、親身になってサポートしてくれるところがいいと考えておりました。他社からの紹介でパラダイムシフトさんを知り、何度かお会いして信頼できる会社だと思い、ここなら大丈夫だと判断し、お任せしました。
引用:ご利用されたお客様の声
営業メールお断りとかいてあるのに問い合わせフォームから送ってくる非常識な会社です。
引用:Google Map
パラダイムシフトについては下記の記事もあわせてご覧ください。
ライチョウテックパートナーズ株式会社

| 会社情報 | 詳細 |
|---|---|
| サポート内容 | ・SaaS・Webサービスの売却支援 ・SaaS・Webサービスの買収支援 ・SaaS・Webサービスの売買仲介 ・技術デューデリジェンスの実施 ・事業デューデリジェンスの実施 ・事業・コード評価 ・適正価格の算定 ・買い手の探索・マッチング ・ティーザー・IM・移行チェックリストの作成 ・交渉・契約・クロージングの支援 |
| サポート体制 | ・テックリードエンジニアによる支援 ・技術面と事業面を一体で見る支援体制 ・ソースコード・アーキテクチャ・インフラまで確認する体制 ・売上推移・解約率・顧客基盤・成長性まで確認する体制 ・売り手・買い手・仲介希望者に対応する支援体制 ・M&A後の技術移行・統合まで伴走する体制 |
| 料金体系 | 初回相談:無料 簡易評価・価格レンジ提示:無料〜20万円(税込)目安 M&Aアドバイザリー:成約金額の3〜5%程度+最低報酬 |
| 特徴 | ・M&A × SaaS × 技術に強い ・小規模SaaS・個人開発サービスに対応 ・テックリード歴17年以上 ・50件以上の開発・グロース参画実績 ・技術DDと事業DDのダブルチェック ・コード品質・依存関係・技術負債・運用コストまで評価 |
| 運営会社 | ライチョウテックパートナーズ株式会社 |
| URL | https://raicho-tech.jp/ |
ライチョウテックパートナーズ株式会社は、小規模SaaSや個人開発サービスを中心に支援するM&Aアドバイザリーです。
ライチョウテックパートナーズは、SaaS・Webサービスに特化したM&Aアドバイザリーとして、ソースコードまで確認する支援を案内しています。
公式サイトによると、ソースコード・アーキテクチャ・インフラなどを見る技術デューデリジェンスと、売上・解約率・LTVなどを見る事業デューデリジェンスを一体で行う点が強みです。
代表はテックリード歴17年以上であり、大手からスタートアップまで50件以上の開発やグロースに参画した実績を持ちます。
代表自らがバックエンド、フロントエンド、インフラまで横断的に確認できる体制も特徴の一つです。
SaaS業界のM&Aにおいて、ソースコードの保守性やインフラコストは買収後の運用負担に大きく関わります。
ライチョウテックパートナーズは、売上推移や解約率などの事業指標に加え、技術面も整理しながらSaaS・Webサービスの承継を支援する会社です。
M&A Do

| 会社情報 | 詳細 |
|---|---|
| サポート内容 | ・無料バリュエーション算定 ・KPI分析 ・MRR・解約率・CAC・テックスタックの確認 ・SaaSマルチプル法などによる概算価値算出 ・ノンネーム・ティーザー作成 ・買い手候補への打診 ・ソースコード品質の確認 ・権利関係のクリアランス ・テックDDの支援 ・事業譲渡・株式譲渡の実行 |
| サポート体制 | ・秘密厳守の相談体制 ・競合他社に知られにくいExit支援 ・SaaS上場企業・VC・連続起業家などのテック層への打診 ・SaaSの顧客基盤・技術を評価する支援体制 ・全国対応のM&A支援体制 ・情報整理から候補先探索、条件交渉までの支援体制 |
| 料金体系 | 最低 2,000万円〜 売り手手数料0円 |
| 特徴 | ・SaaS業界に特化 ・赤字SaaSの評価に対応 ・ARR・MRR・Churnを重視した評価 ・営業利益だけでなく将来キャッシュフローを評価 ・顧客基盤と技術に着目した価格評価 ・Vertical SaaS・Horizontal SaaS・APIツールに対応 |
| 運営会社 | 株式会社M&A Do |
| URL | https://ma-mado.com/ |
M&A Doは、SaaSの売却や事業譲渡に特化したM&A支援会社です。
公式サイトでは、マーケティングや開発リソースに課題を抱えるSaaS事業者に向けて、売却という選択肢を案内しています。
売り手手数料は完全無料に設定されており、無料バリュエーション算定の依頼も可能です。
営業利益だけでなく、MRR、解約率、CAC、テックスタックなども確認する点がM&A Doの特徴に挙げられます。
事業者が先行投資による赤字を抱えていても、解約率やユニットエコノミクス、顧客基盤、技術をもとに評価する仕組みです。
M&A DoはVertical SaaS、Micro-SaaS、EC系プラグイン、API・DevTools、AI・チャットボットサービスなどを対応領域としており、SaaSプロダクトの売却や事業譲渡を検討する際の相談先となります。
専門家選びで迷う場合は、M&A比較ナビをご活用ください。
複数の仲介会社を比較しながら、自社に合う相談先を検討できます。
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SaaS業界のM&Aの動向
SaaS業界のM&Aは、クラウド市場の拡大やAI活用の広がりを背景に、買収・事業譲渡の対象として注目されやすい領域です。
クラウド利用が広がるほど、SaaSの顧客基盤や継続収益に対する関心も高まるでしょう。
特に、AIを組み込んだ業務支援SaaS、医療・建設・物流・金融などの業界特化型SaaS、大企業向けSaaSは、買い手企業の既存事業とのシナジーを生みやすい領域です。
一方で、新規顧客の獲得が想定どおり進まない場合、自社単独での成長戦略を見直す必要が出てくることがあります。
そのため、販売網や顧客基盤を持つ大手企業、同業他社とのM&Aが選択肢になるケースも少なくありません。
SaaS業界のM&Aでは、クラウドサービスの有無だけでなく、解約率の低さ、顧客基盤、AI活用、業界特化の深さなども評価材料として扱われます。
SaaS業界のM&Aのスキーム
SaaSでは、会社ごと引き継ぐのか、特定のプロダクトだけを引き継ぐのかによって、契約内容や手続きが変わります。
SaaS業界のM&Aの主なスキームは、以下の3つです。
株式譲渡
株式譲渡は、SaaS企業の株式を買い手へ譲渡し、経営権を引き継ぐスキームです。
株式譲渡では会社の株主が変わるため、既存の契約、雇用関係、資産、負債は原則として会社に残ります。
たとえば、SaaS企業を運営する法人の全株式を買い手が取得する場合、顧客契約、従業員との雇用契約、借入金などの負債は会社に残ります。
ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール条項がある場合、株主変更により取引先や顧客の同意が必要になる点に注意しましょう。
SaaS企業では、大口顧客との契約条件、クラウド利用契約、外部APIの利用条件も確認対象になります。
事業譲渡
事業譲渡は、SaaS事業のうち、特定のプロダクトや顧客契約、ソースコード、商標、運用ノウハウなどを買い手へ譲渡するスキームです。
株式譲渡と異なり、会社全体ではなく対象事業を切り出して引き継ぐため、譲渡対象を個別に定める必要があります。
たとえば、顧客契約やサーバー契約、外部APIの利用契約などを確認します。
SaaS事業では、契約やアカウント、決済システム、ソースコードの権利関係が事業運営に直結するため、譲渡対象と移管手続きを事前に整理しておくことが重要です。
株式交換・株式交付
株式交換・株式交付は、対象会社を買い手企業のグループに入れるための組織再編手法です。
株式交換は完全子会社化に使われる一方、株式交付は完全子会社化を前提としない子会社化にも使われます。
対価として買い手企業の株式を使う場合、現金の支出を抑えながら取引を進められることがあります。
一方で、株式の評価、既存株主の希薄化、税務上の扱い、会社法上の手続きなどの整理が必要です。
SaaS業界のM&Aを活用するメリット
SaaS業界のM&Aには、譲渡側・譲受側の双方にメリットがあります。
ただし、得られる効果は企業の状況や取引条件によって変わります。
譲渡側のメリット
譲渡側のメリットは、サービスや顧客基盤を残したまま、買い手の営業力や開発体制に引き継げる点です。
SaaSは、開発、営業、カスタマーサクセス、サーバー運用などに継続的な投資が必要なため、少人数チームだけでは成長が難しくなるケースも珍しくありません。
買い手へ譲渡すれば、創業者が売却益を得られるほか、サービス継続や従業員の雇用維持につながる可能性も広がります。
中小M&Aガイドラインでも、早期にM&Aを検討・実現することで、従業員の雇用確保やサプライチェーン維持につながる場合があると示されています。
譲受側のメリット
譲受側のメリットは、プロダクト、顧客基盤、開発人材をまとめて取得できる点です。
SaaSをゼロから開発する場合、企画、開発、営業、顧客獲得までに多くの時間を要します。
既存SaaSを買収できれば、営業中のプロダクトや契約中の顧客を引き継ぐことが可能です。
たとえば、会計SaaSを提供する企業が請求書管理SaaSを買収すれば、既存顧客へ追加サービスを提案しやすくなるでしょう。
SaaS業界のM&Aを実施するポイント・注意点
SaaS業界のM&Aでは、数字の見栄えだけで判断すると、譲渡後にトラブルが起きる可能性があります。
特に、顧客契約、プロダクト品質、セキュリティ、開発体制、技術負債は慎重に確認しましょう。
譲渡側の注意点
譲渡側は、ARRやMRR、解約率などの主要指標を正しく整理しておく必要があります。
初期設定費や個別開発費をARRに含めると、買い手との間で認識のズレが生じるでしょう。
また、M&Aに関する情報管理にも注意しなければなりません。
SaaS企業の場合、エンジニアやカスタマーサクセス担当者の離職が障害対応や顧客対応に直結しやすいため、従業員へ説明するタイミングも慎重に検討するべきです。
譲受側の注意点
譲受側は、買収前にプロダクトと顧客基盤の実態を確認する必要があります。
売上が伸びていても、解約率が高い、大口顧客に依存している、開発体制が属人化しているといった課題が隠れているケースも少なくありません。
特に、ARRやMRRの定義、解約率の推移、顧客別売上の偏り、ソースコード、インフラ構成、セキュリティ事故の有無は事前の確認対象です。
買収後に主要エンジニアが退職すると、機能改善や障害対応が難しくなるリスクも想定されます。
契約前には、財務・法務・労務だけでなく、技術デューデリジェンス(技術DD)も実施することが重要です。
SaaS業界のM&Aを実施する手順
SaaS業界のM&Aは、一般的なM&Aの流れに加え、SaaS特有の指標や技術面の整理が必要です。
SaaS業界のM&Aでは、最初に譲渡・譲受の目的を整理します。
譲渡側では創業者利益の確保、事業承継、サービス継続などが主な目的です。
譲受側は、顧客基盤の獲得、プロダクト拡充、人材獲得などを目的として動きます。
目的が曖昧なまま進めると、候補先や譲渡条件を判断しにくくなるでしょう。
たとえば、従業員の雇用継続を重視する場合は、価格だけでなく買い手の運営方針も確認が必要です。
次に、ARR、MRR、解約率、売上成長率、粗利率、大口顧客への依存度などを整理しましょう。
SaaS業界のM&Aでは、損益計算書だけでは事業の実態が伝わりにくい場合があります。
継続収益の安定性や顧客基盤を説明できる状態にしておくと、買い手が事業価値を判断しやすくなります。
主要指標を整理したら、M&A仲介会社やアドバイザーへ相談しましょう。
SaaS業界のM&Aでは、IT領域の支援経験や手数料体系、買い手候補のネットワークなどを確認して相談先を選ぶ必要があります。
M&A比較ナビは、M&A仲介会社を複数社紹介する比較サービスです。
相談先を1社だけで決めず、支援範囲や相性を比較しながら検討したい方は、お気軽にお問い合わせください。
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交渉・デューデリジェンスでは、買い手候補と条件をすり合わせたうえで、財務、契約、技術、開発体制を確認します。
たとえば、外部の開発会社にソースコードの権利が残っている場合、買収後に自由に改修できないおそれがあります。
SaaS業界のM&Aでは、財務や契約だけでなく、ソースコード、インフラ、セキュリティなどの確認も重要です。
最終契約後は、譲渡対価の支払いと経営権や事業資産の移転を行います。
クロージング前後では、顧客への通知、従業員への説明、サーバーやアカウント権限の移管、決済サービスやサポート窓口の引き継ぎなどを整理します。
SaaSは買収後も継続して稼働するサービスであるため、契約締結後の顧客対応や運用体制まで整えることが重要です。
まとめ|SaaS業界のM&Aは事業価値と譲渡条件の整理が重要
SaaS業界のM&Aで後悔を防ぐには、事業価値と譲渡条件を事前に整理し、買い手に説明できる状態にしておく必要があります。
SaaSは継続課金型のビジネスであるため、売上規模だけでなく、解約率の低さや契約更新の見込み、買い手が引き継ぎやすい運用体制も評価に影響します。
SaaS業界のM&Aでは、IT領域の知見や支援範囲が相談先によって異なるため、複数の業者で比較することが重要です。
複数の仲介会社を比較したい場合、M&A比較ナビの活用も一案でしょう。
SaaS業界のM&Aに対応できる仲介会社を横断的に比較しながら、自社の条件に合う相談先の選定が可能です。
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SaaS業界のM&Aに関するよくある質問
- 小規模なSaaSでもM&Aができますか?
-
小規模なSaaSでも、条件が合えばM&Aは可能です。
SaaSでは、売上規模が大きくなくても、特定業界の顧客を持っている、解約率が低い、プロダクトの改善余地があるといった点が評価される場合があります。
小規模SaaSほど、代表者や特定エンジニアに運営が集中していることがあります。
買い手が引き継ぎやすいように、運用手順や開発環境を整理しておきましょう。
- 赤字でも売却できますか?
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赤字でも、条件次第でSaaSを売却できる可能性はあります。
SaaSでは、短期的に赤字でも、ARRやMRRが伸びている、解約率が低い、顧客基盤がある場合、買い手が事業価値を認めることがあります。
ただし、赤字の理由は整理が必要です。
広告投資や開発投資が先行しているのか、解約率の高さや顧客獲得の停滞による赤字なのかで、買い手の評価は変わります。
赤字のSaaSを売却できるか判断するには、ARR、MRR、解約率、顧客基盤、技術面を見てもらえる相談先を選ぶことが大切です。
M&A比較ナビでは、M&A仲介の相場や専門性をふまえて、自社に合う仲介会社を無料で紹介しています。
売却できるか不安な段階でも、まずは複数の仲介会社を比較し、SaaSの強みをどう説明できるか相談してみましょう。
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